コロナバブル?≪株≫で笑った人・泣いた人

コロナバブル?≪株≫で笑った人・泣いた人

コロナで儲けを増やす!「株長者」

 新型コロナウィルスのダメージを回避するためにとられた各国の金融政策などにより、マーケットはちょっとした「コロナバブル」ともいえる様相を呈している。
 ただ一筋縄ではいかないのが相場のツネ。マーケットでは「笑う人、泣く人」が明確に分かれているようなのだ。今回はそんな悲喜こもごもの投資家模様を紹介したい。

 投資家で、現在の株資産20億のAさんはいわゆる「株長者」。コロナウィルスの感染拡大が騒がれはじめた2月初旬に、危なそうな銘柄は、売却をし、損失を最小限に食い止めている。
「それでも、3月の段階で、私の資産のうち4億近い損害が出た。さすがに全身に震えがはしったほどです。1カ月ほどは、現金を手元に残しつつ、ピンときた銘柄に200株ぐらいの買いを入れて様子見を続け、いけそうだったら買い増し、ストップ高を狙って、売却するというのを繰り返した。6月以降は、再び慎重になっています。今は、全体の資産もコロナ前より2億ぐらい増えているんです」
 と、意気軒高だ。
 
 Aさん曰く、08年のリーマンショックから10年かけて復活した株が、いま、再び08年の時点に戻っただけなので、今が山だと思い売買をしているという。

 しかもAさんは、幾つも証券口座があるので、大きく下落した銘柄は、平均単価を下げるよりも、別立てで購入して売却益を得ていることもある。いずれにしても突っ込む額が大きいので、失う時も大きいが、儲ける時も桁が違う。
 
 またAさんは、こんな時代だからM&AやTOBが再び増加するとみており、そうした銘柄を探しては、数千株単位の売買を繰り返している。コロワイドと大戸屋HDではけっこう儲かりましたと、朗らかに話した。

「私は吝嗇家(りんしょくか)なので、精神的に耐えられ損失の額は、一銘柄で数百万といったところでしょうか。それぐらいなら、他で当たれば取り返せます。いずれにしても、相場に手を出すなら、死ぬ気でやれと言いたいですね」

いわゆる「一般個人投資家」は……

 そんなAさんに対して、次に紹介するのは、都内の食品会社に勤務するBさん(36)。なんでもBさんは最近、スマホを開くのが怖いという。開けると、ついネットの証券アプリを開いてしまい、マイナスの画面を見てしまうからだ。しかし、怖くて、手放すこともできず、気がつくと、1時間おきに株価と、保有資産額をチェックしている。

 ついひと月前は、5~6万程度だった含み損が、その後、平均単価を下げようと、短期で買い増ししたことが響き、今では20万近くになってしまった。
 自分では慎重なタイプだと思っていたのにと、Bさんは、頭を抱える。

「5月に緊急事態宣言が解除されて、株は上がる思った。ネットでもしきりに『株は安い時に買え』という広告が出ていましたし、周囲では、4月の自粛期間に、30万儲かった、50万儲かったという景気のいい話がなされていた。前からやってみたいと思っていたこともあり、つい手を出してしまった。実際、5月は、10万近くプラスになって、家のローンにまわせると浮かれていました」
 
 事態が暗転したのは、6月に入って10日もたったころだろうか。突如、保有している株が下がり始めたのだ。それまでも、保有株の株価は乱高下を繰り返しており、少し上昇すれば売る、下がれば買うという細かい作業を繰り返して、利益を得ていた。しかし、以降、Bさんが保有している株価は下がる一方で、損失は膨らんだ。

 当初、Bさんがつぎ込んだ株資産は30万程度だったが、今では、その3倍近くになっており、2割近いマイナスになっている。妻にも打ち明けられず、かといって買い増しできる資金はなく、株価が再び上昇することを祈る日々だ。
 しかし、新聞などの報道を見ると、コロナ問題の長期化は避けられず、株価は秋の米大統領選を境に再び、大きく下降するのではないかという記事すら見かける。

「もはやどうしていいかわからない。1銘柄につき、大きいものでは、6万円近い含み損となっているものもある。我が家にとって6万は大金。簡単に損切りなんてできない。いったいどうしたら……」
 と、逡巡する日々が続く。

 Bさんの場合、手元資金はもともと30万円程度だったのに、ダメージを押さえようと70万円を無理して足したことで、結果として、大きな損失を得ることになってしまった。こういう人、実は身近にいるのではないか?

明確に分かれる勝ち負け

 コロナ禍でも存在する株長者。しかし、彼らの多くは、コロナ以前も株長者だったわけで、要するに、資産がある人はどんな時代でも富むチャンスを得られやすく、コロナを機に儲けている。Aさんもそんな株長者の1人。

 その一方で、庶民はビギナーズラックこそあれど、基本的に、痛手を被りやすいということ。勝負が始まる前から購買力の差で勝敗が決まる……という、マーケットの一つの真実ををコロナ不況は拡大させている。
 (1940)

横田由美子(よこた・ゆみこ) 

埼玉県出身。青山学院大学在学中より、取材活動を始める。官界を中心に、財界、政界など幅広いテーマで記事、コラムを執筆。「官僚村生活白書」など著書多数。IT企業の代表取締役を経て、2015年、合同会社マグノリアを立ち上げる。女性のキャリアアップ支援やテレビ番組、書籍の企画・プロデュースを手がける。

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