【朝香 豊】WTO事務局長選に見る韓国の厚顔無恥

【朝香 豊】WTO事務局長選に見る韓国の厚顔無恥

つき合うことが嫌になる国

 WTO(世界貿易機関)の新しい事務局長を決める選挙では、当初立候補した8人がすでに5人に絞られ、ここから2人に絞られる第2ラウンドが9月24日から始まった。

 韓国から立候補している(ユ・ミョンヒ)産業通商資源省通商交渉本部長も第2ラウンドに進んだことから、韓国では大きな期待がかけられている。

 兪氏は韓国の反日通商政策の先頭に立って働いてきた人物だ。福島県などの8県の水産物に対する韓国の禁輸処置には科学的根拠がないと日本が韓国を相手に争った時に、OECD(経済協力開発機構)の理事会で日本を非難したのは兪氏だ。軍事転用可能な戦略物資についての韓国の管理が杜撰なことを問題とし、韓国を輸出先として特別に優遇するホワイト国から日本は韓国を外した時に、日本非難の先頭に立ってきたのも兪氏だ。韓国は兪氏を支持するように日本に求めてきたが、そんな人物を日本が推せるわけがない。「隣国だから支持するのが当然」だという韓国の世論を全く理解できないと日本の政府関係者が述べているのは、極めて常識的な話である。

 だがこれに対して韓国大統領府は、日本は「隣国に害を与えることに慣れて」おり、「恥知らずの水準は全世界で最上位圏」に位置し、「国際社会、特に先進諸国は日本のこうした水準を十分に認識している」と、日本をメッタ切りにした。つくづく付き合うのが嫌になる国だ。

機能不全のWTO

 さて、現在WTOは機能不全に陥っている。WTOの「最高裁判所」とも言うべき上級委員会のメンバーは7人で構成され、1つの案件を3人1組で審理することになっている。だが、現在は上級委員が1人だけしか残っておらず、上級委員会が全く開けず、紛争処理が事実上機能停止に陥っているのだ。

 事務局長を8月で退任したアゼベド氏の後任の事務局長の「代行」さえ、加盟国間の対立が強くて選べない状態になっている。4人いる事務局次長の中から選ぶことになっているのだが、これすらできないのだ。

 こうした事態が生まれている背景には、アメリカの強い態度がある。

 中国は今や世界最大の貿易国となり、GDPも世界第2位となった。それでもWTOは中国を未だに「途上国」扱いのままとし、様々な優遇処置を認めている。これにアメリカは強い不満を抱いている。

 中国は国内で外国企業が自由に活動するのを認めていない。例えば、中国のグレートファイアウォールと呼ばれるインターネット規制のせいで、抜け穴的な手法を用いない限り、FacebookもTwitterもYouTubeも中国では使えないようになっている。中国の内と外で経済のあり方はあまりに大きく異なっていて、中国の内側では中国共産党の息のかかった企業が絶対的に優遇されるようになっている。

 そればかりではない。中国は外国の知的財産権を散々盗み、育成させいたい企業には政府の補助金をどんどんと注ぎ込んでいる。アメリカはこうした中国の企業とアメリカ企業が「自由競争」をさせられるのは不適切であるとし、中国から自国産業を守るために高関税を課した。だがWTOの専門家パネルはこの関税を「国際ルール違反」であると裁定した。

こうした中国に甘いWTO裁定は日本にとっても他人事ではない。例えば中国は新幹線の製造技術を国内だけに利用するという約束を日本と交わすことで、日本から新幹線技術を受けることができたが、一旦譲り受けたらこの約束を反故にして、「独自開発」と称してどんどん輸出するようになった。

 先進国だけでなく、途上国にとっても中国は厄介な国だ。フィリピンが中国と南シナ海の領有権問題で対立関係に陥った時に、中国はフィリピン産バナナの検疫を「強化」する手に出た。税関で足止めされているうちにバナナが傷んでしまい、大量のバナナが廃棄処分にされ、膨大な経済的ダメージがフィリピンにもたらされた。政治案件が生じた場合に、経済面で嫌がらせを行うのはWTO違反のはずだが、WTO内部に親中派の人脈を張り巡らせているので、中国は切り抜けることができる。

韓国に公正中立は期待できない

 こうした中国の無法ぶりに対抗できるようにWTOを組織改革していくというのは、公正な世界市場を構築していくためには絶対に必要だが、韓国の兪明希氏がその役割を果たせることは全く期待できない。韓国は中国共産党の習近平総書記を国賓として招くことで、中国側と合意しているほどの親中国家であるからだ。

 事務局長は所属国家を代弁してはならないことにはなっているが、韓国人にこれを期待するのは間違っている。国連事務総長を務めた韓国の潘基文氏は、伊藤博文を暗殺した安重根を題材とするミュージカル公演がニューヨークで行われた時に、各国国連大使を招待するような真似までやっているのだ。

 なお韓国は日本と同様に中国にも兪氏選出の支援を求めたが、中国は現在WTOの事務次長を輩出していることから、兪氏の選出には後ろ向きであるのは皮肉だ。東アジアで事務局長と事務次長がともにいるのは地域バランスが悪すぎるからだ。

 日本と中国がともに賛成しない兪氏の選出は現実的にはあり得ないが、韓国では2次ラウンドを突破したら日本の態度が変わって兪氏が選出される見込みが高いという報道を行っている。

 ともあれ、WTOの事務局長は加盟国の全会一致主義によるので、中国が賛同しない候補が選出されることはあり得ないというのは、実に頭の痛い問題である。TPPにイギリスや欧州やアメリカにも参加させ、TPPの紛争処理に期待するという路線のほうが、中国包囲網という観点では現実的なのだろう。
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朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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