既存マスコミの中で圧倒的な影響力を持っているのは、地上波テレビだ。その地上波テレビの最大の問題点は、少数の会社が情報を独占していて、同じような情報しか流れないところである。

 放送法では、第1条で、「放送の不偏不党、真実及び自律」が謳われ、第4条で「公安及び善良な風俗を害しない」「政治的に公平」「事実をまげない」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」との4原則が示されている。だが、これらが全く守られていないのは、公然の秘密だ。

 この歪(ゆが)んだ地上波テレビの影響力を削ぐことは、日本再興のためには欠かすことができない。

 これについては2つの戦略を考えたい。

 1つ目は、情報の独占を許さないようにし、従来とは違う角度のニュースを流すところが地上波テレビ放送に新規参入できるようにすることだ。例えばインターネットテレビ局のDHCテレビが地上波に新規参入して、「虎ノ門ニュース」が毎日地上波で流れるような事態になったら、どうなるかを考えてみよう。
 従来の地上波ニュースとのあまりの違いに驚く人が多く出て、どちらの方が正しいのかと考える人が増えることになる。その結果、従来の地上波テレビがいかに偏(かたよ)っていたかに気づく人も続出することになるだろう。

 この新規参入に最も有効なのが、髙橋洋一氏などが主張する電波オークションだ。電波は国民の共有財産であるから、電波利用者からなるべく多くの電波利用料を取ることが好ましい。現在60億円程度とされる地上波の電波利用料が、これにより数千億円にまで上がると予想されている。国庫に入る費用がそれだけ増えるのであれば、政府にとっても国民にとっても好ましい。

 公共事業においても随意契約から競争入札へと切り替わっている中で、放送事業だけ割当制で既存事業体を一方的に保護するのは適当ではない。そもそもOECD加盟35カ国中、未だに電波オークションを実施していないのは日本だけだ。

 現在地上波放送局は、無駄にBSやCSのチャンネルまでたくさん取得して、情報の独占になるべく穴があかないようにしているが、まっとうな電波利用料を支払わされたら、多チャンネルを維持する余裕はそもそもなくなることになる。希少な電波の有効利用を促進するためにも、電波オークションはやってしかるべきだ。

 電波オークションが行われた場合に、財政的に厳しい地方局は高額入札ができないだろう。ましてや無駄に複数のチャンネルを押さえて情報独占の穴を塞(ふさ)ぐなんてことを行う余裕はないはずだ。そうなると、特に歪んだ情報空間になっている地域、例えば沖縄とか北海道においても、新規参入が進みやすくなる。こういうところで情報独占に穴があく意義
は特に大きい。

もはや放送に≪電波≫はいらない

 随分と過激な提案だと思った人もいるだろうが、2つ目はもっと過激だ。

 NHKが「NHKプラス」というインターネットテレビを開始し、この秋には民放もインターネットテレビに本格参入することになっているのはご存じだろうか。地上波と同じ番組をインターネットでも同時配信を行い、テレビ離れをしている若い人たちにも見てもらおうという算段だ。

 これは単純に時代の流れだとも言えるが、ここで気づいてもらいたいことがある。それは、放送をするのに電波は果たして必要なのかというところだ。

 確かにかつては放送に電波が使われていたのは当たり前だったわけだが、インターネット社会になって状況は大きく変化した。そもそも本質的にはインターネットのほうが放送事業に適しているといえる。

 電波の場合には、見たい番組が放送される時間帯にテレビの前にいるか、わざわざ事前に録画予約を行う必要があるが、インターネットであれば、そういう制約が全くないからだ。見たいものを見たい時に見つけて、それを見ればいい。見たくないところはスキップすることもできる。

 IoT(インターネットに接続される製品)が爆発的に広がり、超大容量の情報が何億本も同時に流れつつ、時間差がほぼ生じさせない状態で双方向接続されるような世の中へと、社会はどんどん変化していこうとしている。こうなると、地上波放送なんかに貴重な電波を使わせていてはいけないということになるはずだ。

 地上波放送を廃止させれば、地上波テレビの特権的な影響力は完全に排除できる。そしてこれは社会を次世代型に変革していく上でも大切なことだ。放送事業者の既得権に配慮して、社会の進歩を遅らせてはならない。

 地上波放送はもういらないのではないのか、インターネット放送だけあればいいのではないのかというキャンペーンが展開される中で、オークション実施のハードルを引き下げるというのも、戦略的にはあるだろう。

 世の中の当然の流れを推進すれば、地上波放送局の既得権なんて考慮する余裕はない。そしてこの問題はそれで片がつくとも言えよう。
 (1388)

朝香 豊(アサカ ユタカ)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

関連する記事

関連するキーワード

投稿者

この記事へのコメント

コメントはまだありません

コメントを書く