政治主導による決別の絶好の機会
相変わらず旧統一教会(以下、統一教会)と故・安倍晋三さんの問題が燃えておりまして、本連載でも「自民党はさっさと統一教会と関係を断つべき」という主張を掲載させていただいたところ、結構なご反響を戴きました。お読みいただき、ありがとうございます。
繰り返しになりますが、統一教会は駄目です。
凶弾に斃(たお)れてしまった安倍さんの命と引き換えに炙(あぶ)り出された日本裏面史における統一教会、故・文鮮明さんと、60年代以降の反安保闘争における反共産勢力封じ込めや、霊感商法、過剰な寄付・献金問題に宗教2世問題、さらには北朝鮮問題と、戦後日本の総決算の機会を戴いたのだ、と前向きにとらえて安倍さんの偉大な業績に華を添えたい気持ちは強くあります。
まさに米ソ対立の最前線であった日本が、歴史的経緯から統一教会的なものを必要としたものの、その後は目的を果たしたはずの勝共連合はいまなお残り、統一教会も信者を減らしながらも記者会見で唾棄(だき)すべき言い逃れに終始していまして、見るに堪えません。何で開き直ってるんでしょう。後継の岸田文雄政権は早めに政治的決断を行い、宗教組織法に基づいて裁判所に統一教会と関連組織を解散命令を出してもらえるような働きかけをし、きちんとした幕引きを図るほかないのではないかとも思います。
また、被害に遭われた信者やそのご家族に対する救済の仕組みも必要となるだけでなく、実際には韓国・北朝鮮勢力の影響下にあったと見られる統一教会による自民党を中心とした日本政界汚染がどれだけ進んだのか、また、マスコミや官僚組織などにどのくらいの統一教会の信者がいまなお残っているのか、憲法面、人権面にも充分に配慮したうえで、事後的な対策を練る必要があります。
言うなれば、一連の問題は統一教会という教団と信者との間にある消費者問題にとどまらず、事実上、日本政府・政体を対象とした国際的なスパイ事案であったのだという認識を強く持つ必要があるのではないかと思います。安倍さんも特にそうですが、政府中枢における重要な政策決定にあたって、これらの統一教会やそれに連なる組織・団体が何をどこまで働きかけをし、いかなる決断に至ったのかを詳らかにすることで、ようやく本来企図する統一教会の排除が実現するのではないかと思います。
すなわち、宗教団体と信者・ご家族の間の民事ではなく、違法な資金集めや合同結婚式など宗教を隠れ蓑にした反社会的行為を行う団体による刑事の問題であって、これこそ本来の政治主導による決別の絶好の機会であるとも言えます。
折しも、安倍さんが悲運にも銃殺された奈良県警の本部長であった鬼塚友章さんだけでなく、警察庁長官でもあった中村格さんもまた、事実上、元総理暗殺の責任を取る形で事実上の辞任をしています。まさかこんなことになるなんて、という思いと、誰かが責任を取って再発の防止に向けて教訓としなければならない組織の都合とで無念の降板となったのもまた残念なところです。
繰り返しになりますが、統一教会は駄目です。
凶弾に斃(たお)れてしまった安倍さんの命と引き換えに炙(あぶ)り出された日本裏面史における統一教会、故・文鮮明さんと、60年代以降の反安保闘争における反共産勢力封じ込めや、霊感商法、過剰な寄付・献金問題に宗教2世問題、さらには北朝鮮問題と、戦後日本の総決算の機会を戴いたのだ、と前向きにとらえて安倍さんの偉大な業績に華を添えたい気持ちは強くあります。
まさに米ソ対立の最前線であった日本が、歴史的経緯から統一教会的なものを必要としたものの、その後は目的を果たしたはずの勝共連合はいまなお残り、統一教会も信者を減らしながらも記者会見で唾棄(だき)すべき言い逃れに終始していまして、見るに堪えません。何で開き直ってるんでしょう。後継の岸田文雄政権は早めに政治的決断を行い、宗教組織法に基づいて裁判所に統一教会と関連組織を解散命令を出してもらえるような働きかけをし、きちんとした幕引きを図るほかないのではないかとも思います。
また、被害に遭われた信者やそのご家族に対する救済の仕組みも必要となるだけでなく、実際には韓国・北朝鮮勢力の影響下にあったと見られる統一教会による自民党を中心とした日本政界汚染がどれだけ進んだのか、また、マスコミや官僚組織などにどのくらいの統一教会の信者がいまなお残っているのか、憲法面、人権面にも充分に配慮したうえで、事後的な対策を練る必要があります。
言うなれば、一連の問題は統一教会という教団と信者との間にある消費者問題にとどまらず、事実上、日本政府・政体を対象とした国際的なスパイ事案であったのだという認識を強く持つ必要があるのではないかと思います。安倍さんも特にそうですが、政府中枢における重要な政策決定にあたって、これらの統一教会やそれに連なる組織・団体が何をどこまで働きかけをし、いかなる決断に至ったのかを詳らかにすることで、ようやく本来企図する統一教会の排除が実現するのではないかと思います。
すなわち、宗教団体と信者・ご家族の間の民事ではなく、違法な資金集めや合同結婚式など宗教を隠れ蓑にした反社会的行為を行う団体による刑事の問題であって、これこそ本来の政治主導による決別の絶好の機会であるとも言えます。
折しも、安倍さんが悲運にも銃殺された奈良県警の本部長であった鬼塚友章さんだけでなく、警察庁長官でもあった中村格さんもまた、事実上、元総理暗殺の責任を取る形で事実上の辞任をしています。まさかこんなことになるなんて、という思いと、誰かが責任を取って再発の防止に向けて教訓としなければならない組織の都合とで無念の降板となったのもまた残念なところです。
資産の流れを検証せよ
ただ、そのときのトップが辞めれば責任を取ることになるのか、というのは議論としてあると思うのですよ。
社会的に、その問題を詳らかにし、再発を防ごうとするのであれば、文字通りその背景にあった統一教会についての処置を警察庁が適切・適法な形で主導し、社会的に問題の目を取り除かなければならないはずです。これを温存したまま、トップのクビだけ替えても中村さんや鬼塚さんに責任をおっかぶせて組織的な問題を残したままフタをするだけで終わってしまう恐れもあります。
より深く問題を見るならば、統一教会の問題は反社会的行為を行う団体の監視体制の不備でもあります。いま国際的なマネーロンダリングの枠組みで課題となっているFATF(金融活動作業部会)対応において、海外の政府要人やそのご家族の資産状況を監視する海外PEPs(外国の政府等において重要な地位を占める者)の枠組みを日本でも求められるようになってきました。
先般のウクライナによるロシアの侵略に絡んで、大統領のプーチンさんやそのご家族の在外資産が日本も含めて凍結される話があります。それらと同様に、故・文鮮明さんや、それに連なる奥さん、ご子息も教団や教団関係を引き継いでいますが、彼らの資産状況がどうであり、日本からどのくらいの資金が流出しているのか確認を取れる仕組みになっていたのか、やはり検証する必要があるんじゃないかと思うんですよね。
単に「日本人信者やご家族から不当に大金を巻き上げていました。けしからん」で終わっては駄目で、どこに送金したのか、どういう使われ方をしたのか、何が目的で、どのような資産が教団や関係団体に残されているのか――そして、これらが故・文鮮明さん一族の事実上の私有財産として引き続き運用されているのであれば、それは違法な資金の運用の可能性があるので、これへの課税や追徴を取れる仕組みを導かなければならないでしょう。
社会的に、その問題を詳らかにし、再発を防ごうとするのであれば、文字通りその背景にあった統一教会についての処置を警察庁が適切・適法な形で主導し、社会的に問題の目を取り除かなければならないはずです。これを温存したまま、トップのクビだけ替えても中村さんや鬼塚さんに責任をおっかぶせて組織的な問題を残したままフタをするだけで終わってしまう恐れもあります。
より深く問題を見るならば、統一教会の問題は反社会的行為を行う団体の監視体制の不備でもあります。いま国際的なマネーロンダリングの枠組みで課題となっているFATF(金融活動作業部会)対応において、海外の政府要人やそのご家族の資産状況を監視する海外PEPs(外国の政府等において重要な地位を占める者)の枠組みを日本でも求められるようになってきました。
先般のウクライナによるロシアの侵略に絡んで、大統領のプーチンさんやそのご家族の在外資産が日本も含めて凍結される話があります。それらと同様に、故・文鮮明さんや、それに連なる奥さん、ご子息も教団や教団関係を引き継いでいますが、彼らの資産状況がどうであり、日本からどのくらいの資金が流出しているのか確認を取れる仕組みになっていたのか、やはり検証する必要があるんじゃないかと思うんですよね。
単に「日本人信者やご家族から不当に大金を巻き上げていました。けしからん」で終わっては駄目で、どこに送金したのか、どういう使われ方をしたのか、何が目的で、どのような資産が教団や関係団体に残されているのか――そして、これらが故・文鮮明さん一族の事実上の私有財産として引き続き運用されているのであれば、それは違法な資金の運用の可能性があるので、これへの課税や追徴を取れる仕組みを導かなければならないでしょう。
資産の流れを検証せよ
同じく、国内PEPsという、日本の政治家やその親族の方々が、どのような資産状況を持ち、いかなる法人・株式会社の株式をもって、いかなる資金が入金され運用されているのかを監視する仕組みもまた、今後は検討されるべきでしょう。ザル法と揶揄(やゆ)される政治資金規正法もそうですが、宗教団体を標榜(ひょうぼう)するだけで無税で監査も不充分な仕組みを悪用され、日本人の大切な資産・資金を毎年、数百億円の規模で韓国や北朝鮮などに送金し、メディア事業や不動産など収益事業・物件に投資されてきた観点からも、しかるべき監査と納税を行わせるための座組も必要になろうかと思います。
これらの本来の枠組みづくりこそ、経済安全保障の1丁目1番地であり、単に産業のサプライチェーンだけでなく、技術、人員、資産の流出に対して外為法以外のアプローチでも監視や統制ができる仕組みを構築して初めて「日本政治が統一教会問題から足抜けできた」と言える状況になるのではないでしょうか。
折しも、内閣改造された岸田文雄政権において経済安全保障担当大臣に就任したのは、他ならぬ安倍さんの薫陶を受けて政治家として大成した高市早苗さんその人であって、河野太郎さんがその職掌(しょくしょう)で消費者問題として統一教会事案の解決に着手している現状とは両輪であるべきだとも思います。
安倍さんが命を賭けて戦後を終わらせてくれたのだと思えるような、抜本的な対策を思い切って打ってくれるよう心から願っております。
これらの本来の枠組みづくりこそ、経済安全保障の1丁目1番地であり、単に産業のサプライチェーンだけでなく、技術、人員、資産の流出に対して外為法以外のアプローチでも監視や統制ができる仕組みを構築して初めて「日本政治が統一教会問題から足抜けできた」と言える状況になるのではないでしょうか。
折しも、内閣改造された岸田文雄政権において経済安全保障担当大臣に就任したのは、他ならぬ安倍さんの薫陶を受けて政治家として大成した高市早苗さんその人であって、河野太郎さんがその職掌(しょくしょう)で消費者問題として統一教会事案の解決に着手している現状とは両輪であるべきだとも思います。
安倍さんが命を賭けて戦後を終わらせてくれたのだと思えるような、抜本的な対策を思い切って打ってくれるよう心から願っております。
山本 一郎(やまもと いちろう)
1973年、東京都生まれ。個人投資家、作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。一般財団法人情報法制研究所上席研究員。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も行なっている。
1973年、東京都生まれ。個人投資家、作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。一般財団法人情報法制研究所上席研究員。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も行なっている。