安積明子:木下都議問題~政治家にも「製造物責任」を!

安積明子:木下都議問題~政治家にも「製造物責任」を!

「除名」すればOK⁉
via yahoo news
 7月23日に開かれた東京都議会で、選挙中に無免許運転で人身事故を起こした木下富美子都議の議員辞職勧告決議案が満場一致で可決されました。この決議案は法的拘束力がありませんので、もし木下議員がこのまま「任期満了まで都議として居座ってやろう」というのなら、それは可能です。また議員報酬なども従前通りに支払われる予定です。これって既視感がありますよね。そう、公職選挙法違反で逮捕され、当選無効となった河井案里氏です。 

 案里氏は2019年の参議院選挙で広島県選挙区に出馬して当選。安倍晋三前首相や菅義偉官房長官(当時)などから十分すぎる応援を得た上、自民党本部から1億5000万円ももらい、それが買収の資金になったようです。 

 案里氏はもともとあまり友達がいないタイプでしたが、事件が発覚してからは登院もせず、たまに国会に行っても話し相手もいない様子でした。でも1度だけ、本会議場で隣の席の加田裕之議員(自民党)に話しかけていたのを見かけましたよ。加田議員は人が良いから、話しかけやすかったのでしょうね。後で加田議員に話の内容を尋ねたら、「素敵なマスクですね」と言われたのだそう。おお、そうだった!兵庫県選挙区選出の加田議員は地場産業である播州織の木綿でオーダーシャツを作り、余った布で奥様がマスクを制作。あのマスク、とても素敵でしたよね!
安積明子:木下都議問題~政治家にも「製造物責任」を!

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この方を世に送り出したのは?
via wikipedia
 でもすでに都議を1期4年やっている木下議員には、そのような同僚議員もいないのでしょう。だって127人いる都議のうち、木下都議の辞職勧告決議案に賛成したのは126人。自分以外の全員が「お前は辞めろ」と言っているわけですから。

 そして案里氏と夫の克行氏には、議員辞職するまで国会議員の歳費が支払われましたが、歳費受領権は憲法で保障された強力な権利で、侵すことは許されません。 

 しかしそれは政争から議員を防御するという民主主義の要請であって、憲法は議員が不正行為をした場合を前提としていません。また木下都議のケースも都議会は辞職を「勧告」しかできず、居座る場合はその特権も差し止めることができないようです。 

 それが有権者から見て奇異に映るのは当然。少なくとも当選するに適さない場合は、最初から報酬を受領するに値しないとするべきでしょう。

 なお木下都議が居座る理由は、3か月以上粘って自民党の候補が繰り上げ当選させないためと囁かれていますが、本当でしょうか。だとしたら、免停による無免許当て逃げ事件が発覚した直後に木下都議を斬り捨てるようにさっさと除名した都民ファーストと投開票前日に木下都議を応援するために板橋区に入った小池百合子都知事の責任はますます重大になりますけど、政治家としての木下都議の“生みの親”である小池知事からは辞職に向けた強い発言はありません。

 もっとも政治家の進退は原則として本人が決めることですけど、それを生み出した政党や幹部には是非とも“製造物責任”を果たしていただきたい。そうでなければ“同類”と見なされても仕方ありませんて。
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安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。

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