ナザレンコ・アンドリー:アフガン陥落が浮き彫りにした米...

ナザレンコ・アンドリー:アフガン陥落が浮き彫りにした米民主党政権の問題点

「悪夢の民主党政権」はアメリカでも同じ

 バイデン政権が無思慮に強行した米軍撤退を受けて、アフガニスタンでは親米政権が崩壊。首都カブールをはじめ、タリバンは驚異的なスピードでアフガニスタンのほぼ全土を掌握してしまった。離れた地域の出来事とはいえ、日本を含め米国と同盟関係にある国は対岸の火事とは思わず、この問題を注視すべきだと思う。アフガニスタンの失敗は、米民主党の根本的な問題をよく表している代表例だからだ。では、いったい日本はアフガニスタンの悲劇から何を学べるのだろうか。

【教訓①:米民主党は口先だけの噓つき】
 2017年にトランプ氏が大統領に就任し、「アメリカファースト」をスローガンに掲げながら、米軍に依存し過ぎているNATO(北大西洋条約機構)の防御態勢を批判し始めた際、民主主義国家に住む多くの住民が不安を覚えた。なかには「我々は見捨てられるのではないか」「トランプは同盟国を軽視しているのではないか」などという声も広まった。しかし、トランプ前大統領は強い口調で味方の消極的な姿勢を叱ったものの、行動においては、たったの一度も味方を裏切るようなことはしなかった。だが、いつも民主党は真逆の姿勢だった。

 思い出してほしい。2013年9月、オバマ元大統領が「米国はもはや世界の警察官ではない」と宣言したことで、シリアのアサド政権側の武装組織は反体制派に対する攻撃を強め、犠牲者が一気に増えた。その後も、オバマ元大統領は「化学兵器の使用はレッドラインだ」と口にしておきながら、シリア政府軍がグータ地区で化学兵器による攻撃を実行し、数百人が犠牲になっても、米民主党は行動を起こさなかった。

 そして、アメリカの民主党政権が弱腰であることに気づいたロシアは、「挑発しても反撃を食らうことはない」と判断し、ウクライナ島南部への侵略を始めた。ちなみに、日本の左翼は、よく「侵略戦争が起きたら国際社会が黙ってない」と口にする。それは、おおむね正しいとはいえる。だが、米民主党が主導していた当時の国際社会は、「遺憾」を評してばかりいて、何千人もの人々がロシア軍と親ロ・テロ組織の砲撃で亡くなっていた時に、「暴力はやめよう」「平和的な解決を」と武装した勢力に無意味な主張を繰り返し、「火に油を注ぐ」としてウクライナ政府に対する武器提供や販売を拒否していた。つまり〝黙っていなかった〟というだけで、本質的に何か動いていたわけではない。

 もちろん侵略国家からすれば、口だけの批判(反撃にすらならない)など痛くも痒くもない。では、いったい誰が初めてウクライナに殺傷能力を有する武器を提供してくれたのか——それは紛れもなくトランプ前大統領だった。米民主党が口にし続けたどんな綺麗事よりも、トランプ前大統領の判断の方が多くの命を救ったと私は確信しているし、もしオバマ政権が最初からトランプ前大統領ほどの強硬路線を取っていれば、シリアの悲劇もウクライナの悲劇も避けられたと考えている。アフガニスタンの崩壊は、改めて米民主党の弱さを世界に示しただけなのだ。
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ナザレンコ・アンドリー:アフガン陥落が浮き彫りにした米民主党政権の問題点

シリア、ウクライナ、アフガニスタンの悲劇を生んだ民主党の大統領たち
via Wikimedia Commons

国際テロ組織を「認めるべき」と主張する政治家

【教訓②:米軍の駐在自体は抑止力】
 どんなに弱腰の民主党政権でも、さすがに自国民が当事者になると、見捨てることはできない。たくさんの問題を抱えているとしても、アメリカは民主主義国家であり、アメリカの世論はそれを許さないからだ。そのため、日本をより侵略されやすい国にしたい左翼は皆、反米軍基地運動に必死なのだ。しかし、日本は憲法9条の呪縛に縛られたまま米軍が撤退していく沖縄の姿を見たければ、アフガニスタンの現状を見るのがいいだろう。また「実際に沖縄が侵略されたら、さすがの左翼も目が覚めるだろう」と考えている人がいるなら、国際テロ組織タリバンに対する左翼の言動を見るといい。たとえば、立憲民主党の県議会議員である浦野秀樹氏の下記のツイートによる反応は、その代表例といえるだろう。

 「アフガニスタン。日本はタリバン政権を認めるべき。国際社会の関与が大きい方が、人権問題や難民対応も改善される。ずっと戦争が継続してきたアフガニスタン。安定させるを第一とした外交を #立憲民主党」(2021年8月17日のツイート ※現在は削除済み)

 こうして、立憲民主党の議員がすぐに「タリバン政権を認めるべき」と言い出したように、「人権問題を改善するために中国による沖縄占領を認めるべき」と言い出すことは十分に考えられる。不思議なことに、日本の左翼は全力で戦争に反対しながらも、虐殺には無関心である場合が多い。
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ナザレンコ・アンドリー:アフガン陥落が浮き彫りにした米民主党政権の問題点

立憲民主党の県議会議員・浦野秀樹氏の実際のツイート(現在は削除済み)

覇権主義国家による世界の危機

【教訓③:米軍は日本の代わりに戦わない】
 とはいえ日本国内においても、米軍は必ずしも無条件で日本のために立ち上がるわけでもない。米軍撤退を正当化する記者会見で、バイデン大統領は「アメリカは(アフガニスタン軍に)戦うための手段を与えられるが、祖国のために戦う意欲は与えられない」と述べている。これはおそらく、共和党も共有している認識だろう。だからこそ、「日本には安保条約があるから安心」などと安心してはいけない。米兵にも自分の祖国と家族が存在し、日本のために血を流したいと心から思っている人は一人もいないし、する義理もない。米国人は日本人とともに戦うことはあっても、日本人の代わりに戦うことは絶対にあり得ないし、最終的には自国は自分で守るしかないことは、多くの国の実例が示している。

 つまり、日本の平和を確実に守る方法は一つしかない。他力本願でいることをやめ、憲法改正を成し遂げ、自国の防衛に必要な軍備強化をすることだ。

【教訓④:独裁政権が成立する国には、すぐに中ロが入り込む】
 アフガニスタン政府が崩壊した時、ほとんどの民主主義国家が自国の大使館から職員を撤退させた。ところが、喜んでタリバン政権を認め、いまだに通常通り大使館を開館している国がある——ロシアと中国だ。先日、ミャンマーで軍事クーデターが発生し、民主党政権が敗れた際にも、真っ先に独裁者を祝福したのもロシアと中国だった。この2カ国の行動は、とても分かりやすい。自国民を大量に殺害する独裁政権なら仲良くし、民主主義国家なら軍事挑発を繰り返す。たまには寄り添うフリをして金を騙し取る。こうした国々の連帯は、共通価値観(反米、民主主義の否定、覇権主義)に基づくのであり、いくら経済支援したところで、反人道的なイデオロギーに賛同しない限り有効な関係に至ることはない。

 そして最近の動向をみると、民主主義国家(自由主義陣営)が負け続けていることが明らかになる。一刻も早く、今は世界が第二次世界大戦の時と同じ状況であることに気づき、強硬路線に立ち戻らなければ、覇権主義国家は勢力をみるみる拡大していく。そして世界各地に拠点を持つことになれば、さらに欲が生まれて、小国だけでなく、中等国にも手を出し始めることだろう。その危険性を回避するために、自由な国との連携を強化し、防衛線をなるべく本土から遠ざける戦略が一番有効的だろう。バイデン政権のように味方を見捨てると、気づいた時には包囲状態になってもおかしくない。
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ナザレンコ・アンドリー:アフガン陥落が浮き彫りにした米民主党政権の問題点

独裁国家も容認するロシアと中国には要注意

いまこそ東アジアにおける真のリーダーシップをとれ

【教訓⑤:戦争の勝利に、圧倒的な軍事優位性は必ずしも必要ない】
 日本の軍備強化の重要性を訴えると、「いくら日本は防衛費を増やしても中国には敵わない」と反論されることがある。確かに、中国の人口や軍事費、兵力は日本より多いかもしれない。しかし、タリバンと米国の兵力には比べ物にならないほどの差があった。それでも、ある意味で諦めず戦い続けたタリバンは勝利を収め、アフガニスタンを手中に収めることができた。

 ちなみに余談だが、面白いことに6月、バイデン大統領が「米政府に勝ちたいのなら、銃では無理がある。反乱者は少なくとも核兵器と戦闘機を持ってからでないと」と記者会見の場で述べた。彼は「銃の所持権は政府の暴走を防ぐのに必要」と主張する合衆国憲法第2条賛同者を嘲笑ったのだ。ところが、タリバンは核兵器も戦闘機も所有していなかった。にもかかわらず、彼らは至ってシンプルな通常兵器で、核兵器や戦闘機を大量に持つ米軍を追い出すことに成功した。いったい、それが何を示すのか。

真正面からの正々堂々とした戦いで、敵を打ち負かすだけの力を持つのは望ましいことだが、これは必ずしも勝利に必要な条件ではない。占領するコストが占領するメリットを上回れば、敵は自然と諦めて出ていくし、反撃で十分な被害を与えることができれば敵も攻撃をためらう。世界第3位の経済大国である日本は、憲法9条の縛りから解放され、防衛費を世界基準であるGDPの2パーセントまで上げることができれば、簡単にそれだけの力を手に入れられるだろう。

 話を戻すが、国際テロ組織とそれらを支援する覇権主義国家が今なお国際社会の秩序を乱そうとし、米国は牽制しきれなくなっている。日本も標的にされている一国であるという危機感を持つべきだ。あまり信頼できない相手が米大統領になっているからこそ、日本は完全な独立を取り戻した上で、東アジアにおける真のリーダーシップを発揮しなければ時期が来ていると私は感じる。これは日本のためだけでなく、「自由」と「平和」を愛する自由主義陣営のためにも寄与すると私は信じている。
ナザレンコ・アンドリー
1995年、ウクライナ東部のハリコフ市生まれ。ハリコフ・ラヂオ・エンジニアリング高等専門学校の「コンピューター・システムとネットワーク・メンテナンス学部」で準学士学位取得。2013年11月~14年2月、首都キエフと出身地のハリコフ市で、「新欧米側学生集団による国民運動に参加。2014年3~7月、家族とともにウクライナ軍をサポートするためのボランティア活動に参加。同年8月に来日。日本語学校を経て、大学で経営学を学ぶ。現在は政治評論家、外交評論家として活躍中。ウクライナ語、ロシア語のほか英語と日本語にも堪能。著書に『自由を守る戦い―日本よ、ウクライナの轍を踏むな!』(明成社)がある。

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