再燃する不動産ブームのからくり
現在中国では大変な不動産ブームが起こっている。コロナ騒ぎで世界的な金融緩和が進んでいるが、中国もその例外ではない。金利が下がり、融資条件が緩和される中で、不動産神話の強い中国ではその資金が不動産投資に回っているのだ。海外に資金を逃したいと思っても、中国政府の規制が厳しいために、国内の限られた運用手段である不動産に資金が殺到していると言ってもよい。6月のある日の話だが、深圳市のある開発プロジェクトでのマンションの購入資格を得るために、9000人近い人が手付金の100万元(1500万円)をこの1日に支払ったほどだ。
ところが、こうしたブームの中で、中国最大手の不動産会社である中国恒大集団は、この流れに逆行するかのように、手持ちの不動産を全て30%引きで販売するという大セールに打って出た。値引きしなくてもバンバン売れそうに見える中で、中国恒大集団が大幅値引きに打って出たのには事情がある。バブル崩壊を避けるために新規の販売戸数を絞らされてきたこともあり、中国恒大集団は保有在庫が増えすぎており、これを今のブームに乗る形でさばいておかないと、会社の継続ができないところまで資金繰りが悪化しているからである。
中国恒大集団は今年1月に金利11.5%で20億ドル、12%でも20億ドルの合計40億ドル(4000億円)の社債を発行している。ここまで高い金利を払わなければならないのは、資金繰りが逼迫しているからである。2019年の6月で中国恒大集団の総負債比率(資産に対して負債が占める割合)は152%に達し、すでに債務超過状態なのだ。負債総額は12兆円を超え、支払わなければならない利息だけで年間で9000億円にのぼる。販売を促進して手持ちのキャッシュを増やし、これを負債の削減にどんどんあてていかないと、経営がもたない。
経営が苦しい不動産企業は中国恒大集団だけではない。中国の不動産企業が皆同じような状態にあり、中国で昨年破綻した不動産企業は500社近い。朱鎔基元首相の息子で中国国際金融(CICC)の元CEOである朱雲来氏は、すでに2017年の段階で中国の都市部のマンションは10億人分あるが、住んでいるのは7億人に過ぎないと述べ、3億人分のマンションが余っていることを明らかにした。また現在のオフィスの空室率は上海で20%、深圳で21%に達している。明らかに供給過剰なのだ。
ところが、こうしたブームの中で、中国最大手の不動産会社である中国恒大集団は、この流れに逆行するかのように、手持ちの不動産を全て30%引きで販売するという大セールに打って出た。値引きしなくてもバンバン売れそうに見える中で、中国恒大集団が大幅値引きに打って出たのには事情がある。バブル崩壊を避けるために新規の販売戸数を絞らされてきたこともあり、中国恒大集団は保有在庫が増えすぎており、これを今のブームに乗る形でさばいておかないと、会社の継続ができないところまで資金繰りが悪化しているからである。
中国恒大集団は今年1月に金利11.5%で20億ドル、12%でも20億ドルの合計40億ドル(4000億円)の社債を発行している。ここまで高い金利を払わなければならないのは、資金繰りが逼迫しているからである。2019年の6月で中国恒大集団の総負債比率(資産に対して負債が占める割合)は152%に達し、すでに債務超過状態なのだ。負債総額は12兆円を超え、支払わなければならない利息だけで年間で9000億円にのぼる。販売を促進して手持ちのキャッシュを増やし、これを負債の削減にどんどんあてていかないと、経営がもたない。
経営が苦しい不動産企業は中国恒大集団だけではない。中国の不動産企業が皆同じような状態にあり、中国で昨年破綻した不動産企業は500社近い。朱鎔基元首相の息子で中国国際金融(CICC)の元CEOである朱雲来氏は、すでに2017年の段階で中国の都市部のマンションは10億人分あるが、住んでいるのは7億人に過ぎないと述べ、3億人分のマンションが余っていることを明らかにした。また現在のオフィスの空室率は上海で20%、深圳で21%に達している。明らかに供給過剰なのだ。
住宅ローンの返済に収入の75%
中国政府の住宅建設部副部長の仇保兴氏は中国のマンションの寿命は25年から30年だと述べているが、それなのにマンションを賃貸に出した時の利回りは2%を下回っている。中国では土地は国有であり、マンション価格には土地の値段は入っていないため、30年間を2%の利回りで賃貸に出したとしても、購入額の6割しか賄えない計算になる。それなのに、ローンの金利は4%を超えているのだ。現状の価格はどう考えても非合理である。
マンション購入にあたっては約半数の人たちがローンを組むことになるが、このローンの返済に収入の75%があてられるという異常な状態になっている。年収400万円だとした場合に、そのうち300万円がローンの支払いに消えて、残りの100万円で生活費を賄うようなイメージだと思えばよい。
この状態でコロナの影響を受けて収入が10%下がったら、年100万円の生活費を年60万円にまで引き下げなければならないことになる。中国のニュース配信アプリ「今日頭条」には、ある銀行でこれまで毎月1000~2000件の住宅ローンの滞納が発生していたところで、5月の滞納が1万3000件に達したとの投稿がアップされた。中国版ツイッターの「微博」にも、過去1年間で深圳市の競売件数が60%も増えたとの投稿がアップされた。変調が起きているのは明らかだろう。
しかも中国は少子化が急激に進んでおり、生産年齢人口はすでに2012年から減少に転じた。2028年には総人口も減少に転じると予想されている。不動産需要は将来的な見込みもないのだ。
マンション購入にあたっては約半数の人たちがローンを組むことになるが、このローンの返済に収入の75%があてられるという異常な状態になっている。年収400万円だとした場合に、そのうち300万円がローンの支払いに消えて、残りの100万円で生活費を賄うようなイメージだと思えばよい。
この状態でコロナの影響を受けて収入が10%下がったら、年100万円の生活費を年60万円にまで引き下げなければならないことになる。中国のニュース配信アプリ「今日頭条」には、ある銀行でこれまで毎月1000~2000件の住宅ローンの滞納が発生していたところで、5月の滞納が1万3000件に達したとの投稿がアップされた。中国版ツイッターの「微博」にも、過去1年間で深圳市の競売件数が60%も増えたとの投稿がアップされた。変調が起きているのは明らかだろう。
しかも中国は少子化が急激に進んでおり、生産年齢人口はすでに2012年から減少に転じた。2028年には総人口も減少に転じると予想されている。不動産需要は将来的な見込みもないのだ。
最終局面に入る不動産バブル
債務問題のスペシャリストとして知られるハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は、中国の不動産ブームは価格と供給の不均衡を引き起こしており、潜在的な不安定のピークに達したと警鐘を鳴らした。
中国は社会主義経済であり、発生する問題を強引に抑え込むことはある程度は可能である。習近平政権は国有化に踏み切ることをおそらく考えているのだろう。というのは、政府は不動産業界の苦しい実情など全く考慮せずに、2021年から住宅ローンが組める条件を格段に厳しくすると発表し、容易に不動産を買えないようにする方針を示したからだ。
新たな購入が難しくなるということは、不動産需要が細るということと直結し、それはバブルの崩壊につながる可能性が高い。中国政府は人為的な価格の安定を追求するのだろうが、将来の値上がりを見込めなくなった物件の価格が高止まりで安定することは考えにくい。中国の不動産バブルは最終局面に入ってきたと言えるだろう。
中国は社会主義経済であり、発生する問題を強引に抑え込むことはある程度は可能である。習近平政権は国有化に踏み切ることをおそらく考えているのだろう。というのは、政府は不動産業界の苦しい実情など全く考慮せずに、2021年から住宅ローンが組める条件を格段に厳しくすると発表し、容易に不動産を買えないようにする方針を示したからだ。
新たな購入が難しくなるということは、不動産需要が細るということと直結し、それはバブルの崩壊につながる可能性が高い。中国政府は人為的な価格の安定を追求するのだろうが、将来の値上がりを見込めなくなった物件の価格が高止まりで安定することは考えにくい。中国の不動産バブルは最終局面に入ってきたと言えるだろう。
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。