【橋本琴絵】災害時の「デマ」に注意――関東大震災「朝鮮...

【橋本琴絵】災害時の「デマ」に注意――関東大震災「朝鮮人大量虐殺」のウソ

関東大震災で破壊された東京

「朝鮮人殺害の故意」はナシ

 今年は東日本大震災から10年の節目である。そこで、本論は大地震発生時に乗じた「人災」である犯罪と流言飛語について考察し、1923年9月1日に発生した関東大震災の後に大量の朝鮮人が虐殺されたとする陰謀論について論考を進めたく思う。

 本論が朝鮮人虐殺を陰謀論の範疇に含める学術的理由は、深刻な大量殺人事件と主張されているにもかかわらず、その被害を訴える声にはいずれも殺人罪の確定判決が伴わないからである。出てくるのは、いずれも「目撃証言」と「新聞報道」である。だが、たとえば世の中にはUFOについて大数の目撃証言と新聞報道(東スポなど)があふれ、政府はUFOが出現した際の対処法についての「政府発表」もある。しかし、だから宇宙人はすでに地球にいると論じる姿勢に説得力はない。

 関東大震災当時も現在も、殺人罪を処罰する法律は同じ刑法(明治40年法律第45号)である。現代の裁判でも明治時代の判例や裁判例が使われる中、大正時代に起きたできごとに対して「裁判はないが殺人はあった、と裁判官ではない人々が事実認定している」とする主張がいくら集められても、陰謀論としての評価を免れることはできない。

 しかし若干ではあるが、関東大震災後に「朝鮮人殺害」を事実認定した下級審の裁判例はある。そこで、当該事件の被告人は本当に「朝鮮人殺害の故意」をもって犯行に及んだのか精査してみると、そうした裁判記録は存在せず、「殺害した相手方が結果として朝鮮人だった」という事実を記録しているに過ぎない事実がわかる。

 たとえば、片柳事件 (浦和地方裁判所判決1923年11月26日)の裁判記録をみると、被告人の動機形成の過程を次の一文が記録している。

 「不逞鮮人の来襲なりと聞き伝え其場に駆付けた」

 つまり、急迫不正の侵害に対して違法性阻却事由の認識をもって有形力の行使に及んだ被告人の動機形成の過程が記録されているのだ。そこに事実として「襲撃」がなかったとしても、被告人の認識において「襲撃がある」という認識が内在していれば、誤想防衛という。そして、危険を回避するに相当な程度を越してしまった場合は「過剰防衛」という。この2つをあわせれば誤想過剰防衛という。罪の重さも刑法第36条第2項によって減刑される。

「襲撃から身を護りたい」とする善の誤想

 ここで誤想過剰防衛とは何かを理解するにあたり、いわゆる「勘違い騎士道事件」(最決昭和62年3月26日)を引用してみたい。

 在日イギリス人の空手家が夜10時ごろ歩いていると、酩酊した男女がいた。男女がふざけあって女が地面に尻もちをつき、在日イギリス人を見ると「ヘルプミー」と言った。在日イギリス人が近づくと、男は両手こぶしを前に出して、いわゆるファイティングポーズと受け取れる姿勢を示したため、在日イギリス人は女が強姦されかけていると認識して、回し蹴りを男の顔面に当てた。男はその場に倒れ、脳内出血を起こして8日後に死亡した。

 これは、事実としては酔った男女がふざけあっていただけであり、そこに「急迫不正の侵害」は存在しない。しかし、その事情を知らない第三者からみると、女が男に襲われているとの認識をもたらす外観があった。

 結論として、在日イギリス人には懲役1年6カ月執行猶予3年の量刑となった。その理由は、次の通りである。

 「犯罪が行われていないにもかかわらず、犯罪が行われていると誤認して女性を助けようとした認識に違法性はない。しかし空手家があえて男性の顔面に回し蹴りをしなければならない必然性はなく、女性を救出する手段は他にもあった。その過剰性に犯罪の故意責任があるものの、そもそもの動機は正当防衛であるため減刑される」

 これが誤想(急迫不正の侵害が事実として存在しないが、存在すると錯誤した)であり、過剰(ほかに回避手段があるのにそれをせず、あえて攻撃力の高い選択をした)であることに違法性が認められるも、動機形成においては善であるため減刑された、というものである。

 関東大震災における朝鮮人虐殺とされる犯罪の量刑が軒並み低いのは、「朝鮮人」を殺害したいとする犯意を動機にしていたのではなく、「襲撃から身を護りたい」とする善が動機であることが認定されたからに他ならないものと推認される。事実として襲撃が無く誤想だったとしても、その認識自体に責任はないのである。なぜならば、「勘違いされるような外観」があったからだ。

 それは、初代総理大臣伊藤博文の暗殺や寺内正毅朝鮮総督暗殺計画だけでなく、金擎天や池青天をはじめとする帝国陸軍士官学校を卒業した朝鮮人がその後裏切って朝鮮独立運動に走り、士官学校で学んだ軍事的知識を日本人への攻撃に使ったように、当時は「実際に日本人殺害を目的にしたヘイトクライム」が事実として存在していたからである。
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関東大震災後、実際は多くの人々が協力して復興に尽力した

災害時こそ「デマ」に注意

 一般に、関東大震災後の朝鮮人虐殺はヘイトクライムとして表現されている。しかし、ヘイトクライムならば、終戦後の朝鮮半島で日本人妊婦と幼児が虐殺されたように、まず逃げ足が遅く反撃できない弱者から殺害されていかなければならない。なぜならば、攻撃を加える理由は人種や民族といった「属性」が動機であるからだ。

 しかし関東大震災後に殺害された朝鮮人の中に、妊婦や赤ちゃんや身体障害者の裁判記録はない。もし「朝鮮人虐殺」が陰謀論ではないならば、真っ先に弱者が殺害されていなければ合理的整合性がつかないが、実際は身体頑健で脚力や水泳能力のある「成人男性」が殺害の対象であり、かつ、なぜか被害者の成人男性たちは徒党を組んでいた。

 そうなると「朝鮮人だから殺した」のではなく、「急迫不正の侵害を恐れてこれを回避するために違法性阻却事由の認識を以て有形力を行使した結果、相手方が朝鮮人であった」と表現すべきではないだろうか。

 現代でも多くの外国人犯罪者が日本人を殺害しているが、これは「たまたま」犯罪の相手方が日本人であったというだけで、日本人殺害を動機にしたものではないとする弁護と同じ理由が当てはまる。在日外国人が日本人を殺害したときは「たまたま」といい、その逆であれば「ヘイトクライム」という動機は、悪質な人種差別思想であるとしか説明できない。

 このような差別主義の陰謀論が実しやかに流布されている現状の中、仮に今後、関東大震災規模の自然災害が首都を直撃したならばどうなるであろうか。日本人の女性や子どもといった弱者を襲いやすい情況の作出に寄与するのではないか。日本人を襲撃しても、報復や反撃の蓋然性が低いと予期され得るからである。

 これは、流言飛語全般にいえることであるが、重大事件であるのに確定判決とそれを構成する証拠として採用された陳述、また刑罰によって真実性が担保された宣誓証人などを根拠にすることなく、陰謀論というものは「新聞で」とか「見た人がいる」とか「政府が言及したことがある」といったあいまいな表現で語られる。

 「関東大震災朝鮮人虐殺」という陰謀論が語られる一方で、前述した伊藤博文初代総理大臣殺害事件のように朝鮮半島出身者によって日本人が殺害された裁判上の明らかな事実は、現代の教科書では被害者に非があるかのように記述され (伊藤は朝鮮半島の直接統治に批判的立場であった)、また終戦後の朝鮮半島で大規模に発生した日本人ジェノサイドは完全に歴史教科書から隠蔽され、証言の一部のみが「竹林はるか遠く」(ヨーコ・カワシマ・ワトキンス)残るのみである。

 大規模な災害時、人種差別的な流言飛語である「デマ」に決して騙されないようにしなければならない。デマは、私たち日本人の生命財産を侵害する目的で多く流布されるのだから。
 (5121)

橋本 琴絵(はしもと ことえ)
昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。広島県呉市竹原市豊田郡(江田島市東広島市三原市尾道市の一部)衆議院議員選出第五区より立候補。日本会議会員。

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