ナザレンコ・アンドリー:崩れ行く日本国家――安易な外国...

ナザレンコ・アンドリー:崩れ行く日本国家――安易な外国人受け入れが日本を滅ぼす

安易に外国人を受け入れ始めた「日本」

 日本の警察庁組織犯罪対策部が発表した訪日外国人犯罪情勢に関するデータによると、2020年の国籍等別の総検挙件数・人員は、ともにベトナムと中国の2カ国で全体の約6割を占め、いずれもベトナムが最多となっていた。長年移民・難民問題に悩まされて、外国人によるテロや組織的犯罪が日常茶飯事になっているEUと比べたら少ない件数とはいえ、政府が外国人就労の拡大を図っていることから、今後は外国人による犯罪がますます増加することが懸念されている。そして私は、その懸念には十分な根拠があると思う。

 まず今まで日本は、どうしてヨーロッパよりも外国人の増加に上手く対応してこれたのか。その答えは、就労ビザ取得のハードルの高さにあったと思う。本連載の第2回でもこの問題に触れたが、昔の日本は外国人労働者に関して「単純労働を認めない」「高度人材しか受け入れない」という姿勢をベースにしていた。一般的な就労ビザを貰うのに、いまだに「大卒でなければならない」「専門的知識が必要な職に就かなければならない」「受けた教育の内容と業務が一致しなければならない」「日本人と同等以上の報酬が保障されなければならない」といった条件が定められていて、さらに雇用する企業側にも「なぜ日本人ではなく外国人を雇う必要があるのか」を説明する理由書を入管に提出することも求められる。この制度はかなり優秀なもので、主に2つのプラスをもたらした。

【1,犯罪者になりそうな人の入国・大罪を防いだ】
 令和元年の統計を見ても、総検挙人員の在留資格別割合は次の通りになっている。短期滞在が 20.9%、留学が 18.2%、技能実習が18.0%、定住者が 11.1%、日本人の配偶者等が8.4%。つまり、日本の本来の制度に合うような「外国人労働者」がほとんどいないわけだ。労働を前提としない在留資格のほうが8割を占めている。

【2,安い労働力の使用を防ぎ、日本人の雇用を守った】
 単純労働者の雇用を認めない上、日本人より低い報酬を支払うことも認めず、雇用必要性を説明する理由書まで企業側に求めることで「同じ能力レベルなら、日本人を雇ったほうがずっとマシ」という状態がつくられていた。

 しかし、少子化高齢化の問題が深刻化するにつれて、日本の外国人受け入れ制度が急速に劣化してしまった。日本が犯した失敗を具体的に申し上げると、第一に、留学生を頼りにしたことが挙げられる。多くの国は留学生の就労を認めないし、日本の留学制度も本来留学中の労働を想定していなかった。ところが、「在留資格外活動許可」というものがある。簡単に言うと、週28時間以内(長期休み中は週40時間以内)のバイトを認める制度だ。学生の生活を支えるものであり、やはり実社会で働くことによって得る知識も勉強と同じほど大事とは思うが、それが行き過ぎたせいで留学生に頼らないと営業が成り立たない業種までできてしまった。日本語学校の周りのコンビニや飲食店に行けば、誰もがすぐわかることだろう。そうした場所では、今では日本人店員に会うことのほうが珍しいからだ。そうした身近なサービス業に従事している外国人の大半は留学生であり、世界的に見れば留学生の単純労働に頼る経済システムはかなり異常といえる。
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やはり治安悪化の懸念は払拭できない

技能実習生制度の問題点

 また日本の場合、留学生を単純労働者として扱うだけにはとどまらなかった。今度は「技能実習生」という制度ができたのだ。一応、正式な目的は「発展途上国の労働者を受け入れ、技術や知識を学んでもらい、本国の発展に生かしてもらうこと」となっている。

 だが、それは明らかなごまかしだ。まず、ほとんどの実習生は何の専門的な知識も身に着けられない肉体労働を任せられる。本人たちも、それを理解した上で(悪質なブローカーに「金になるぞ」と騙されて)単純に出稼ぎに来ている人が多い。それどころか、もはや日本政府自体も「知識を学んでもらうために」などという言い訳も諦めて、人手不足の業界に技能実習生を積極的に入れていることを認めている。まさに、かつてドイツが導入していた「ガストアルバイター・プログラム」そのものである。

 技能実習生制度の不思議な点は、それに参加することで得している人がほとんどいないということだ。実習生の話をすると、国で役に立つような知識も得られないし、正式な労働者として認められていないため、最低賃金以下の報酬や残業代未払いは日常的に起きている。それに労働環境もひどく、長時間労働を強いられることもあれば、パワハラを受けることもしばしばある。そのせいで失踪する者も少なくない。そうして唯一の生活の支えを失った失踪者は犯罪に手を染め、日本社会全体も(真面目な外国人労働者を含めて)損してしまうことで、「負の連鎖」が起こる結果になる。

 唯一得しているのは、出稼ぎ労働者を低賃金労働で働かせ、平気で使い捨てるブラック企業だろう。左派系の人権活動家もよく「現代の奴隷制」を声高に主張するが、この問題に限っては同意せざるを得ない。誰のためにもならないこの制度を、一刻も早く廃止すべきだと思うからだ。これが第二の失敗である。
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ナザレンコ・アンドリー:崩れ行く日本国家――安易な外国人受け入れが日本を滅ぼす

外国人だと賃金が安く済むのだろうが、そのような余裕があるのなら、まずは国内の非正規雇用者に手を伸ばすべきでは?

反日外国人を受け入れ続ける危険性

 そして第三の日本の失敗は、国籍別にバランスを保とうとしないこと。訪日・在日外国人の国籍別統計を見ると、受け入れは明らかに中国・韓国・ベトナムなど数が限られた国にかなり偏っていることがわかる。それの一体、何が悪いのか。たとえば、外国の地で住んだとしても、同じ国の人としか関わりがなければ、移住先の国に馴染むことはできないし、チャイナ・タウンのような「社会の中の社会」を形成してしまう結果にしかならない。すると本来、日本に好意を抱いていた方でも帰属意識が変わり、自分の民族コミュニティを「内」、日本社会を「外」と思い始め、もし利害が不一致した場合、自然と「内」の利益を優先してしまうことになる。

 特に危険なのは、日本が政治的に対立している国からこそ多くの移民(外国人)を受け入れることだ。これは時限爆弾と考えるべきで、ウクライナもかつてまったく同じ過ちを犯してしまった。ソ連崩壊直後、ウクライナ領に定住していたあらゆる人々に例外なく国籍を与えた。その結果、「この国に憎悪を抱きながら住み続ける人」の層ができてしまい、隣国との関係が戦争までエスカレートすると、その層は迷うことなく敵軍(反ウクライナ)の協力者になった。反日教育を受けて育った人、来日後も同化の意志なく「反日が常識」のコミュニティに留まる人も、いざという時に同じ行動をとる危険性は大いにある。いや、すでに日本と歴史問題を抱える国から来た外国人のなかには、日本を貶めようと反日勢力のプロパガンダに加担している人も少なくないかもしれない。

 ちなみに左派活動家は、よく「多様性を尊重しろ」や「多文化共生社会が理想だ」などと口にするが、その考え方は却って外国人から日本に馴染む機会や日本社会で対等な構成員になれる機会を奪っていると私は考える。日本を好んで、自らの意思で移住しているわけだから、日本社会に喧嘩口調で「俺を受け入れろ」と叫ぶのではなく、受け入れてもらえるように努力するのが当たり前ではないかと思う。でなければ、あまりに身勝手で傲慢ではないだろうか。日本の言葉で言えば、まさに「郷に入っては郷に従え」なのだ。

 最後になるが、日本政府は「簡単かつ誰もがすぐ思いつくような政策」に走ることが多い。大臣などの閣僚クラスが「レジ袋の量を減らしたい→なら有料化します!」「コロナ感染が拡大している→なら人の移動そのものを規制します!」「原発の安全性が心配されている→なら全原発を停止させます!」「人手不足に悩んでいる業界がある→ならそこに外国人労働者を派遣します!」——枚挙にいとまがない。後先の弊害を軽視するのは、決して良い考え方ではない。人手不足の原因は少子高齢化なわけだから、外国人就労者の受け入れを拡大する前に、出生率の上昇に力を入れることが筋であり、先決だろう。経済が回っていても、日本人がいなくなる国は、もはや「日本」と呼べなくなるのだから。10年後、50年後、100年後も、まずは日本人のための日本であってほしい。日本の未来を見据えた政治ができる政治家が出てくるのを願うばかりだ。
ナザレンコ・アンドリー
1995年、ウクライナ東部のハリコフ市生まれ。ハリコフ・ラヂオ・エンジニアリング高等専門学校の「コンピューター・システムとネットワーク・メンテナンス学部」で準学士学位取得。2013年11月~14年2月、首都キエフと出身地のハリコフ市で、「新欧米側学生集団による国民運動に参加。2014年3~7月、家族とともにウクライナ軍をサポートするためのボランティア活動に参加。同年8月に来日。日本語学校を経て、大学で経営学を学ぶ。現在は政治評論家、外交評論家として活躍中。ウクライナ語、ロシア語のほか英語と日本語にも堪能。著書に『自由を守る戦い―日本よ、ウクライナの轍を踏むな!』(明成社)がある。

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この記事へのコメント

aung 2021/8/6 17:08

ナザレンコさんの指摘には「その通りだ」と思うことがしばしばありますが、「技能実習生制度の不思議な点は、それに参加することで得している人がほとんどいないということだ。」という点は正確ではありません。
例えば澤田晃宏さんの『ルポ 技能実習生』などをお読み頂き、もう少し技能実習に理解を深めていただきたいと思います。

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