橋本琴絵:LGBT「女性トイレ使用」裁判論考――LGB...

橋本琴絵:LGBT「女性トイレ使用」裁判論考――LGBT差別禁止が女性の危険を助長する

LGBT差別禁止が内包する「女性差別」

 令和3年5月27日、東京高裁(北沢純一裁判長)は経済産業省の男性職員である一審原告(被控訴人)が、医師から性同一性障害の診断を受けたことのみを理由に勤務する部屋から近い女子トイレの利用制限を受けたこと等を理由にした損害賠償請求につき、請求を認めた第一審の判決を取り消し、上司による「(男性器の切除手術を)しないのだったら、もう男に戻ってはどうか」という発言のみ違法性を認め、その他の請求を棄却する判決を下した。本論は、この東京高裁の判決を支持するとともに、第一審が判示した異常性とLGBT差別禁止が同時に苛烈な女性差別を内包するものであるとの主張をしたく思う。

 まず、本件事案の概要を整理してみたく思う。

 経済産業省職員の男性(以下、本件男性という)が、生まれた時から生物学上(戸籍上)の性別が「男性」である事実と本人の性認識が不一致であることから、精神科医を受診して性同一性障害の診断を受けた。しかし、本件男性は性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条第1項で定める家庭裁判所の審判を受けてはおらず、また性転換手術も「皮膚のアレルギー」等を事由に拒否していることから法律上(戸籍上)も生物学上も男性である。

 本件男性は平成21年7月頃、自らが性同一性障害を発症していることを職場の上司に伝え、同年10月頃より女装して勤務することを希望し、その許可を得た。引き続き、本件男性は勤務する部屋に近い女子トイレの利用を希望したところ、経産省側は普段女性職員の利用が少ない二階ほど離れた女子トイレの利用を認め、多くの女子職員が利用する女子トイレの利用を認めるためには、本件男性が性同一性障害を発症していることを女性職員たちへ自ら説明して女性職員の理解を得なければならないとしたところ、本件提訴に至ったものである。また、本件男性は上半身の衣類を脱ぐ必要性のある健康診断をほかの女子職員と同一の時間内に行うことも要求している。

東京地裁「女性はガマンしなさい」

 そこで第一審の東京地裁は、本件男性の主張を全面的に認めた。その理由を大きく二つに分けると、第一に性同一性障害の者と変質者をその外観から判別する手段がなく、毎年必ず我が国で発生している女子トイレ内での性犯罪被害を女性職員が受ける蓋然性の恐怖について「抽象的な可能性」に過ぎないと断じ、第二に本件男性が「その意思にかかわらず,性別適合手術を受けるほかないこととなり、そのことが意思に反して身体の侵襲を受けない自由を制約する」(つまり、本件男性は性自認が女性である一方で男性器の切除手術を受けたくないという意思を持つのに、手術を受けなければならないことはおかしい)というものであった。

 まず第一審の狂気は、女子トイレは女性の社会生活上必要不可欠な施設である一方、変質者による排泄行為の盗撮や強制猥褻など過去多様な性犯罪が反復して実行された犯罪機会を提供する場所であるにもかかわらず、変質者と性同一性障害の区別を法律上受けていない者が利用し、その区別が外観上不可能となることで女性が警戒ないし防犯・自衛する機会を奪い、女性全体が性犯罪被害を受ける蓋然性の恐怖を覚えなければならない人権権侵害について、受忍義務が女性にはあると判断している『性差別思想』を基礎にしていることである。

 この旨を指摘した経済産業省側の主張を「抽象的な可能性」に過ぎないと断じた第一審判決は、まさにLGBT関連の政治思想が苛烈な「女性差別思想」に基づくものであることを吐露していると評価できる。

 次に、第一審の矛盾点は性自認が女性である本件男性が「男性器接切除手術を受けることは喜びではない」であるとの旨を認定していることである。手術できない医学上の理由は認定されておらず、あくまで本件男性の「皮膚にアレルギー等があるので手術できない」とする自己申告のみである。

 私が不思議なのは、性自認が女性であるのに男性器を持つ客観的事実こそが、何より苦痛なのではないか、といった疑問である。私は性自認も生物学上も女性であるが、もし自分の身体に男性器があったならば、何よりも優先して切除手術を受けることが幸福であると考える。実際、前掲の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律を立法する際にも、多くの性同一性障害当事者にヒアリングを行い、性自認とは異なる性器の切除が苦痛であるとの証言が皆無であったことから、戸籍上の性別変更要件に性自認とは異なる生殖器の切除が法定されたのである。従い、本件男性の主張は他の性同一性障害の方々とは同一ではない。

 つまり第一審の主張とは、法律も医学も社会性も治安の安定も女性の人権侵害も一切関係なく「性自認」がすべてに優先するものであり、この優先の実行にあたってほかの人々の人権が害されることは首肯される、ということである。
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橋本琴絵:LGBT「女性トイレ使用」裁判論考――LGBT差別禁止が女性の危険を助長する

第一審の判決はむしろ女性を危険に陥れるものだった

真の権利保護

 こうした過激な政治思想は、二十世紀に数億の人類を地獄に叩き落した共産主義思想と近似性を持つ。革命の実行のためには、10歳の王族女子(ロマノフ王家)を撲殺しても正しいことであると考え、革命のためには女性を殺しても男児と売春婦を交わらせて性感染症に罹患させて遊んでも犯罪ではない(フランス革命時、ルイ16世の長男シャルルが受けた処遇とされる)、といった類の向こう見ずな「殺意」がLGBT関連の主張に垣間見えるのである。

 本件男性が性自認とは異なる生殖器の切除手術を受けることと、女性全体が変質者と性同一性障害者の区別ができず変質者から性被害を受ける不利益ないしその蓋然性の恐怖を受ける不利益を比較し、前者が優先されるとした「性差別思想」は、女性として絶対に看過できない。

 一方で、本論は以下の二つの事案についてはLGBT側の権利を保護し、差別を禁止すべき理由にあたると考えるため、紹介したい。

 平成26年7月1日静岡地方裁判所浜松支部判決(判例時報2243号67頁)では、ゴルフクラブにおいて元男性の女性が女子トイレおよび女子シャワー室の利用を希望したところ、「女性施設の利用は認めない」と拒絶したゴルフクラブ側の判断を不法行為として、元男性の主張を認めた。この元男性は、性同一性障害の診断を受けたのち、男性器の切除手術をして、性同一性障害特例の家事審判を受けて戸籍上も女性に変更していたにもかかわらず、女性施設の利用を拒否された事案であった。本論は、これこそ明白な差別であると考える。第一に、性同一性障害の診断を受け、第二に性自認とは異なる生殖器の切除手術を受け、第三に戸籍上の性別変更を求める家事審判を受けて、生物学的外観も法律上も「女性」となっているにもかかわらず、女性施設の利用が認められないことは差別以外の何物ではないからだ。

 次は、令和2年7月20日大阪地方裁判所では、戸籍上は男性だが性自認が女性であると主張したタクシー乗務員が、女装ないし他の女性職員と同等程度の化粧をしてタクシーを運転したいとの希望に対して、タクシー会社側が乗務禁止にしたことにつき、禁止期間中の給与支払いを会社側に命じた判決である。この判決も、本論はおおむね支持する。何故ならば、男性が女装と化粧姿でしてタクシーを運転したとしても、旅客運送の業務に差し障らないからである。

 たとえば私がよく利用する飲食店にも、化粧をして女装をした声域が男声の給仕がいる(この者がウェイターなのかウエイトレスなのか判別できないため給仕と表現する)。しかし、料理を運搬する業務において、女装であっても男装であっても、また化粧をしていてもしていなくても、声帯が女声であっても男声であっても、料理運搬に必要不可欠であるのは運搬能力自体と清潔であることであって、性の様相が何であっても実態として差し障りないからである。私が求める給仕の能力に、性は無関係であるからだ。

 もちろん、こうした装いの者を不快に思う側の思想信条の自由も保障されなければならない。不快ならば、当該商業サービスを利用しなければ良いだけの話である。したがって、雇用側に対しては面接採用時に選択した性自認と業務時における性自認は一致させなければならないため、採用時の性自認と異なる性自認を採用後に主張した際は、虚偽申告を理由に解雇する経済的権利が雇用側に認められて然るべきである。サービス提供上、生物学上の性と性自認が異なる者を忌避する顧客がいた場合、経済的不利益が生じるからである。しかし、これはLGBT関連の差別ではない。学歴詐称と同じく、面接時の虚偽申告が雇用側の経済的損害に直結するからだ。単純な話、もし私がホストクラブを利用した際(したことはないが)、性自認が男性の生物学上の女性が出てきて接客した場合、私はサービス不履行を理由に料金の支払いはしない。

江戸時代からLGBTに寛容な日本

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橋本琴絵:LGBT「女性トイレ使用」裁判論考――LGBT差別禁止が女性の危険を助長する

日本は江戸時代から「LGBT」に寛容であった
 以上からLGBT関連の諸問題を俯瞰すると、一方の権利を認めれば、一方の権利が侵害されるといった構図が目立つ。論点は、どこまでの権利侵害が認められるか、といった視点である。そこは「気持ちの問題」と「貞操や盗撮といった直接的な人権侵害や顧客を失う経済的損害への直結」が対立した場合、後者が優先されるのは当然である。前者は他の解決手段がある一方で、後者の被害は回復不可能であるからだ。

 他の解決手段とは、我が国ではほかの先進国に先駆けて、性転換手術をすれば法律上の性別さえ変更できる法律を既に施行していることである。これで、トランスジェンダーの問題は既に解決・終了している。にもかかわらず、すこし譲歩すれば度を越して侵犯してくるどこかの赤色帝国のように、「裁判所も法律も関係ない。俺がそう思っているのだからそうしろ」という「拷問で尊大で実に男性的主張」は、女性らしさを根本的に欠如している以前にまったく以て汲むべき理由がない。

 権利保護を大義名分にして、ほかの権利侵害を平然と行うことは絶対的に許されない。そもそも、我が国の歌舞伎の女形があるように、約400年前からLGBT文化に寛容であった我が国の伝統と歴史に対して、女装した男性を火刑に処していたような国々の基準を適用することは根本的に前提を過っている。我が国は厳格な封建君主でさえ男性同性愛者向けポルノ雑誌の発行を許可していた歴史を持つ国である。まさか400年後の世界でゲイ雑誌が発行されていたことを誇られることを当事者は予想しなかっただろうが、歴然たる事実である。

 以上から、まずは一式切り落としてから女子トイレを利用されたい(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律平成十五年法律第百十一号第三条第一項第四号の法定要件より)。

 全女性を代弁して申し上げる。
 (6389)

橋本 琴絵(はしもと ことえ)
昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。広島県呉市竹原市豊田郡(江田島市東広島市三原市尾道市の一部)衆議院議員選出第五区より立候補。日本会議会員。

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