後継総裁レース展望:「霞が関」の意中の人は?

後継総裁レース展望:「霞が関」の意中の人は?

活発化する官僚の動き

「岸田(文雄)さんが、挨拶に行ったが、麻生(太郎)さんは支持について曖昧な態度に終始したみたいですね。恐らく、菅(義偉)さんと、ある程度話ができているからでしょう。そうなれば、我々としては極めてあり難い状況になる」
  と、外務省関係者は、真剣に安堵の言葉を漏らした。
 
 安倍晋三総理が8月28日の記者会見で正式に辞任を表明してから3日。
 週明けの東京株式市場は、先週末の激落から一転して上昇気流に乗った。8月31日の日経平均終値は前週末比257円高と、市場の混乱が伝わってくる。

「新総裁の顔が見えてくるまで、株価は乱高下するでしょう。我々も、岸田・菅両名に加え、石破(茂)さんにも目配りをしなくてはいけないので、担当部局は大変です。幸い、私の部署は、コロナウィルスの影響もあまり受けず閑散期なので、こうして電話で話す余裕がある」
 と苦笑した後で続けたのは財務省関係者。

「いずれにしても、反中の流れは米国で政権交代が起きても変わらないでしょうから、菅さんが麻生さんの支持を取り付けられるか否かは、僕らの仕事にも直結してくるので、看過できません。情報が入れば、すぐに幹部に上げています」
 と、閑散期と言ったはずのその関係者はむしろ情報収集に余念がないようだった。


 ポスト安倍を眺めて政界が動き出すのと呼応するかのように、霞ヶ関官僚の動きも活発化している。
 各省庁、思惑は様々だが、〝反中親台湾〟という新たな潮流を継続しながら、経済・外交政策を打たなくてはいけないという意見は概ね一致している。何より大事な、コロナウィルスの感染拡大防止策は、絶対に継続しなければならないという点。

 そのために重要なのは、あと1年、安倍政権の政策等を維持しながら、早々に新総裁を決め、コロナ禍における経済・金融対策を我々の手でハンドリングすることだと前出の財務官僚は力をこめる。
「そうでなくては、安倍総理の努力が無になるでしょう」
 とも付け加えた。

官僚のハートをつかんでいた安倍総理

 そもそも、安倍総理の健康問題に関しては、辞任前から霞ヶ関官僚の中でもごく一部の側近や大幹部しか知らない重要事案だった。国家第一と考え、関係者は噂が広まらないように細心の注意を払ってきたという。

 官邸関係者は声をひそめて言う。

「総理の病状は極めて悪くなっていたそうです。治療の一環として、輸血している、このままでは大腸を除去するオペも必要になるという話が漏れ伝わってきた時は、そんな状態で政務を執っていたのかと頭が真っ白になりました。コロナウィルスの感染拡大がひと段落した今しか辞任のタイミングはなかったのでしょう。新総裁が決まるまで職務を全うすると聞き、涙を浮かべた職員もいた」
 
 総理の意を汲むためにも、新総裁の選出は、両院議員総会での国会議員、都道府県連の代表者による投票がベストだと、前出の官邸関係者は言う。

求められる継続性~やはり「菅推し」か

 一方、経産省関係者は身近に迫った危機を感じ取ってか、次のように話す。
「過去に例をみない国難に日本はいるわけで、政策の大転換、人事の大刷新なんてされたら困る。菅さんは、二階さんの後押しを受けていますが、安倍総理の盟友である麻生さんも加われば、二階さんの親中色を薄めることができる。麻生さんが岸田さんを積極支持しなかったのは、菅さんが選出される公算が高いからでしょう。むしろ、幹事長職を岸田さんに渡し、二階さんに退いてもらえば、当面は丸く収まる」

 本格的な総裁選は、当初(安倍総理が任期を全うしていた場合)の予定通り、「来年行えばいい、その方が我々も延命できる」という極めて消極的な菅推し論が背景にはある。

 実際、1年後には、経産省内閣とまで呼ばれた経産官僚の栄華は終焉を迎え、現幹部の左遷や退任が相次ぐだろうと前出の経産官僚はため息をつく。経産省が凋落することは誰の目にも明らかで、逆に言うと、そこまでして先延ばししたいのかとも思う。

 いまだ選挙の選出法も決まっておらず、次期総裁が決まる17日(16日に前倒しという報道も)まで、事態は二転三転しそうだが、霞ヶ関は次の「官邸官僚」を見据えて、走り始めている。
官邸主導の人事や動きは、もはや止めることはできないからだ。
 (2481)

横田由美子(よこた・ゆみこ) 

埼玉県出身。青山学院大学在学中より、取材活動を始める。官界を中心に、財界、政界など幅広いテーマで記事、コラムを執筆。「官僚村生活白書」など著書多数。IT企業の代表取締役を経て、2015年、合同会社マグノリアを立ち上げる。女性のキャリアアップ支援やテレビ番組、書籍の企画・プロデュースを手がける。

関連する記事

関連するキーワード

投稿者

この記事へのコメント

コメントはまだありません

コメントを書く