アメリカにけしかけられたNATO

 NATOという色男は、自分のアメリカ大統領選挙におけるヨーロッパ東方移民の票欲しさのビル・クリントンにけしかけられ、次から次へと旧ソ連村の娘を誘惑していった。
 それが、1990年以降の“NATOの東方拡大”である。

 東西両ドイツ統一に際し、「NATOは東方拡大しない、ロシアも西方拡大しない」とアメリカとロシアは合意したのに、それを反故(ほご)にしたのはクリントンとそのそそのかしに従った色男NATOだ。

 1998年、NATOという色男の後ろにいた操り人形師アメリカは、色男のNATOをして、旧ソ連村の娘たちをどんどんと誘惑するように魔法をかけたのである。
 1991年、ソ連村がバラバラになった後、まず1994年、色男NATOはアメリカからけしかけられて、ソ連村の準メンバーだったポーランド、ハンガリー、チェコの3人の娘を誘惑し、恋人にしてしまった。

 色男NATOの色仕掛けはそれだけでとどまらなかった。いけいけどんどんと、アメリカから後押しされ、エストニア、ラトビア、リトアニアが2004年、色男NATOの誘惑に負けて、旧ソ連村から家出をしてしまった。

 旧ソ連村の村長ロシアから見れば、娘たちを奪われたとの思いにかられた。

 そして、2009年には旧ソ連村と仲良しだったアルバニアがNATOに誘惑された。
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NATO東方拡大を後押ししたビル・クリントン

露大統領選にまで口出し

 こうなってくると旧ソ連村の村長ロシアとしては居ても立っても居られない。次から次へと村の娘が色男NATOに誘惑されて駆け落ちしていく。

 色男NATOは、2010年になると旧ソ連村のジョージア娘を誘惑したのみならず、旧ソ連村で村一番の美人であったウクライナまで誘惑し出した。ロシア村長としても、もはや我慢の限界だった。

 実はロシア村とウクライナは一緒にクリミアの黒海艦隊を運営していたから、ウクライナ娘がNATOに身体を許すと、黒海艦隊まで奪われてしまうことになる。

 こうした中、あろうことか、色男NATOを裏で操るアメリカは、旧ソ連村のロシア村長選挙にまで手を突っ込んできた。
 2011年3月ロシア村を訪問したオバマ政権のアメリカの副大統領ジョー・バイデンが、ロシア村の村長選挙に口出しをしたのだ。
 
 村長選挙はメドヴェージェフとプーチンという2人の男の間で争われていたが、ジョー・バイデンはモスクワにあるアメリカ大使館に、次から次へとロシア村の有力者を夕食に招待し、メドヴェージェフに投票するよう依頼したのである。

 なぜジョーがロシア村の村長選挙にまでくちばしを突っ込んだのか? アメリカから見てメドヴェージェフの方が色々と扱いやすい男と映ったからだ。

 しかし、アメリカ人のジョーが、プーチン対メドヴェージェフの村長選挙に口を出し手も出したことが返って裏目に出て、プーチンは村長選挙に勝利した。
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バイデンは副大統領時代、ロシアの大統領選にまで介入した

プーチンvs.バイデン

 かくして、ロシア村の村長として登場したプーチンは、何が何でも色男NATOの、村一番の美人娘ウクライナへの誘惑を徹底的に断ち切るという作戦に出た。

 これに対しジョーは、ウクライナ出身でありウクライナを良く知る民主党の戦略家ブレジンスキーを使い、裏で色々とNATOをけしかけ、ウクライナを色仕掛けでNATOになびかせようとした。

 こうなってくると、色男NATOから引き離そうとする旧ソ連村のロシア村長プーチンとジョーとの個人的怨恨(えんこん)試合の熾烈(しれつ)な戦いとなった。

 旧ソ連村のきっての美人ウクライナの、一番の魅力のポイント、クリミアの金髪を旧ソ連村のロシア村長が強引に鷲掴みにして色男NATOに触れさせまいとした。

 しかし、娘ウクライナはこの頃から、公然と色男NATOと結婚したいと言い出すはめになった。ロシア村長の金髪鷲掴みは逆効果となったのだ。

 ちょうどこの時、ロシア村の村長選挙に手を突っ込んできたジョー・バイデンが、アメリカの大統領になったので、ここぞとばかりに意趣返しに出たのが、ロシア村の村長プーチンだった。あの時の恨みを晴らすと言わんばかりである。

 ジョーがメドヴェージェフに肩入れをし、ロシア村長選挙に立候補していたプーチンの足を引っ張った恨みを、ジョーがアメリカの大統領となったその時を狙って晴らす、それが旧ソ連村ロシア村長のプーチンの腹の内だった。

 かくして、ロシア村村長プーチンとジョーとの個人的遺恨試合が始まった。

 色男NATOが、旧ソ連村の娘たちに手を出さないという合意(NATO東方不拡大合意)は、当時のソ連村の村長ゴルバチョフと、色男NATOの親玉アメリカのベイカー国務長官との間で交わされた約束であり、NATOは旧ソ連村の娘たちを誘惑するために1センチも東方には歩みを進めない、と合意されたことを指している。

 エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアが、不倫男NATOに誘惑され、駆け落ちをして、ロシア村とロシア村の仲良し同盟ワルシャワ条約機構から出ていった。

 ロシア村の村長から見ると、もはや残すは、村一番の美人ウクライナと、旧ソ連村の実家に残ると明言している、美しくはないけれどもロシア村の家付きの娘ベラルーシだけとなっている。
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村一番の美人ウクライナまで奪われようとしたロシアは……

バイデンとウクライナの深い関係

 旧ソ連村のロシアにとっては、何が何でも村一番の美人ウクライナを色男NATOに誘惑させてはならない、と思いつめたのである。

 娘ウクライナをいくら口で説得しても言うことを聞かない、聞かん気の娘を色男NATOから引き離すには、もはや実力行使しかないと、ロシア村の村長は決断した。しかも、自分の村長選挙で自分の足を引っ張ったジョー・バイデンが、色男NATOの指揮を取っているから、今こそバイデンに恥をかかせてやる意趣返しの決意となったのだ。

 2014年、プーチンがクリミア半島を領有化したとき、オバマ政権の副大統領としてジョー・バイデンはウクライナを支持し、プーチンに反対するNATOの指揮をとったのもジョー・バイデンである。

 ジョー・バイデンは他の、どのアメリカ大統領よりも、ロシア、そしてその前のソ連を知り尽くしている。現実に彼は1973年に早くもモスクワを訪問している。そして、ジョー・バイデンは個人的にも美人ウクライナと親しい関係にある。

 ジョー・バイデンの息子ハンター・バイデンは、ウクライナのエネルギー会社の役員会のメンバーである。
 ブリスマ・ホールディングスというウクライナの天然ガス生産業者の役員会のメンバーとして2014年から2019年まで活動していた。

 このブリスマ・ホールディングスはウクライナの政商、オリガルヒである、Mykola Zlochevskyが所有する天然ガス会社で、2014年4月にはマネーロンダリングの調査も受けている。ハンター・バイデンが、この会社の役員に任命された時、ハンター・バイデンがパートナーを務めるコンサルティング会社Boies Schiller Flexnerというコンサルティング会社も、ウクライナから報酬を支払われていたことが判明している。
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ウクライナから報酬を得ていたハンター・バイデン

ジョージ・ケナンの警告

 ジョーとプーチンとの個人的怨恨関係から始まったウクライナ戦争は、ウクライナに大量に投入される米露の武器によって、ウクライナの国土と国民を崩壊と破滅に導くのみならず、アメリカ=NATOの戦略的利益にとって、最もまずい露・中の結束と迫りくる台湾の陥落という結果を現実化させることになる。

 というのも、アメリカ=NATOは、核保有国相手には経済制裁と武器供与しかできないことを白日の下に晒(さら)したからだ。これを見てほくそ笑んだのは、核保有国である中国、北朝鮮、パキスタン、インド、そして核保有手前のイランである。いずれの国も、対露経済制裁には参加していない。

 ビル・クリントンの国務長官マデレーン・オルブライトはビル・クリントンの意向を受けてNATOの東方拡大の第1弾としてポーランド、ハンガリー、チェコをNATOに引き入れた。
実はこれはマデレーン・オルブライトの個人的な過去から来ている個人利害が絡んでいたと言っても過言ではない。

 マデレーン・オルブライトは、生まれはチェコであり、ユダヤ人としてヒトラーとスターリンの魔の手から逃れてきたという過去がある。従って、マデレーン・オルブライトこそスターリンの国ロシアをNATOの東方拡大により追い詰める旗振り役でもあった。

 この時、ジョージ・ケナン、つまりアメリカのロシア政策の中枢を担っていたアメリカ対露外交政策のエキスパートは、NATOの東方拡大は、
「冷戦後、最も致命的な米国政策の誤りである」
 と厳しく非難した。NATOの東方拡大をすればロシアを敵対国からパートナーに変身させようとするアメリカの長年にわたる努力が水泡に帰すのみならず、アメリカの国益に重大なマイナスをもたらすとジョージ・ケナンは警告していたのだ。

 その当時、NATOの東方拡大を推し進めるビル・クリントンとオルブライト国務長官に対し、それはアメリカを戦争に巻き込む危険な間違った判断だ、と反対したのはケナンだけではない。

 ロシアのプーチンという男の成り立ちと性格を考慮した時、アメリカNATOの東方拡大政策はロシアのプーチンを狂った凶器にしないためのアメリカが取るべき現実主義と自己抑制という賢明な対プーチン政策に反するものであったと言わざるを得ない。その結果、ウクライナという豊かな国家を荒廃に導くという悲劇を招いた。
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ジョージ・ケナン
via Wikipedia

極めてまずい方向にハンドルを切り間違えた

 実際に、ビル・クリントンとマデレーン・オルブライトがNATOにポーランド、チェコ、ハンガリーを誘惑して引き入れた時のロシアの大統領エリツィン(エリツィンは西側に対して極めて好意的な大統領であった)ですら怒り狂っていたのである。

 当時の米国務省の国務次官、ストローブ・タルボットもクリントン/オルブライトの採ったNATOの東方拡大政策には反対であった。

 結局、NATOの東方拡大はプーチンという男を追い詰めていった。現にプーチンは2007年3月、ドイツ・ミュンヘンで、講演をした際、次のように述べている。

「NATOの東方拡大は相互の信頼関係を著しく傷つけるものである。ロシアとしてはNATOが一体何のために東方拡大をしているのか、その意図を明確にしてもらう必要がある」

 そして1993年になると、ジョージ・W・ブッシュの国防長官であったロバート・ゲーツもジョージ・W・ブッシュが大統領を辞めた後、
「アメリカの対ロシア政策は極めてまずい方向にハンドルを切り間違えた。ルーマニアとブルガリアをNATOに引き入れたことはロシアを無用に挑発するだけである。ましてやジョージアとウクライナをNATOに引き入れようとすることは明らかなやり過ぎであるのみならず、そうすることはロシアがその国家基盤を侵される恐れがあると思いつめてもいいのだということであり、それはアメリカの国家政策として重大な失敗である」
 NATOの東方拡大に反対意見を述べている。

 さらに、オバマ政権が当時のウクライナの親ロシア派大統領の反対派を支援したことは“最も大胆な挑発行為”と言わざるを得ない、とゲイツは厳しい反対意見を述べている。

 つまり、ゲイツはオバマがしたことは“ロシアの胸先に包丁を突き付けるような挑発行為”である、とゲイツは最低の評価をしているのだ。

 その証拠にプーチンは直ちにクリミアを併合した。

 そしてジョー・バイデンはプーチンを不必要に言葉汚く“虐殺者”“戦争犯罪者”、「この男は政権を担当すべきではない」などと罵(ののした)ったが、強大国の指導者が一方の強大国の指導者を言葉汚く罵ることは世界経済の安定及び平和の維持に何の役にも立たないどころか、むしろ力による報復を招く愚かな言論暴力だと言わざるを得ない。
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マデレーン・オルブライト

対立構造を生み出す結果に

 ビル・クリントン、オバマそしてジョー・バイデンと3代続く米国民主党政権の対ロシア政策の過ちが行き着くところまで行き着いてしまった。それが今回のクリミア問題、ウクライナ問題である。

 世界の指導者が人権人道ということを振りかざす時には、よほど賢明な言葉の選択と現実主義に基づく抑制された政策の選択が必要であり、民主主義国家が人権人道を振りかざし軍事的行動(武器の供与を含む)に出ることは、独裁国家が武力を行使する時と同様の人命の被害をもたらすことは東京大空襲、広島・長崎において100万人近い婦女子の命が失われたことから明らかであろう。

 アメリカNATOのウクライナに対する武器供与とロシアに対する経済制裁こそ、世界平和と世界経済にとって危険なものはない。

 まず、経済制裁はロシア制裁に加わる国と加わらない国という世界の2分割対立構造を生み出した。世界の2極化こそ、世界平和にとって危険なものはない。

 現実にロシア制裁にはG7以外の国は全く参加していない。世界の大多数の国はロシア制裁に積極的に反対か、消極的反対である。
 アメリカの隣の国メキシコ、そしてブラジル、アルゼンチンを含む中南米の全ての国、そして全てのアフリカ諸国、そして全てのアジア諸国(パキスタン、インド、イランを含む)、そして全ての中東諸国(サウジアラビア、イスラエルを含む)はロシア制裁に参加していない。

 ところが、ロシア制裁の世界経済への影響はこの参加していない国に最も厳しい形で表れている。具体的に言えば、石油価格の上昇及び小麦の不足は中東・アフリカ諸国を直撃し、食糧飢餓問題を極めて深刻化させている。世界経済の不安定化をつくったのはアメリカ/NATOの始めたロシア制裁だ

 しかも、ロシアへの制裁をやればやるほどアメリカの敵“露・中”が接近し、2つ合わせるとアメリカは手に負えない怪物をつくり出すことになる。


 広い視野で地球規模の影響を考えずにプーチン憎しで始まったジョーのロシア制裁という戦争政策は西ヨーロッパ及びアメリカという西欧諸国のロシア封じ込め政策の破綻に直面したアメリカ/NATOのパニック症候群と言わざるを得ない。

 賢明な日本の指導者がとるべき政策は、ロシアに近いという地理的関係からパニックに陥っているNATOに歩調を合わせる限度は、ウクライナからの難民受け入れを積極的に進めるということに留め、対露経済制裁は面従腹背(めんじゅうふくはい)、すなわち口では対露経済制裁を唱えながら、裏では現実主義に徹してロシアとの交易を続け、そして何よりも重要なことは「アメリカのNATOは対露、そして対中に対して自ら武器をもって戦えない、せいぜい武器供与に留まる」というウクライナ戦争の現実を日本の姿に置き換えて直視し、不用意にロシアを刺激しないようにしつつ沈着に日本核武装を早急に進めることである。

 日本国民は核を持たない国の悲劇を今のウクライナに見るべきであり、そこから学ばなくてはならない。

ゼレンスキー10の疑問

 さて、最後にウクライナ大統領ゼレンスキー氏に対する疑問を幾つか述べよう。

 一番大きな疑問は、18歳~60歳の男性の国外移動を禁止する国民総動員令をいきなり発布したこと。なぜ男性は国外に避難してはいけないのか。そして61歳以上は避難して良く、18歳~60歳は避難しては駄目、17歳は避難して良い、とすることは性別/年齢による国家的差別ではないか。この国民総動員令は夫婦・親子を分断し、しかも年老いた父母を避難させる一家の大黒柱の男性の避難援助も認めないというものだ。

 しかも、この総動員令は何の前触れもなく、いきなり発布された。筆者の友人でイギリスに生まれ育った人物は出張でウクライナに行っていたが、この総動員令のため、飛行場で出発を拒否された。パスポートがウクライナのものだからだ。移動の自由という基本的人権をいきなり踏みにじったのだ。しかも何の前触れもなく猶予期間もなく。

 2番目。ロシア軍がウクライナを取り囲み、今にも侵攻が切迫している時、なぜ外交交渉ができなかったのか。なぜ、外交交渉でロシアとの和平的解決ができなかったのか。なぜ、今頃、武力侵攻を招いた後、停戦交渉に応じているのか。
 この時系列を見る限り、侵攻前の外交交渉をないがしろにし、侵攻後は慌てふためいて停戦交渉に応じるという、大統領としての不適格な状況判断、聡明な状況判断の欠如を示していないか。

 3番目。マリウポリに取り残されたウクライナ兵が全員殲滅(せんめつ)されれば、ロシアとの停戦交渉はあり得ない、という発言は、戦争当事国の大統領として極めて不適格な発言ではないのか。
 数千名とも言われるマリウポリに閉じ込められている自国兵士の命をロシアを停戦交渉に引き出すための、あるいは停戦交渉に残すための駆け引き材料としていないか。

 4番目。黒海艦隊の旗艦モスクワ号を撃沈したのは戦術として誤りではなかったのか。なぜなら、旗艦だけを撃沈したのでは、黒海艦隊そのものを無力化することにならず、かえってロシアによるキーウ(キエフ)に対する、より強力な火力による反撃、あるいはマリウポリに対するより強力な攻撃を招くだけ。どうして、旗艦以外の複数の艦船を同時にネプチューン・ミサイルで攻撃しなかったのか。

 5番目。ブチャの惨劇を大統領として、なぜ避けることができなかったのか。ロシア兵が侵攻してくれば過去のロシア兵の残虐性の歴史(日露戦争、太平洋戦争、アフガニスタン侵攻、シリア内戦、ジョージア侵攻等々)から見て、ブチャのみならずその侵略ルートにある町々は凌虐(りょうぎゃく)の対象になることは100%事前に予測できたはずであり、なぜ、その侵攻の経路に当たるブチャその他の都市の市民、農民、女性、子供たちを、あらかじめ退避させることをしなかったのか。

 6番目。なぜゼレンスキーはインターネットを使って西側諸国に武器の供与を求めるのか。「西側諸国が武器を供与すればより多くの人命が救われる」と、彼は演説しているが、事実は逆ではないか。
 西側諸国の提供する最新兵器で、ロシア兵の命が奪われれば奪われるほど、相乗的比例的にロシア兵が過激化し、ウクライナ兵の命も奪われる、ウクライナ市民の命も奪われる。ウクライナという土地で西側の武器とロシアの武器との無差別実験場になるからだ。最新兵器の実験場に自国の国土と自国の人民の命を晒(さら)すのは政治的指導者として的確で、正しい判断なのか。

 7番目。ゼレンスキー大統領は今まで武器を扱ったこともない男性に武器を持たせ(私のイギリスの友人がそうだ)、婦女子には火炎瓶のつくり方まで教え、ロシア軍に立ち向かうよう呼びかけている。これはロシア軍の銃口に彼ら、彼女らをさらすことによる人民の盾作戦ではないのか。

 8番目。ゼレンスキー大統領は自国民の命と自国の領土を東西両陣営の最新兵器の実験場にしないという判断と措置を取ることができたにもかかわらず、彼が西側諸国で演説し、ツイッターを発信し、インスタグラムで映像を送り続けるという“インターネット大劇場でロシア悪魔劇”を流し続けるというインターネット・ドラマ戦術を採用している結果、ロシア兵の怒りを生じさせ、銃口の抑制なきロシア兵を多くつくり出し、結果として彼の母国の人民の命の損失及び国土の荒廃を招く結果となっていないか。

 9番目。ひとえにゼレンスキー大統領のロシア軍侵攻前の対露交渉の失敗及び、侵攻後の対露戦術、対露戦略の未熟さが随所に見られ、“哀れなるかなウクライナ国民”という状況に至っているのではないか。

 10番目。アメリカの議会で「真珠湾攻撃を思い出せ」と、ロシア侵攻と真珠湾攻撃が同等であるという誤った歴史認識を示し、間接的に日本はロシアと同じ侵略者だと断定した。その直後に日本の国会でも演説を求めるということは、その場その場で聞く者にとって耳障りの良い言葉と内容を並べ立てるという基本的な理念の欠如とショーマンシップ的即興型政治家の資質を露呈するものではないか。
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ゼレンスキー大統領への疑問
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石角 完爾(いしずみ かんじ)
1947年、京都府出身。通商産業省(現・経済産業省)を経て、ハーバード・ロースクール、ペンシルベニア大学ロースクールを卒業。米国証券取引委員会 General Counsel's Office Trainee、ニューヨークの法律事務所シャーマン・アンド・スターリングを経て、1981年に千代田国際経営法律事務所を開設。現在はイギリスおよびアメリカを中心に教育コンサルタントとして、世界中のボーディングスクールの調査・研究を行っている。著書に『ファイナル・クラッシュ 世界経済は大破局に向かっている!』(朝日新聞出版)、『ファイナル・カウントダウン 円安で日本経済はクラッシュする』(角川書店)等著書多数。

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