第2次補正予算が閣議決定された。
 事業規模117.1兆円と、超大型予算だ。中でも注目は10兆円もの「新型コロナウイルス感染症対策予算」。通常国会は6月17日の会期末に閉じられるだろうから、事実上の“第3次補正予算”ということになる。安倍政権の失点である東京高検検事長人事・辞任問題が薄まるまで、とうぶん国会は開かれないと見られている。

 だが政治は動きを止めることはない。その一例が5月22日の枝野・小沢会談だ。
 
 立憲民主党の枝野幸男代表と福山哲郎幹事長は、国民民主党の小沢一郎衆議院議員の事務所に赴き、次期衆院選に向けて早期の野党結集を図り、協力していくことを確認した。重大な合意にもかかわらず、なぜ国民民主党側は玉木雄一郎代表ではなくて役職のない小沢氏なのか。
 
 理由はかねてからの両党の折り合いの悪さだ。とりわけ参議院では統一会派を組むものの、議員総会は別々に開いている状態だ。5月26日には国民民主党の榛葉賀津也参議院幹事長は、「批判だけしている野党では、国民の負託に応じられないと学ぶべき」と立憲民主党を痛烈に批判。両党の亀裂の深さを物語る。

 6月18日告示・7月5日投開票の都知事選についても、国民民主党の玉木雄一郎代表は「(コロナ対策に奔走する)小池知事の足を引っ張るべきではない」と述べたが、少なくとも立憲民主党は小池知事を支援するつもりはないようだ。そして前述した枝野・小沢会談では、都知事選について継続協議をも約束。実際に国民民主党は2つに分かれている。

 そもそも小沢氏が率いる自由党が昨年4月に国民民主党に合流したこと自体が不思議だった。国民民主党には「小沢アレルギー」が存在し、階猛衆議院議員が国民民主党を離党した。考え方にしても、両党は必ずしも近くはない。むしろ自由党は立憲民主党に近いといえた。よって枝野・小沢会談がスムーズに進んだのは納得できる。

 一方で玉木代表は政権側に近い。新型コロナウイルス感染症対策について協議した3月4日の党首会談に先駆けて、2月28日に安倍・玉木の電話会談が実現している。この日、玉木代表に菅長官から電話がかかり、いったん切った後に菅長官が再度玉木代表に電話。安倍晋三首相に替わっている。菅長官が仲介したという形だ。

 そもそも玉木代表が率いる国民民主党の打ち出す政策は、政府が打ち出すものを先んじている。10万円の一律定額給付はいちはやく国民民主党が提唱したものだったし、国民民主党が5月27日に発表した「追加経済対策~財政支出100兆円で国民の命と生活を守る~」は、政府が同日に発表した追加経済対策を超える119兆円規模になっている。また自民党にとって国民民主党の議員たちは、2009年に下野した時に失った層に相当。組むに損する相手ではない。

 立憲民主党の枝野代表は5月29日、「支え合う社会へ ポストコロナ社会と政治のあり方 『命と暮らしを守る』政権構想」を発表した。新自由主義の非情さを排して弱者目線の社会を目指すもので、「党内外の思いを共にする皆さんへの呼びかけ」(枝野氏)だという。枝野代表は2017年10月の衆院選ではいち早く立憲民主党を立ち上げ、野党勢力の中心となった。この呼びかけも解散総選挙を意識したものであることは間違いない。

 緊急事態宣言が5月25日に解除され、経済活動が正常化されつつある。失った元の生活は戻らないが、どうやって国民の気持ちを建て直せるかがこれからの政治の課題だ。国民に明確な選択肢を示せるように、政治の構図を整理しなければならないが、「10月25日投開票説」も囁かれている現在では、早急に実現する必要がある。ただ野党が一緒になればいいというような、安易な野党共闘に走るべきではない。
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安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。

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