矛盾する政策の同時進行はあり得ない
とあるAいう事象とBという事象があり、お互いに矛盾し両立しない、という関係にあるとする。この時同一の時間軸ではAを先にやるか、Bを先にやるかを決定する必要がある。これを優先順位と言う。
国家経営者が度々直面するのがこの優先順位だ。
国家経営者は、政策Aを先にやるか、政策Bを先にやるかの決定をしなくてはならない。Aを先にやり次にBをやるか、Bを先にやり次にA をやるか。どちらが時間がかからずに人命の喪失とコストが少なく済むか。この判断は事案がパンデミック対策や原子力事故の時は、科学を参考にする。
一番愚かな政策決定は、AとBが両立すると誤って判断し、両方を同時に行おうとすることである。
この場合には結局AもBも実現せず、人命の喪失、国家財政、ひいては国家そのものを危機に陥れるということになる。指導者がAとBが両立すると愚かにも判断した場合には、悲劇的な結末を招くことになってしまうのだ。
史実にその例を求めると、第二次世界大戦前に日本軍が南方進出と米国との戦争回避が両立すると政策判断したことが挙げられる。この判断は最悪の結果、つまり東京大空襲、広島/長崎という結果を招いてしまった。
今回のコロナ禍に対する対応もまたしかりである。飲食観光業の救済(B)と感染の抑止(A)は両方同時に進めることが出来ると政策当局者が考えることは、南方進出と米国との戦争回避の両立は可能であると誤判することに等しい。
コロナ・パンデミック下の指導者に残された選択は、Aが先か、Bが先かという優先順位の決定のみである。AとB 同時の選択はいずれも達成できないどころか、より悲惨な結果を招く恐れがあるためだ。
国家経営者が度々直面するのがこの優先順位だ。
国家経営者は、政策Aを先にやるか、政策Bを先にやるかの決定をしなくてはならない。Aを先にやり次にBをやるか、Bを先にやり次にA をやるか。どちらが時間がかからずに人命の喪失とコストが少なく済むか。この判断は事案がパンデミック対策や原子力事故の時は、科学を参考にする。
一番愚かな政策決定は、AとBが両立すると誤って判断し、両方を同時に行おうとすることである。
この場合には結局AもBも実現せず、人命の喪失、国家財政、ひいては国家そのものを危機に陥れるということになる。指導者がAとBが両立すると愚かにも判断した場合には、悲劇的な結末を招くことになってしまうのだ。
史実にその例を求めると、第二次世界大戦前に日本軍が南方進出と米国との戦争回避が両立すると政策判断したことが挙げられる。この判断は最悪の結果、つまり東京大空襲、広島/長崎という結果を招いてしまった。
今回のコロナ禍に対する対応もまたしかりである。飲食観光業の救済(B)と感染の抑止(A)は両方同時に進めることが出来ると政策当局者が考えることは、南方進出と米国との戦争回避の両立は可能であると誤判することに等しい。
コロナ・パンデミック下の指導者に残された選択は、Aが先か、Bが先かという優先順位の決定のみである。AとB 同時の選択はいずれも達成できないどころか、より悲惨な結果を招く恐れがあるためだ。
パンデミック対策と経済対策の優先順位は
さて、パンデミック対策(A)の後に経済対策(B)をするのか、それとも経済対策(B)の後にパンデミック対策(A)をするのかという順番の判断は、相手がウイルスだから科学にのみ基づいてなされなくてはならない。
指導者が適切な判断を行うため、必然的に指導者に意見する科学者の意見も、科学のみに基づいた意見表明をしなくてはならない。この時、科学者は純粋に科学的な意見を述べなくてはならず、また指導者は複数以上の科学者から意見を求める時には、最も理論的、論理的な科学的分析を行う科学者の意見を採用しなければならない。
すなわち、今回のコロナ・パンデミックの場合には、政治指導者は科学者の意見に基づき、人命の喪失を最少にすることを第一義にしつつ、長期的な国家財政の見通しから、Aを先にするかBを先にするかの優先順位を決める必要があるであろう。
指導者が適切な判断を行うため、必然的に指導者に意見する科学者の意見も、科学のみに基づいた意見表明をしなくてはならない。この時、科学者は純粋に科学的な意見を述べなくてはならず、また指導者は複数以上の科学者から意見を求める時には、最も理論的、論理的な科学的分析を行う科学者の意見を採用しなければならない。
すなわち、今回のコロナ・パンデミックの場合には、政治指導者は科学者の意見に基づき、人命の喪失を最少にすることを第一義にしつつ、長期的な国家財政の見通しから、Aを先にするかBを先にするかの優先順位を決める必要があるであろう。
現状の日本の財政状況(下記図参照)をみるに、毎年確実に国債費・社会保障費が増大していき、それに伴い予算規模も増大していく。そして、その増大は全て国債でまかなわれている。
もう一つ明らかなことは、この表から見てとれる通り、予算規模が1990年の予算規模と比べ2020年にはほぼ倍になっているのに、予算から国債費と社会保障費を引いた残りの防衛及び政策に使える予算規模は、全く増えていないという現状である。全体規模が倍になっているのあれば、本来なら政策に使用できる予算も倍になっていないとおかしいであろう。
つまり、国債をどんどんと発行し続け予算規模が大きくなっているにも拘わらず、国作り、新規産業作り、新エネルギー政策、そして何よりも重要な防衛及びパンデミック対策に回す予算が増えていないどころか、むしろじわじわと減っているというのが現実なのである。
このような国の状況を鑑みるに、筆者は今回のコロナ禍での優先順位はパンデミック対策(A)の後に経済対策(B)を行うことが人命の喪失はより少なくなり、長期的な経済観点からも適切と考える。なぜなら、コロナ対策には約30兆円のコストがかかると考えたときに、筆者の資産によれば2021年度は国債発行残高は 1,000 兆円、国債費は30兆円、社会保障費は40兆円となるが、もしパンデミック対策(A)と経済対策(B)を同時にやるという判断をした場合には、コロナ対策費と飲食観光業の復興費用だけで、先の優先順位を決めた場合の約3~6倍の国家予算を使う必要が出てくるためである。
そのような「美味しいところの両取り」を行えば、理論上は2022年以降に消費税を現行の10%からいきなり25%にし、医療費の個人負担割合を3倍増にする必要が生じてくる。
また、優先順位を、経済対策(B)を先にし、その後にパンデミック対策(A)をやった場合にも、全体として国家予算はその逆の優先順位(A→B)の2倍に膨れ上がることが予想され、結果として2022年以降の消費増税は10%から18%、医療費の個人負担割合2倍増を目指すものになることは間違いない。
よって、A→B が人命の喪失を最少にし、国家財政の悪化(≒消費増税)もそれなりの規模に抑えられることになる。
このような災害の場合に、「すべてが上手くいく」政策は、歴史的に見ても困難と言える。政府には批判を恐れずに、何よりも根拠を明確にした政策の優先順位付けと取捨選択を求めたい。
つまり、国債をどんどんと発行し続け予算規模が大きくなっているにも拘わらず、国作り、新規産業作り、新エネルギー政策、そして何よりも重要な防衛及びパンデミック対策に回す予算が増えていないどころか、むしろじわじわと減っているというのが現実なのである。
このような国の状況を鑑みるに、筆者は今回のコロナ禍での優先順位はパンデミック対策(A)の後に経済対策(B)を行うことが人命の喪失はより少なくなり、長期的な経済観点からも適切と考える。なぜなら、コロナ対策には約30兆円のコストがかかると考えたときに、筆者の資産によれば2021年度は国債発行残高は 1,000 兆円、国債費は30兆円、社会保障費は40兆円となるが、もしパンデミック対策(A)と経済対策(B)を同時にやるという判断をした場合には、コロナ対策費と飲食観光業の復興費用だけで、先の優先順位を決めた場合の約3~6倍の国家予算を使う必要が出てくるためである。
そのような「美味しいところの両取り」を行えば、理論上は2022年以降に消費税を現行の10%からいきなり25%にし、医療費の個人負担割合を3倍増にする必要が生じてくる。
また、優先順位を、経済対策(B)を先にし、その後にパンデミック対策(A)をやった場合にも、全体として国家予算はその逆の優先順位(A→B)の2倍に膨れ上がることが予想され、結果として2022年以降の消費増税は10%から18%、医療費の個人負担割合2倍増を目指すものになることは間違いない。
よって、A→B が人命の喪失を最少にし、国家財政の悪化(≒消費増税)もそれなりの規模に抑えられることになる。
このような災害の場合に、「すべてが上手くいく」政策は、歴史的に見ても困難と言える。政府には批判を恐れずに、何よりも根拠を明確にした政策の優先順位付けと取捨選択を求めたい。
石角 完爾(いしずみ かんじ)
1947年、京都府出身。通商産業省(現・経済産業省)を経て、ハーバード・ロースクール、ペンシルベニア大学ロースクールを卒業。米国証券取引委員会 General Counsel's Office Trainee、ニューヨークの法律事務所シャーマン・アンド・スターリングを経て、1981年に千代田国際経営法律事務所を開設。現在はイギリスおよびアメリカを中心に教育コンサルタントとして、世界中のボーディングスクールの調査・研究を行っている。著書に『ファイナル・クラッシュ 世界経済は大破局に向かっている!』(朝日新聞出版)、『ファイナル・カウントダウン 円安で日本経済はクラッシュする』(角川書店)等著書多数。
1947年、京都府出身。通商産業省(現・経済産業省)を経て、ハーバード・ロースクール、ペンシルベニア大学ロースクールを卒業。米国証券取引委員会 General Counsel's Office Trainee、ニューヨークの法律事務所シャーマン・アンド・スターリングを経て、1981年に千代田国際経営法律事務所を開設。現在はイギリスおよびアメリカを中心に教育コンサルタントとして、世界中のボーディングスクールの調査・研究を行っている。著書に『ファイナル・クラッシュ 世界経済は大破局に向かっている!』(朝日新聞出版)、『ファイナル・カウントダウン 円安で日本経済はクラッシュする』(角川書店)等著書多数。