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ついに中国バブル崩壊へ――中国恒大集団・破綻へのカウントダウン【朝香豊の日本再興原論 No63】

ついに「恒大集団」破綻への秒読みが始まった

 8月6日、アメリカの格付け会社「S&Pグローバル・レーティング」が、中国最大の不動産ディベロッパーである「中国恒大集団」の格付けを、さらに「CCC」にまで引き下げた。「CCC」というのは、もはや自力では企業経営が続けられるとは考えられておらず、事業が続くかどうかは外部環境次第という感じの格付けになっている。しかも、S&Pは7月26日に同社の格付けを「B+」から「B-」に引き下げたばかりであった。

 こうした相次ぐ引き下げは、中国政府が同社を見放すような動きに出ていることも大いに関係しているだろう。たとえば、恒大集団は湖南省の市住宅当局により2カ所の開発地に販売停止を命じられ、香港で手掛けている2件の住宅開発についても新規融資が停止された(7月14日)。そもそも国務省の金融監督当局は、恒大集団が破綻した場合に資本や流動性にどのような影響が及ぶ可能性があるのかを調べるよう、複数の銀行に求めてさえいる。同社のデフォルトは、もはや秒読みに入ったものと思われる。

 それはまた、別の動きでも確認できる。恒大集団に向けられた債権回収の訴訟は各地で発生しているが、こうした訴訟がすべて広東省の広州市中級人民法院(地裁)で一括審理されることが決まったのである(8月6日)。これは判決の出る順番によって確保できる債権の額に差が生じることをなくし、できる限り公正な返済を行うためだと見られている。ある債権者には債権の100%近い金額が返ってくる一方、別の債権者には0%に近い状態になるなどというのは適切ではない。どの債権者も、債権額に対して同じ割合で返ってくるようにしようということであり、もはやこれは破綻を前提とした動きだと見るべきである。

 こうした公平性を重んじたデフォルト処理を、中国政府は一般化させようとしている。2020年11月に石炭大手の「永城媒電集団」のデフォルトが発生したが、このときに同社は一部の債権者に不利益を与えるため、資産の一部を別会社へと差し替えていたことがバレてしまった。ここに中国政府は異例にも介入し、投資家の間で差別することなく債権処理を進めさせた。これは、今後増えると考えられるデフォルトに対して公平性を確保することで、その反発をできる限り小さくしようとする試みではないかと推察される。

加速する習近平の中国経済潰し

 現在、中国では習近平政権による中国経済潰しが加速している。そのペースは「習近平が中国経済を崩壊させる」と主張してきた私の予測すら上回るものだ。

 中国には、地方政府がインフラ投資を行うために設立した「融資平台」と呼ばれる公営企業がある。この融資平台は公式発表でも48.7兆元(約830兆円)の債務を抱えているとされているが、実際の債務はこれよりもはるかに巨大だと目されている。この融資平台について、7月上旬に中国の銀行の間で「15号文」と呼ばれる文書が出回った。「15号文」とは、銀行に対して融資平台への融資を打ち切ることを求める通達である。

 銀行が追い貸しすることを止めれば、融資平台は間違いなく破綻する。それは地方政府の財政破綻を浮き彫りにすることにもなる。それどころか、追い貸しをやめた銀行が次々と破綻することにもつながる。

 「15号文」は撤回されたとも言われているが、真相はわからない。間違いないのは、習近平政権は地方政府も銀行も完全に潰すような方針をいつ打ち出してもおかしくないということだ。

 国営の資産運用会社である「中国華融資産管理」は、中国の不良債権処理の中心に位置づけられる国策企業であるにもかかわらず、習近平政権はこの華融資産管理のデフォルトすら容認しかねない姿勢を見せている。2021年の8月になったにもかかわらず、華融資産管理はいまだに2020年の決算の発表をしないままにされている。

バブル崩壊を恐れぬ習近平は止まらない

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アメリカの「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に肩を並べる中国企業群「BATH」(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)にまで手を出し始めた習近平
 習近平政権が潰そうとしているのは、不動産セクターだけではない。独占禁止法違反を理由にして、今年の4月には中国の大手IT企業「アリババ」に182億元(約3100億円)の罰金を科した。またフードデリバリー大手の「美団」に対しても、やはり独占禁止法違反を理由にして10億ドル(約1100億円)の罰金を課す準備をしていると、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じている(8月7日付)。

 中国の大手IT企業「テンセント」も音楽配信での独占が問題視され、同社の主力事業の一つであるゲームについて「精神的なアヘン」だと痛罵された。テンセントのメッセージアプリ「WeChat」の青少年モードも、未成年者を保護する法律を遵守していないとして提訴された。WeChatの青少年モードは中国の規制当局による指導のもとで導入されたものであり、これが問題にされることなど、テンセントはまったく考えていなかっただろう。

 ネット通販大手の「ピンドゥオドゥオ」の創業者・黄崢も、動画投稿アプリ「TikTok」を運営するバイトダンスの創業者・ 張一鳴もともに、経営の第一線から退くことを発表した。当局に逆らっては、自分の命もどうなるかわからないからだ。異能の経営者が次々と企業から抜けて、共産党の幹部がその地位を占めるようになった時に、企業の革新性を維持することは難しいだろう。

 また中国の教育業界も非営利組織への転換を求められ、週末や長期休暇の授業が認められなくなり、上場も外国資本による買収も禁止された。さらに驚くべきことに、小中学校での英語の授業とテストが禁じられ、外国人講師が排除される動きまで出てきた一方、習近平思想の教育を新たに導入するとしている。

 習近平政権は社会の全面で社会主義的な統制を格段に強めながら、自由な経済を次々と破壊する動きに出ているのである。

 習近平は、現在の経済バブルが崩壊することを恐れていないようだ。むしろショックが大きい方が、徹底した社会改造を進められるとでも考えているような動きになっている。中国の経済崩壊は、もはや止まらないであろう。
朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。新著『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』(ワック)が好評発売中。

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