【橋本琴絵】朝日の虚報――ヘイト虚報が招く人権剥奪の恐怖

【橋本琴絵】朝日の虚報――ヘイト虚報が招く人権剥奪の恐怖

【橋本琴絵】親中派の皆サン、中国は敵ですよ?【WiLL増刊号#241】
 令和2年度、朝日新聞は創業以来の大赤字であったと発表した。また、元朝日新聞記者が櫻井よしこさんらを被告として名誉毀損を提訴した民事訴訟につき、最高裁は元朝日新聞記者の訴えを棄却する判断を下した。2015年には、朝日新聞が30年近く報道し続けてきた「従軍慰安婦」なる報道は、虚報であったことを朝日新聞自ら発表し、経営陣が謝罪会見をしたことも記憶に新しい。

 こうした問題の本質は、単に「正確な報道をしているか否か」といった次元にとどまるものではない。特定の民族(ここでは日本民族を被害者として)を侮蔑(ぶべつ)する報道が何を引き起こすのか、といった歴史的問題に私たちはあまり関心を払っていないことに問題がある。

 1980年代までは「防共の防波堤」として日韓関係は良好であったにもかかわらず、従軍慰安婦をテーマにした報道が開始されると、たちまち韓国では反日運動の機運が高まり、現在の両国の関係は戦後最悪の状態となった。「民族」を単位とした憎悪が生じたことは、何を意味するのか。歴史を振り返ってみよう。

 1920年代、ドイツの大手新聞社『シュテュルマー』 (Der Stürmer)は、反ユダヤ主義の記事を発信し続けた。ユダヤ人が世界征服を企んでいるとする陰謀論「シオン・プロトコール」をさも現実であるかのように長期間にわたって報道し続けた。そして、次第にシュテュルマーの新聞記事は、ドイツの小学校の授業で教材として扱われるようになった。そう、どこかの日本の新聞記事が日本の小学校で教材として使われているように。

 この一連の報道に対して、ドイツ国内のユダヤ人は楽観視していた。なぜならば、平和憲法であるワイマール憲法は国民の基本的人権を保障しているからだ。19世紀のような昔ならともかく、「平和憲法がある現代において恐ろしいことは起きるはずがない」と考え、誰一人として、その後、ユダヤ人専用の絶滅収容所が各地に建設されることは予期していなかったのである。

「特定の民族や国民を単位としたアンチテーゼ」を報道機関が長期間にわたって報道することを放置することは、極めて恐ろしい状態を喚起するといった歴史的教訓に対して、私たち日本人はあまりにも鈍感である。

 同じく1920年代、アメリカでは「黄禍論」がムーブメントとなり、日本人移民の子どもが公立小学校に通学することが拒否されるようになった。この流れで1924年には、いわゆる排日移民法の「ジョンソン=リード法」(Johnson–Reed Act)が制定される。白人以外の有色人種すべての移民を制限する法律だが、特に日本人の移民は「全面禁止」となり、当時の日本政府に衝撃を与えた。1908年に林董外務大臣とオブライエン駐日大使との間で締結されていた日米紳士協約に違反するものであったからだ。

 そして、この反日機運は日米開戦によって最悪の形を迎える。日本にルーツを持つアメリカ国民の全財産没収と強制収容の執行である。アメリカ政府は、日独伊と交戦状態になると、ドイツ・イタリアにルーツを持つアメリカ国民に対しては人権の制限をしなかったが、日本にルーツを持つアメリカ国民に対しては、その人権を剥奪した。

 これに対して、フレッド・コレマツら日系アメリカ人が「日系アメリカ人の人権はく奪は合衆国修正憲法に違反する」と訴え出たが、連邦最高裁は「日本人の血を継ぐアメリカ国民の基本的人権を制限して強制収容することは合憲」(Fred Korematsu vs. United States 323 U.S. 214)との判断を下した。この判例は現在も法的に有効であり、覆されていない。

 歴史を俯瞰すると、大規模な人権侵害の前には「ヘイト報道」が先行する。その報道は事実に基づくものではなく、読み手が特定の民族や国民に対する憎悪を抱くように意図されている。そして、こうした行為を我が国は犯罪として定義していない。

 虚報は単に虚報だけでは済まないことを多くの人々に知ってほしいと強く願う。
橋本 琴絵(はしもと ことえ)
昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。広島県呉市竹原市豊田郡(江田島市東広島市三原市尾道市の一部)衆議院議員選出第五区より立候補。日本会議会員。

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この記事へのコメント

道産子ちびこ 2020/12/5 20:12

はじめて知りました。ユダヤ人排除には、まず虚偽報道、そして教科書。ぞっとしました。イスラエルに行き聖地巡礼をしたことがありすが、ユダヤ人の悲しみは本当に深い。
チベットの人のも、ユダヤ人のように離散するのだろうかと心配されていますね。
日本人の歴史教科書は早くに修正しなくてはいけないと感じます。もう遅いぐらい。
教科書問題を、また取り上げてください。
教科書を書き上げる先生もいなくなって。西部邁さん、西尾さんもご高齢。
北海道の実家 地元では教育勅語を読んでいます。

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