李登輝氏は市長のとき、台北の都市計画として公園を100メートルごとにつくった。そこには緑の大木が生い繁り、屋台があって汁でも汁飯でも目の前でつくって食べさせてくれた。
 そこで台北の女性は、朝食の世話から解放されて会社へ行き男まさりの働きをしたので、今に台湾経済は大発展するぞと思った。まさに働き方改革である。
 しかし台湾の人は、これは日本人が身をもって教えてくれたことであって、日本人が引き揚げてしまえばあとはどうなることやら……と言った。
 台湾人は中国人に戻って巨大な建物を建てて喜ぶ――と思ったが、それでは失礼と考えて、台北の空をアメリカ製自動車の排ガスが充満していることを指して〝これをなくす方が先ですよ〟と言った。
 マスキー法の排ガス規制に先行している日本製の小型車を輸入禁止にしているのは、自分で自分の首を絞めているようなものだと言ったが、アメ車に乗って喜んでいる人にはわからないようだった。しかし、わりに早くわかってやがて日本車ばかりになった。良貨が悪貨を駆逐するのは早かったので、それを見て〝世界はいずれ日本化する〟と実感した。
 同じように、習近平が行きづまるのも早いと思った。途方もなく大きなことを言うからで、これはいずれ自滅すると感じた。
 権力者は自分で自分の考えにブレーキをかける用心を身につけるのが大事だと思うが、なかなかそういう人は少ないのである。
 たいていは、権力をさらに集めて雲にそびえる塔をつくろうとする。
 戦後革命に成功した中華人民共和国が、新憲法を制定して〝土地国有化〟を宣言したことも好例だが、それは紙の上に書くだけならできるが、その先はどうなるのか想像がつかなかった。
 ギリシャ神話に、手に触れるものがみんな金に変わるように神に願ってそれが実現したのはよいが、自分の娘まで金の銅像、いや金像になってしまって慌てて解除をお願いした男の話がある。今の中国の土地国有化にはじまる建築ブームをみると、やっぱりそうだったか、という気がする。
 土地に効用があるかは、その土地をどう利用するかにかかっているが、それには資金と技術と市場に関する将来の展望がいる。
 中国にはそれがない。権力万能でやれることには永続性がない。たいていの日本人はそれが分かっているが、なかには分かっていない人もいて、分かっていない日本人と分かっていない中国人が提携して欲にからんですることは大失敗になる。
 共産党幹部が土地国有化で新しく地主になっても、開発プランがデタラメでは利益が出ない。利益が出ない開発の山ができて結局、中国経済の成長率はどんどん低下した。昔は「保八」と号令すれば8%成長の報告が出そろったが、今は報告も下る一方である。恐らく間もなく5%以下になる。
 で、安倍首相とトランプ大統領の組み合わせも、今は日本の方が主役になってきたように見える。EUと難民の問題をみていても、ヨーロッパは脱落して世界をリードする力は日本だけになったようである。
 もともと中国経済の大発展は日本のおかげなのに、それを感謝せず全部中国共産党の功績にするようでは先が見えている。
 結局は台湾を丸ごと頂戴したい、になるから台湾は目が覚めて、北京につくか、それともワシントンにつくかになってきた。日本も傍観は許されない。
 では、どうなるのか。
 台湾は北京よりワシントンにつくと思うが、そのとき北京はどう出るのか、それから日本は……と考えると、やはり話は日本に戻るが、日本は外国とのことは安倍首相一人に任せているらしい。が、それでは日本が独裁国になる。
 安倍首相が、こんな国の面倒をこれ以上はみていられない、と言い出すかもしれない。
 またはトランプ大統領がそう言い出すことも考えられる。そうなれば群雄割拠というべきか、バルカン半島的というべきかは知らないが、アジアにそういう混乱が生まれるのは日本の望むところではないから、日本が望むことは他国より先に言わねばならない。
 その結果、日本が世界をリードするようになる。
 日本には大変な期待がかかっているが、もしかしたら無手勝流の勝利がくる。それは安倍首相がもう実行している。

日下 公人
1930年生まれ。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、ソフト化経済センター理事長、東京財団会長を歴任。現在、日本ラッド、三谷産業監査役。著書に『ついに日本繁栄の時代がやって来た』(ワック刊)。

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