東大出身に多いPCR検査推進派
テレビをつけると、毎日のように「PCR検査を拡大せよ」と主張する専門家が出てきて、コメンテーターが政府批判を繰り返す。視聴者には「なぜ政府は検査を拡大しないのか」と怒りを覚えている人も多いだろう。
専門家の発言を整理しているときに、私は奇妙なことに気づいた。それはPCR拡大派に東大医学科出身者が多いことだった。仮に東大G(Gはグループのこと)と名付ける。具体名を挙げると児玉龍彦氏、上昌宏氏、小林慶一郎氏、渋谷健司氏などである。
これらの人たちの共通点として、臨床医であること、感染症の専門家や国立感染症研究所(以下、「感染研」)に批判的なことが挙げられる。言い換えると、臨床医の多い東大Gが、現在、政府の新型コロナウイルス政策を支えている感染研など疫学畑の専門家の方針を批判しているわけだ。仮に、東大Gに批判されている側を、非東大Gと名づける。すると、おおざっぱには次のようにまとめられる。
(1)東大G=臨床医中心=PCR検査推進派が多い
(2)非東大G=疫学者中心=PCR検査抑制派が多い
言うまでもないが、これは便宜的な分類だ。東大医学科出身者がすべて東大Gに入るわけでないし、非東大Gには東大医学科出身者がいないということではない。たとえば、いまテレビで引っ張りだこの岡田晴恵氏は東大出身ではないが、立場としては東大Gに属する。この分類はあくまでわかりやすさを優先しているだけで、「そういう傾向がある」と考えるにとどめていただきたい。
専門家の発言を整理しているときに、私は奇妙なことに気づいた。それはPCR拡大派に東大医学科出身者が多いことだった。仮に東大G(Gはグループのこと)と名付ける。具体名を挙げると児玉龍彦氏、上昌宏氏、小林慶一郎氏、渋谷健司氏などである。
これらの人たちの共通点として、臨床医であること、感染症の専門家や国立感染症研究所(以下、「感染研」)に批判的なことが挙げられる。言い換えると、臨床医の多い東大Gが、現在、政府の新型コロナウイルス政策を支えている感染研など疫学畑の専門家の方針を批判しているわけだ。仮に、東大Gに批判されている側を、非東大Gと名づける。すると、おおざっぱには次のようにまとめられる。
(1)東大G=臨床医中心=PCR検査推進派が多い
(2)非東大G=疫学者中心=PCR検査抑制派が多い
言うまでもないが、これは便宜的な分類だ。東大医学科出身者がすべて東大Gに入るわけでないし、非東大Gには東大医学科出身者がいないということではない。たとえば、いまテレビで引っ張りだこの岡田晴恵氏は東大出身ではないが、立場としては東大Gに属する。この分類はあくまでわかりやすさを優先しているだけで、「そういう傾向がある」と考えるにとどめていただきたい。
なぜPCR検査を抑えたのか
現在、政府の方針では、無症状者のPCR検査は、クラスターが疑われている場合にとどめられている。それは、押谷仁氏(東北大学)が2020年7月31日のニューズウィーク日本版で語っているように、PCR検査の精度はまだまだ改善の余地があり、一気に増やすと検査の質が低下するからにほかならない。
検査の質が下がれば陽性でないのに陽性と判断される「偽陽性」が増える。偽陽性者は感染していないのに生活が不便になるだけでなく、場所によっては言われのない差別すら受けかねない。同時に、医療機関の負担も増え、医療崩壊につながる可能性もある。
したがって、非東大Gは「PCR検査を一気に増やしても効果は限定的で、マイナス面もある」と考えている。誰でも検査できるようにすると、検査場に人が集まり、いたずらに非感染者の感染リスクも高めることになりかねない。
この非東大Gの考え方が、政府の基本的方針になっていると考えていいだろう。それに対して、東大Gの上昌広氏は、感染研・医系技官・医科研・慈恵医大のカルテットが「感染症ムラ」の利権を守るためにPCR検査の独自開発にこだわり、検査開放を邪魔していると発言している。
また、同じく東大Gの児玉龍彦氏は、日本の疫学自体を批判して、遺伝子を使った感染疫学の大量検査が主流であるのに、昭和の懐メロのような防疫に固執していると批判している。岡田晴恵氏はテレビで感染研がテリトリー争いをしていると批判した(のちに謝罪)。
検査の質が下がれば陽性でないのに陽性と判断される「偽陽性」が増える。偽陽性者は感染していないのに生活が不便になるだけでなく、場所によっては言われのない差別すら受けかねない。同時に、医療機関の負担も増え、医療崩壊につながる可能性もある。
したがって、非東大Gは「PCR検査を一気に増やしても効果は限定的で、マイナス面もある」と考えている。誰でも検査できるようにすると、検査場に人が集まり、いたずらに非感染者の感染リスクも高めることになりかねない。
この非東大Gの考え方が、政府の基本的方針になっていると考えていいだろう。それに対して、東大Gの上昌広氏は、感染研・医系技官・医科研・慈恵医大のカルテットが「感染症ムラ」の利権を守るためにPCR検査の独自開発にこだわり、検査開放を邪魔していると発言している。
また、同じく東大Gの児玉龍彦氏は、日本の疫学自体を批判して、遺伝子を使った感染疫学の大量検査が主流であるのに、昭和の懐メロのような防疫に固執していると批判している。岡田晴恵氏はテレビで感染研がテリトリー争いをしていると批判した(のちに謝罪)。
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中国企業と村上財団
東大Gの児玉龍彦氏は東大先端科学技術研究センター名誉教授であるが、2011年から2017年まで東大アイソトープ総合センター(以下、東大アイソトープ)長として福島原発事故政策に関わり、除染の必要性を説いたことでも知られている。同センターで児玉氏が中心となって日本企JSR社の関連会社であるJSRライフサイエンス社とともに開発を進めたのが「化学発光ビーズ」(以下、「ビーズ」)である。
そのビーズを使った測定器を、中国深圳にあるにYHLO(亜輝龍生科技)社が開発していたが、新型コロナウイルスが武漢で拡大したのを機に、武漢で測定器開発が急速に進み、新型コロナウイルスに関しては、この中国企業YHLO社の測定器が世界標準になっているそうだ。
東大アイソトープのサイトによれば、YHLO社測定器の導入は「新型コロナウィルス抗体検査機利用者協議会幹事会」(以下、幹事会)なる組織で進められている。幹事会は東大アイソトープの川村猛准教授を代表に、東大先端科学センター、東大病院、慶応病院、阪大病院などのそうそうたるメンバーで構成されている。児玉氏の名前はアドバイザー会議代表として掲載されている。また、幹事会にはJARの抗体検査会社MBLと韓国の抗体検査会社ヤマト科学が名を連ねて、オブザーバー参加している。
YHLO社は東大、慶応大、大阪大など各病院に医療用マスク10万枚と防護服250着を寄付しているので、かなり近い関係にあると考えられる。
また、児玉氏はYouTubeチャンネル「デモクラシータイムス」(2020年4月13日、金子勝氏との対談)で、武漢やヨーロッパで標準的に使われている検査機器は、JARライフサイエンス社のビーズを中国のメーカーが機械化したものであり、「日本発の技術だ」と述べている。だが、日本発はビーズだけであり、検査機自体は中国が開発したものである。それなのに、「日本の技術が世界中で使われているのに、肝心の日本では使われていない」と、日本発を強調している。
興味深いのは、YHLO社の測定器を東大病院などに導入する際に資金援助した組織だ。2つあるが、その1つが村上財団であることだ(もう1つは、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン)。
村上財団は、村上ファンドを率いて時代の寵児になったあの村上世彰氏が設立した財団である。2006年にインサイダー取引容疑で起訴されて以降は数年前までは表舞台からは消えていた。ここ数年、また活動を活発化させているが、以前ほどの華々しさはなくなっているようだ。
そのビーズを使った測定器を、中国深圳にあるにYHLO(亜輝龍生科技)社が開発していたが、新型コロナウイルスが武漢で拡大したのを機に、武漢で測定器開発が急速に進み、新型コロナウイルスに関しては、この中国企業YHLO社の測定器が世界標準になっているそうだ。
東大アイソトープのサイトによれば、YHLO社測定器の導入は「新型コロナウィルス抗体検査機利用者協議会幹事会」(以下、幹事会)なる組織で進められている。幹事会は東大アイソトープの川村猛准教授を代表に、東大先端科学センター、東大病院、慶応病院、阪大病院などのそうそうたるメンバーで構成されている。児玉氏の名前はアドバイザー会議代表として掲載されている。また、幹事会にはJARの抗体検査会社MBLと韓国の抗体検査会社ヤマト科学が名を連ねて、オブザーバー参加している。
YHLO社は東大、慶応大、大阪大など各病院に医療用マスク10万枚と防護服250着を寄付しているので、かなり近い関係にあると考えられる。
また、児玉氏はYouTubeチャンネル「デモクラシータイムス」(2020年4月13日、金子勝氏との対談)で、武漢やヨーロッパで標準的に使われている検査機器は、JARライフサイエンス社のビーズを中国のメーカーが機械化したものであり、「日本発の技術だ」と述べている。だが、日本発はビーズだけであり、検査機自体は中国が開発したものである。それなのに、「日本の技術が世界中で使われているのに、肝心の日本では使われていない」と、日本発を強調している。
興味深いのは、YHLO社の測定器を東大病院などに導入する際に資金援助した組織だ。2つあるが、その1つが村上財団であることだ(もう1つは、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン)。
村上財団は、村上ファンドを率いて時代の寵児になったあの村上世彰氏が設立した財団である。2006年にインサイダー取引容疑で起訴されて以降は数年前までは表舞台からは消えていた。ここ数年、また活動を活発化させているが、以前ほどの華々しさはなくなっているようだ。
テカンジャパンと世田谷モデル
児玉氏は2020年7月16日の参議院予算委員会で、新宿などの感染エピセンター(=震源地)の制圧には、地元医師会ではなく東大や企業に検査を任せるべきだと述べ、テカン(=テカンジャパン)という会社に言及している。
テカンジャパンは液体処理の自動化を専門とするテカン社(スイス)の日本法人である。2020年2月に東大先端研に研究室テカンラボをオープンさせた関係で、言及したものと考えられる。気になるのは、児玉氏が予算委員会にテカンジャパン作成資料をそのまま提出していることだ。テカンジャパンが技術やコスト面で圧倒的優位にあり、児玉氏がテカンジャパンとの直接的な利害関係がなければ許容していいのかもしれないが、それにしても1社の説明を国会の予算委員会に出す行為は、宣伝活動にもとられかねない。
児玉氏についてはもう1つ気になることがある。PCR検査をいつでも受けられるしくみを世田谷区で作ろうとしていることだ。世田谷区長の保坂展人氏と組んで、「世田谷モデル」と名付けて、1日300件程度のPCR検査を、数千件まで拡大する計画を立てている。なお、保坂区長は、前職は社民党に所属する衆議院議員で左派色が強い首長として知られている。
世田谷モデルの導入に危機感を持つ区議が、かかった費用の全額が区の負担であることや、村上財団が支援することに懸念を示している。保坂区長は世田谷モデルの導入を区議会に諮っておらず、学校も対象なのに教育委員会にも知らせていなかったという。
PCR検査は検査会社への費用負担が大きく、自費でおこなうと現在は1件4万円程度かかるそうだ。検査数を増やせばコストは下がるのかもしれないが、それにしても現状の重症者数や死者数の推移で、区民にそれほどの負担を掛けてるのは妥当と言えるか。コストをきちんと考えてのことなのか。区民が健康に過ごせるための政策は、PCR検査だけではないはずだ。
テカンジャパンは液体処理の自動化を専門とするテカン社(スイス)の日本法人である。2020年2月に東大先端研に研究室テカンラボをオープンさせた関係で、言及したものと考えられる。気になるのは、児玉氏が予算委員会にテカンジャパン作成資料をそのまま提出していることだ。テカンジャパンが技術やコスト面で圧倒的優位にあり、児玉氏がテカンジャパンとの直接的な利害関係がなければ許容していいのかもしれないが、それにしても1社の説明を国会の予算委員会に出す行為は、宣伝活動にもとられかねない。
児玉氏についてはもう1つ気になることがある。PCR検査をいつでも受けられるしくみを世田谷区で作ろうとしていることだ。世田谷区長の保坂展人氏と組んで、「世田谷モデル」と名付けて、1日300件程度のPCR検査を、数千件まで拡大する計画を立てている。なお、保坂区長は、前職は社民党に所属する衆議院議員で左派色が強い首長として知られている。
世田谷モデルの導入に危機感を持つ区議が、かかった費用の全額が区の負担であることや、村上財団が支援することに懸念を示している。保坂区長は世田谷モデルの導入を区議会に諮っておらず、学校も対象なのに教育委員会にも知らせていなかったという。
PCR検査は検査会社への費用負担が大きく、自費でおこなうと現在は1件4万円程度かかるそうだ。検査数を増やせばコストは下がるのかもしれないが、それにしても現状の重症者数や死者数の推移で、区民にそれほどの負担を掛けてるのは妥当と言えるか。コストをきちんと考えてのことなのか。区民が健康に過ごせるための政策は、PCR検査だけではないはずだ。
本記事関連の動画『PCR検査の闇』はこちら!【WiLL増刊号】
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抑制派のほうに分がある
PCR拡大派は「安倍政権はPCR検査をわざと抑制して、感染数を小さく見せている」と批判してきた。だが、日本の新型コロナウイルスの犠牲者は欧米などと比べるとかなり低く、検疫には成功している国だ。たしかに「感染者」は数字上増えているが、重症者や死者は4月から比べるとかなり減っている。実態は、検査拡大によって「陽性者」が増えていると言うべきだろう。だが、マスコミではPCR検査拡大派を露出させて、「検査が足りない」と大合唱しつづけて政権批判にこじつけている。
新型コロナウイルスが当初猛威を振るったのは間違いないが、個々人の努力もあり、抑え込みに成功している。死者を見ても、ワクチンがあるインフルエンザのほうがはるかに多いほどだ。それに、遺伝子情報は「究極の個人情報」とも言っていいものであり、中国企業を関わらせることは絶対に避けるべきだろう。というのも、中国がウイグル人への監視の一環として遺伝子情報を集めており、中国共産党が監視システムに遺伝子情報を組み込もうとしているのは明白だからである。
児玉氏は2020年4月14の日経ビジネス・オンラインで、新型コロナウイルス対策としてGPS管理の必要性を説き、3億人のGPS情報を管理する中国平安保険が、年間8000億円かけて医療への応用していることを評価している。GPS追跡では匿名化すべきという話は付加されているものの、ここでなぜ社会主義国家の保険会社が出てくるのか。
また、児玉氏は中国政府の新型コロナウイルス対策について、「雑誌の情報に従えば」と限定した上で、初期対応の早さを評価している。しかも、最大の問題点である情報開示の遅れについても、問題点はあるが、それは中国政府だけではないと擁護しているのである。
PCR検査拡大の裏に、何か得体の知れないものが隠れていないか不安になる。
新型コロナウイルスが当初猛威を振るったのは間違いないが、個々人の努力もあり、抑え込みに成功している。死者を見ても、ワクチンがあるインフルエンザのほうがはるかに多いほどだ。それに、遺伝子情報は「究極の個人情報」とも言っていいものであり、中国企業を関わらせることは絶対に避けるべきだろう。というのも、中国がウイグル人への監視の一環として遺伝子情報を集めており、中国共産党が監視システムに遺伝子情報を組み込もうとしているのは明白だからである。
児玉氏は2020年4月14の日経ビジネス・オンラインで、新型コロナウイルス対策としてGPS管理の必要性を説き、3億人のGPS情報を管理する中国平安保険が、年間8000億円かけて医療への応用していることを評価している。GPS追跡では匿名化すべきという話は付加されているものの、ここでなぜ社会主義国家の保険会社が出てくるのか。
また、児玉氏は中国政府の新型コロナウイルス対策について、「雑誌の情報に従えば」と限定した上で、初期対応の早さを評価している。しかも、最大の問題点である情報開示の遅れについても、問題点はあるが、それは中国政府だけではないと擁護しているのである。
PCR検査拡大の裏に、何か得体の知れないものが隠れていないか不安になる。
白川 司(しらかわ・つかさ)
国際政治評論家・翻訳家。幅広いフィールドで活躍し、海外メディアや論文などの情報を駆使した国際情勢の分析に定評がある。月刊『WiLL』にて「Non-Fake News」を連載するとともに、インターネットテレビ『WiLL増刊号』でレギュラーコメンテーターを務める。
また、foomii配信のメルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評を博している。
著書に『議論の掟 議論が苦手な日本人のために』(ワック)、訳書に『クリエイティブ・シンキング入門』。
国際政治評論家・翻訳家。幅広いフィールドで活躍し、海外メディアや論文などの情報を駆使した国際情勢の分析に定評がある。月刊『WiLL』にて「Non-Fake News」を連載するとともに、インターネットテレビ『WiLL増刊号』でレギュラーコメンテーターを務める。
また、foomii配信のメルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評を博している。
著書に『議論の掟 議論が苦手な日本人のために』(ワック)、訳書に『クリエイティブ・シンキング入門』。