兵頭新児:韓国大統領選に見る、過激な韓流「フェミ」への反動

兵頭新児:韓国大統領選に見る、過激な韓流「フェミ」への反動

新大統領に当選した尹錫悦氏

尹氏の「反フェミ」政策への批判

 去る3月9日、韓国で第20代大統領選挙が行われ、尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が次期大統領に決まりました。

 政治家経験のない門外漢ながら保守系の最大野党「国民の力」から出馬、革新系与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補を破っての当選など、まさにその姿はアジアのトランプか……と、こうした情報についてはぼくよりも、今これをお読みの『WiLL』読者の皆様の方がお詳しいかもしれませんね。

 しかし、この大統領選、経済もさることながら実は「ジェンダー平等を争点」にしたものだったことはご存じでしょうか。おいおい、どこぞの国のどこぞの党じゃあるまいし、コロナだ、ウクライナ情勢だ、と大変な時期にジェンダーとは随分浮世離れしているな……と思われたかもしれませんが、そんなことはありません。

 というのも、ユン氏は「女性家族部廃止」「性暴力誣告(ぶこく)罪の新設」、「兵士の給料を月200万ウォン(約19万3000円)に」といった公約を掲げ、若年男性層の支持を得て、今回の結果を得たのですから。

 この「女性家族部」とは、女性の権益増進、地位向上を目的とした行政機関。日本で言えば「男女共同参画局」とほぼ同じ役割の機関と考えていいでしょう。また、「性暴力誣告罪」というのは虚偽告訴等罪のことです。
 韓国の日刊新聞、『ハンギョレ新聞』の日本語版サイトを見ると、とにもかくにもそんなユン氏への批判でいっぱいなのに圧倒されます。

韓国の20~30代の女性たち「二大政党候補、女性嫌悪の大統領選やめよ」》という記事では、イ候補も弁護士時代、甥の女性殺人を弁護したことから「女性にとって今回の大統領選挙は最悪と2番目の悪ではなく、最悪と最悪の対決だ」「反フェミニズムにもとづくポピュリズム政治」「女性嫌悪を刺激し票集めをしている」と、両候補共に全否定です。

 同じく、《性排除の政治土壌作った政界…韓国の20代女性、票で応じる》という記事では、20代女性の主観に寄り添う形で「わき上がった悔しさは(中略)怒りに変わった」「涙が出そうになりました」「血の涙を流しながら」等々、申し訳ありませんがただひたすら情緒的な文章が垂れ流されるばかり。読んでいて内容が頭に入ってきません。

 韓国と言えば儒教文化の国ですが、その反動からか、実のところ近年ではフェミニズムが大変に盛り上がっているのです。

韓流過激フェミニズム=メガリアン

 韓国のフェミニストは「メガリアン」と呼ばれます。これは韓国フェミニストの集う電子掲示板「メガリア」を語源としているのですが、ウィキペディアには以下のように書かれています。
<span>《そのため「メガリア」を支持する女性を雇用する企業に対して男性による抗議が行われて解雇に繋がる事例もあり、韓国内での男女の対立は拡大している

 つまり、今回のユン氏の公約はメガリアンに憤る若年男性層の支持を得てのものであり、しかし、上に見た『ハンギョレ新聞』は左派寄りであるため、そこをよしとせず、とにもかくにも全否定、というわけです。
 
 ともあれ、韓国の男女は日本以上に激しく対立しており、ネット上ではメガリアンと「男超コミュニティ」と呼ばれる男性中心のサイトとで激しいバトルが繰り広げられているという、これまた、どこかの国とよく似た状況が現出しているのです。

 しかしならば、彼女らの言動にそれなりの正当性があるのかとなると、それは疑問と言わざるを得ません。

 このメガリアのロゴは手の親指と人差し指を小さく開いて見せているもの。実はこれ、男性のペニスの小ささを嘲笑ったものであり、そもそも(大統領選をいかにミソジニー、ミソジニーと批判してみせようと)フェミニストの方に、まずミサンドリーがあるとしか言いようがないのです。

※ミソジニー:女性嫌悪・蔑視/ミサンドリー:男性嫌悪・蔑視
著者提供 (11614)

「メガリアン」のシンボルマーク
via 著者提供
 他にも(ソース元が消えているので、まとめサイトからの引用になりますが……)、彼女らはともかく過激で、「小チュ民国」(陰茎〈コチュ〉が小さい男が集まっている韓国という意味)、「韓男虫」(「韓国の男」と「虫」の合成語)、「在基(ジェギ)する」(男性人権運動団体「男性連帯」代表だった成在基〈ソン・ジェギ〉氏のように自殺するという意味)といったジャーゴンをいくつも生み出していると言います。
 サイト「メガリア」そのものはすでに閉鎖されているのですが、メガリアンは今も活動を続け、ネットを経由して日本にも攻撃を仕掛けてきています。ネット上で萌えキャラなどに対して、女性差別だと文句をつけてくるといったことが常態化しており、(何で日本のコンテンツに文句をつけるのかよくわからないのですが)、ともあれその言動は今までご紹介してきたいわゆる「ツイフェミ」と全く変わるところがありません。

韓国でも「ガラスの天井」理論が

 では、ユン氏が廃止を謳う「女性家族部」についてはどうでしょう。その年間予算は約1兆5千億ウォン(約1400億円)という大規模な組織であり、そもそもこの国自体が「儒教の国だから男尊女卑なのだろう」といった通念に反したフェミニズム国家であることがうかがえます。

 同機関の公式サイトを見ると、英語圏の「he」「she」に代わる性別を特定しない三人称「ze」を称揚するなど、急進的なジェンダーフリーを推奨し、また女性の社会進出を推進しているようです。

「女性の社会進出は別に悪いことではないのでは」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、さらに見ていくと「ガラスの天井解消」などといったワードもうかがえます

 これは「女性の社会進出は見えない壁に阻(はば)まれているのだ」との意味を持つ言葉であり、つまり、ここには「(法制度などにおける男女平等が達成されても)空気、ムードのレベルで、女たちは男たちから社会進出を阻まれているのだ」という(立証のしようのないことに根拠を求める)含意があり、そうした曖昧な「男尊女卑」を撲滅せねばならないと大量の予算を投じることに、疑問を感じる人が出てくるのは当然ではないでしょうか。

 とはいえ、実のところ日本の男女共同参画局の年間予算10兆円近く、海外事情に文句を言う筋合いでもないんですが……。
兵頭新児:韓国大統領選に見る、過激な韓流「フェミ」への反動

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フェミニストが主張するほど「ガラスの天井」は存在しているのか?
「性暴力誣告罪の新設」についてはいかがでしょうか。

 これまで何度もお伝えしている通り、性犯罪において冤罪(えんざい)は想像以上に多く、レイプの訴えは6割が虚偽だとのデータもあります(ワレン・ファレル『男性権力の神話』331p)。

 先の『ハンギョレ』では「性暴力の加害者が相手を虚偽告訴等罪で告訴した事件(2017~2018年)において、有罪と確認されたのは全体の6.4%にすぎないことが集計されている」との批判がなされていますが(「韓国大統領選後、女性たちが「護身用品」を求める理由は」)、そんなことを言われても「6.4%も冤罪があるなんて大変な話だ」と思えるし、「疑わしきは罰せずの原則通りに厳密なジャッジがされているんだろう」とも「単に女性には甘い判決が出るから(これは世界共通の傾向です)」とも解釈でき、反論以前に「多少なら冤罪が出てもいいと思っとるんかい」と突っ込まずにおれません。

耐えられなくなった韓国男性

 最後に「兵士の給料を月200万ウォンに」について、韓国人の平均月収について調べてみても様々な数字が出てきて、これが高いのか安いのかわかりかねますが、フェミニズムに詳しいツイッタラー、魔色氏はnoteで興味深い指摘をしています。

この兵役という重荷に対して除隊後は就職で加点される配慮がありましたが1999年に韓国フェミニストたちがこれを男女差別とし撤廃させた。つまるところ韓国人男子にはただ兵役という重荷のみを背負わされるに至った。にも関わらず男は女に奢らされたり甲斐性を求められる。これはあんまりである。韓国人男子のフェミ、女性らに強烈な怒りの根源はここにあると見て間違いないでしょう
「ハヨンガ 」と遂に政界進出したアンチフェミ・激化する韓国フェミニズム戦争「フェミニズムから国民を守る党」

 そう、韓国男性は徴兵義務があり、これは新兵の自殺が絶えないほどに過酷なもの。
 しかし、それに対するささやかな特典として与えられる「軍加算点制度」すらもが撤廃されてしまった。何しろ先の「女性家族部」を見てもわかるように、韓国社会は女性の社会進出を推進していますから、数年遅れて社会に出る男性はいよいよスタートラインからハンデを強いられている。魔色氏はこれをこそ韓国男性のフェミニズムへの嫌悪の原因であるとしているのです。

 こうして見てくると、そもそもこの加点制度をこそ復活させるべきではと思うのですが、いずれにせよ兵士を少々優遇せよという考え方が間違っているとは、とても思われません。
兵頭新児:韓国大統領選に見る、過激な韓流「フェミ」への反動

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韓国男性は「兵役」が継続でも、その後の加点制は廃止されてしまった―
 ぼく自身は韓国事情に通じているわけではなく、ユン氏の公約を手放しで正しいと断言することはできません。

 しかし、その方向性については、実によくポイントを抑えているとの印象を持ちます。

 自己宣伝になり恐縮ですが、ぼくは2009年に『ぼくたちの女災社会』を上梓しました。目次を(amazonの試し読みででも)見ていただければおわかりになる通り、当時話題になっていたトピックスである痴漢、セクハラ、DVなどの性犯罪冤罪を中心に語った本です。しかし、この「冤罪」は司法、警察の問題に留まらず、いついかなる場合も女性は被害者、男性は加害者というポジションにはまり込んでしまうという男女のジェンダー規範にこそ起因するものであり、「冤罪」とは女性が「被害者になるという加害者性」を発揮するという「有毒な女性性」そのものである、と、ぼくとしてはそうしたことを本書で語ったつもりです。

 すなわち、「冤罪」というある種女性側からの暴力へと対抗手段を打ち出す、男性の被害者性を露わにするという意味で、「性暴力誣告罪の新設」は意義深く、「女性ジェンダーのネガティビティの可視化」という意味がある、と思うわけです

 それとは逆に「兵士の給料を月200万ウォンに」には「男性ジェンダーのポジティビティの可視化」という意味があるように思われます。現代社会は男性の価値が著しく下がっている社会です。それは平和であるとか、力仕事は機械が代行するなど、ゆえのないことではないものの、攻撃性、能動性という男性性は(フェミニストはその全てが「有毒」であるかのように語りますが)必要とされる側面もある。そこには正当な評価をせねばならない。この公約には、そうした理念が込められているように思われます。

 日本は徴兵制などなくありがたいところですが、しかし「女性の社会進出は全てよきこととして称揚されても、男性を養おうという女性はほとんど出てこない。男性はそれをずっとしてきたのに」といった状況は、「兵士がただ悪しきものとして疎(うと)まれてきた」状況とパラレルです。

 つまり、ユン氏は先進国においてはほぼ世界共通であろう、フェミニズムの弊害への現実的な対抗策をおそらく世界で初めて講じようとしているわけです。

 その結果がどうなるのかを近くで見守ることができる立ち位置にいることを、日本のぼくたちは感謝すべきなのかもしれません。
兵頭 新児(ひょうどう しんじ)
本来はオタク系ライター。
フェミニズム、ジェンダー、非モテ問題について考えるうち、女性ジェンダーが男性にもたらす災いとして「女災」という概念を提唱、2009年に『ぼくたちの女災社会』を上梓。
ブログ『兵頭新児の女災対策的随想』を運営中。

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