新生(?)立憲民主党代表選の欺瞞

新生(?)立憲民主党代表選の欺瞞

 立憲民主党と国民民主党の一部などが合流した新党は、9月10日に枝野幸男氏を代表に選任。党名も「立憲民主党」に決定した。数の上では立憲民主党の国会議員が最も多いため、この結果は十分に予想できた。だが地方組織、党員やサポーター、パートナーなど国会議員以外の人たちが投票に参加していれば、この結果が変わっていた可能性は否定できない。

 ひとつの証拠が“立憲パートナー&国民サポーター”と称する人物が9月5日から始めた「合流新党 代表選 全国ネット投票」だ。実際の代表選では国会議員以外の参加が認められていなかったが、「お遊び」のこのネット投票は誰でも参加は自由。党員やサポーター(国民)、パートナー(立憲)の要件ですら、必要なかったのだ。

 その結果、枝野氏が5604票を獲たのに対し、国民民主党政調会長だった泉健太氏はその7倍の3万9174票も獲得。知名度で枝野氏に劣る泉氏の方が、圧倒的に多いという結果になった。
 もちろんこれは、リベラルな立憲民主党および枝野代表に対するアンチテーゼの色が濃い。だがそれだけではない。実際に広く投票を実施していたら、泉氏はもっと善戦していた可能性があるということを示したのだ。

 今回の合流新党の代表選に党員などの参加を認めなかった表向き理由は、「それぞれの資格が違うから」ということになっている。立憲民主党と国民民主党では18歳以上の日本国籍保有者で党費4000円を収めれば代表選に参加できることは共通しているが、国民民主党では18歳以上で年会費2000円を払えば国籍不問でサポーターになれて代表選に参加できるのに対し、立憲民主党は年間500円の登録料を支払うパートナーには参加資格がない。

 しかしながら、投票権のないパートナーも「政治参加」を前提としており、新党結成時のみの特例として投票参加を認めることは不可能ではない。そもそも今回の代表選を「政権交代が可能な野党第一党の代表を選ぶ選挙」ととらえるなら、投票に参加するのは参政権にほぼ近くなり、経済的制限を設けるべきではないということになっていく。

 にもかかわらず、党員やサポーターやパートナーに投票権を広く認めなかったのは、代表選が枝野・立憲民主党に不利になってしまうことを懸念したためではなかったか。
 
「立憲民主党はあなたです!」―枝野氏は2017年10月の衆議院選挙で演説の最後に必ずこのセリフを入れ、誕生したばかりの立憲民主党を野党第一党に躍進させた。それから3年間というもの、立憲民主党は1度も代表選を実施せず、今回が最初の代表選だ。

 果たして、立憲民主党は我々だったのか。我々は政治の主人公として扱われたのか。独裁者ほど安易に民主主義を語るという事実を、我々は忘れてはいけない。 
 (2604)

安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。

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