兵頭新児:「トランス育児」はトンデモ育児

兵頭新児:「トランス育児」はトンデモ育児

加速するトランスジェンダー運動

 動画投稿用プラットフォーム・TikTokに投稿された少女の動画がツイッターなどで拡散され、話題となっています

 内容は彼女が一度は身体改造して「男性」となりながらも、また女性へと戻ったという壮絶な半生を語るもの。

 彼女は幼い頃より性別違和を感じており、高校生になった頃、ジェンダークィア(これは以前お伝えした「ノンバイナリー」に近い、自分を男性とも女性とも決め兼ねている状態を指す言葉です)を自称するように。5年間、男性としての生活を送ったものの、それにも違和を感じ、再び女性に戻ったということです。
兵頭新児:「トランス育児」はトンデモ育児

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一度は身体改造して「男性」となりながらも、また女性へと戻った方の告白
via twitter
 その顔立ちは少女のものながら、声は青年のようで、投薬の後遺症なのではないかと思われます。

 今、彼女は血のつながった子供を持つこと、主婦となることを望んでいます。

 或いは、「Save James」の件を思い出された方もいらっしゃるかもしれません。

 詳しくは先に投稿した記事を読んでいただきたいのですが、ジェイムズと呼ばれる少年の性別について、離婚した両親が争っているという事件です。母親はこのジェイムズが3歳の頃から性別違和(肉体の性と心の性の不一致)を訴えていたとし、(場合によっては外科的な)去勢を検討しているが、親権を奪われた父親はそれを真っ向から否定している、というもの。

 ちなみに、本件についてはあまり続報も入ってこないのですが、本年8月の「CBN NEWS」において

 ≪裁判所は「ジェームズを救う」戦いで母親に一時的な監護権を与えるが、性転換は許可しなかった≫

 との記事が掲載され、少なくとも現段階では、ジェイムズが無事であることが確認できます。

 近年のトランスジェンダー運動の暴走ぶりについては今までもお伝えしてきましたが、その弊害は、幼い子供にも及びつつあるということです。

セレブも「トランス」育児

 『ELLE girl』では先月4日、「ジェンダーニュートラルな方法で子どもを育てる! 性別やステレオタイプにとらわれない子育てを目指すセレブママ&パパたち」といった記事が掲載されました。

 大女優、シャーリーズ・セロンやアンジェリーナ・ジョリーなど何十人ものきらびやかなセレブ様たちが、まだ3、4歳から10歳くらいにしか見えない「トランス」の子供と幸福そうにしている家族写真が掲載され、頭がくらくらします。

 ここ最近、ネットにおいては「親ガチャ」といった言葉(現代において幸運な人生を歩めるか否かは親が「当たり」か否かの純粋な「当て物」だとの諦観を表す言葉)が囁かれていますが、こういったセレブの方々は逆に子どもを「ガチャ」か何か、もしくはポケモンのレアカードみたいな格好いいアクセサリーとして考えてるのではないかと疑ってしまいます。

 もちろん、上の記事の幼い子供たちが「トランス」であるか否かをジャッジするだけの材料を、ぼくは持ちません。

 しかしセロンの「娘」であるジャクソンちゃん(誕生時の性別は「男」)が「私は男の子じゃない!」と訴えたのは、(奇しくもジェイムズ少年同様)3歳当時だったといいます。まだ幼い子供のそんな言葉を、果たして鵜呑みにしていいものでしょうか。
兵頭新児:「トランス育児」はトンデモ育児

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「トランス」として子供を育てているシャーリーズ・セロン
 ちょっと話は変わりますが、「と学会」をご存じでしょうか。オカルトや抱腹絶倒の奇妙な主張をしている「トンデモ本」のレビューをしている団体なのですが、同会の本を読んでいると、そうしたオカルトの一種に「母性カルト」とでも称するべきものがあることに気づきます。

 一定層の母親たちは「トンデモ育児」にハマり、指導者の

 ≪この本を手にされたお母さん達は、選ばれた地球改革の主人公を生み育てるマリア様なのです。≫(『トンデモ本の世界Q』83pからの孫引き)

 といった甘言にかどわかされ、例えばまだ4歳の息子の「(夜、寝ている時に)UFOに乗った」といった、夢を見たとしか思えない話を全部信じているといいます。

 上の件はそれと大変よく似ていないでしょうか。「母性カルト」の信者が、自らをマリア様であると勘違いしてのぼせ上がっているように、セレブ様たちは「革新的なジェンダーフリーに理解を示す、意識の高い私」という自己イメージに陶酔している――ぼくにはそのように思われます。

 いずれにせよ、仮に子供が主体的に自分の性別違和を表明したのだとしても、それを「尊重」することには慎重であるべきと言うのが、一般的な考え方ではないでしょうか。

早急なトランス「啓蒙」の危険性

 そしてそれは、冒頭の例を見てもわかるように思春期の青少年であっても――とぼくは考えます。左派の人たちは青少年の「主体性」を重んじることが大好きですし、もちろんそのようにすべき場面も多々あるとは思うのですが、まだ性の未分化な未成年の性別違和については、やはり慎重に対応することが望ましいのではないでしょうか。

 先のTikTok告白で、少女は「わたしは女の子に向いてないって気持ちが常にあった」と言い、Tumblr(これもSNSの一種)で「ジェンダーの流動性」などを学び、「オンラインのトランス男性達」の発言に共感を覚えたのだと語っています。

 そう、トランスの人たちは妙にこうした青少年たちに「啓蒙」をするのがお好きなようなのです。
兵頭新児:「トランス育児」はトンデモ育児

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子供時代や思春期に「トランスかもしれない」と考えても、性急な決めつけは危険であろう―
 例えば『先生と親のためのLGBTガイド』の著者、遠藤まめた氏は「トランスジェンダーとしての自らの体験をきっかけに10代後半からLGBT(セクシャル・マイノリティ)の子ども・若者支援にかかわ」り(同書プロフィールより)、一般社団法人にじーずの代表を務めていらっしゃるのですが、同書を開いてみると、「レズビアン中学生」や「トランスジェンダー中学生」、「ノンバイナリー女子中学生」などなど、多くの「LGBTの若者」が登場します。

 が、ぼくは正直なところ、「UFOに乗った」という4歳児の主張を根拠に「やはり宇宙人はいるのだ!」と大真面目に主張しているようなものだ、との感想を抱きました。

 だって思春期の少年少女が自らの性に揺らぎを覚えるなど、それこそ「4歳児がUFOに乗ったと言う」ことよりもさらに、ありふれたことなのではないでしょうか。

 さらに言えば、本書に挙げられる「LGBT」には少女の比率が多いように思われます(トランスジェンダーと称している場合、多くは生物学的性別は女性です)が、これは極めて不自然なのです。従来、性別違和は圧倒的に男性に多いものであったのですから(これは人間の脳が本来、「女性型」であるためという生物学的な理由によるとされます)。
 が、冒頭の動画を日本に紹介したblah氏のnote「「トランスする子供達」―LGBTと子供のジェンダー」を読むと、その謎が解けます。

 ここでは米国の少女たちの「トランスブーム」に警鐘を鳴らすジャーナリスト、アビゲイル・シュリアの著書、『Irreversible Damage』が紹介されています。

 ≪「かつて自己の体に激しい違和感を覚える性同一性障害(性別違和)を訴えるケースはおよそ2歳から4歳の間に認識があり、その違和感は時に成長につれ悪化するものの70%はいずれ消失し、またその割合は人口の0.1%程に過ぎなかった上に、ほぼ例外なく男子であった。事実、2012年以前は11歳から21歳の少女達による性同一性障害の科学論文はなかったのである。その後事態は急変し、欧米諸国では多くのティーン少女達が突然性別違和を訴えトランスジェンダーを自認し始めた」≫

 遠藤氏の著作で紹介された少女たちが(そして少年たちが)本当にLGBTであるか否かについても、ぼくはジャッジすることはできません。

 しかし氏の活動が思春期の一過性の性別違和を抱えた青少年に、自分が真性であると誤認させかねないものであることは、確かなのではないでしょうか。

性別違和は一過性の可能性が高い

 同書では「思春期の性別違和は一過性のものではないか」との質問に対し、「未来よりも今この瞬間の気持ちが大事(大意・40p)」などと答え、また読者に想定されている教師や親に対しては自分を同性愛者ではないかと悩む生徒に、「性的指向を自分の意思で変えることは困難」「今後も同性を好きになる可能性が高い」といった「事実を提供」することを(125~126p)推奨しています。

 ここには著者のとにもかくにも青少年をLGBTに引き入れたい、との情念が先行しているように思われます。いえ、努めて好意的に解釈するなら上の意見も「思春期のナイーブな心理を軽んじることなく、尊重しよう」とでもいったことになるのかも知れませんが、しかし

 ≪少し前の心理学の本には、「人は自己愛から同性愛、異性愛へと成長する」などと書いてありますが、こうした考え方も、現在では疑問視されています。≫(40p)

 といった言葉も並び、そこに「思春期の性別違和は一過性」との一般論を否定したい、との著者の思惑を感じないわけにはいかないのです。

 この「自己愛から同性愛、異性愛」というのはフロイトの学説を指しているのでしょうが、フロイトの妥当性はともかくとしても、思春期に擬似的な同性愛感情を抱く(と同時にやがては異性愛者となっていく)こと自体は、極めて普遍的なのではないでしょうか。
兵頭新児:「トランス育児」はトンデモ育児

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成長につれて、自らの志向がより明らかになってくるのを待つべきではないか―
 同書には第1章の1ページ目から「異性愛規範」というワードが登場します。これは異性愛を「自然」とする考え方のことであり、当然、遠藤氏はこれに否定的。

 かつては「父親が決めた人と結婚すること」「妻は夫に従うこと」が自然とされ、「自分で決めた人と結婚すること」「妻が夫に対等な関係で発言すること」は不自然とされていたではないか、これら規範はつまり、社会に構築されたものに過ぎなかったのだ、というのですが(15~16p)、そんなこと言ったって、それが通るなら「人を殺してはいけない」という規範だって社会が作ったのだから、守らなくてもいいリクツになるじゃないか、と思うのですが。

無理に「仲間」にしないでほしい

 以上でおわかりのように、遠藤氏の主張には極めて濃厚なフェミニズムの影響が見て取れます。LGBTがそうした考えに飛びつくのは、「自分たちのあり方は本来、普通のものであるにもかかわらず、不当にマイノリティーへと追いやられたのだ」と考えることで自分は「人と違うマイノリティー」などではないのだと思いたい、という大変に切実な感情に追い立てられているのではないかと思います。

 しかし、ぼくには「異性愛規範」が女性やLGBTを支配する目的で人為的に生み出されたのだ……という考え方にこそ、無理があるように思われます。

 「LGBTが当たり前な世の中になってほしい、いやむしろ本来そうであったのだ」といった言葉は彼らにとって大変に甘美なものなのでしょうが、それは同時に「一過性の性の揺らぎを抱えているだけの思春期の子供」を何とかして自分たちの仲間にしよう、という勇み足を生んでしまうのではないか……という気がしてなりません。
 同書の104pでは高校生の同性愛者がネットでパパ活してしまう、孤独であるが故に自分を求める大人とつきあってしまう例が紹介され、警告を発しています。ネットは小児愛者が子供に接近することが比較的容易であり、大変もっともな話だと思うのですが、しかし……いや、冒頭の動画を鑑みるに、ネットにはまた別種の危険な大人と接触してしまう可能性も潜んでいるのでは……とつい、言いたくなってきます。

 事実、同書の後半では思春期前期の子供に「二次性徴抑制ホルモン」を投与することを推奨し始めます(184p)。これは15歳未満の子供はホルモン療法を受けることができないため、その代替手段として二次性徴の発現を抑制することを目的とした療法です。

 同様の治療は、同氏が制作担当を務めるサイト「にじっこ」でも大阪医科大学准教授の康純氏の言葉として推奨されています。
 
 これはホルモン療法と違い可逆性がある、つまり投与をやめればまた第二次性徴が再開されることから害の少ない療法として考えられたものなのですが、研究が少なく、副作用にも不明の部分が多いようで、これを積極的に紹介するのは軽率に過ぎるのでは、と思わざるを得ません。
兵頭新児:「トランス育児」はトンデモ育児

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一過性の状態を「普遍的」と断ずることは、思わぬ不幸を招く可能性もある―
 ともあれ、「トランスブーム」とも呼ぶべき現象が米国では深刻な事態を引き起こし、そして日本もまたその轍を踏みつつあるのでは……といった状況にあることがおわかりいただけたかと思います。

 そして日本における「トランスブーム」、これはおそらくオタク文化を「悪用」することで引き起こされるのでは、との予感を、ぼくは持っております。

 またオタクネタか、と思われたかもしれませんが、「米国でスーパーマンの息子がバイセクシャルになった」という話題をお聞きになった方もいらっしゃるかと思います。漫画には若い世代に対して圧倒的な影響力があり、これは決して非現実的な未来予測ではないのです。

 次回はその辺りについて、解説したいと思っております。
兵頭 新児(ひょうどう しんじ)
本来はオタク系ライター。
フェミニズム、ジェンダー、非モテ問題について考えるうち、女性ジェンダーが男性にもたらす災いとして「女災」という概念を提唱、2009年に『ぼくたちの女災社会』を上梓。
ブログ『兵頭新児の女災対策的随想』を運営中。

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