ジャニーズ事務所の告発を目的とした団体

 ジャニー喜多川の少年への性的虐待の話題が、炎上を続けています。
 ぼくも前回記事を書かせていただきましたが、それ以降も元ジャニーズのカウアン・オカモト氏や『週刊文春』の告発が続き、いよいよ延焼が止まらなくなっている感があります。

 さて、そんな中、ジャニーズ事務所の告発を目的とした団体が名乗りを上げました。
 その名も「PENLIGHT ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」。ジャニオタ(に限らずドルオタ)はコンサートなどでペンライトを振って推しを応援するのですが、まさに自分たちこそがジャニーズタレントを照らす「ペンライト」になろうとの想いのこもった団体名です。

 ともあれ、まずは同会のHPを見てみましょう。「会の成り立ち・メンバー紹介」には以下のようにあります。

《カウアン・オカモトさんがジャニー喜多川氏からの性加害について告発した時、私は多大なショックを受けました。性加害自体も大変重大な事態ですが、それに加えて今まで都市伝説か何かのように思ってこのことについて考えてこなかった自分自身に対しての自責の念も感じました》

 ここからはジャニーズのファンとして、今回の件についていかに責任を負うべきかという極めて内省的な動機が窺(うかが)えます。
 つまり、同会はあくまで「ジャニオタ」が主体となって結成されたものと言えましょう。
 では、そのメンバーは一体どのような人たちなのでしょうか。
 上に続き、メンバー紹介のコーナーがあるのですが――。

《PENLIGHT発起人。仕事の傍らコンサートに通う普通のジャニオタ。
 コンサートはデートだと思ってる。
 大学受験の時も、深夜まで課題をやって心が折れそうな時も、初めて海外に行く時も、いつもジャニーズの曲を聴いていた》


 本当にジャニーズを愛していることが、文面から窺えます。
 ……えぇと、それはいいのですが……この人、一体誰なんでしょう?
 この発起人、そして続くメンバーたちのプロフィールにはただイラストのアイコンが添えられ、「ただの会社員ジャニオタ。」「お堅い編集のお仕事してます。」などとあるだけで、名前や具体的なデータは一切表記がありません。
 いえ、そうした無名の「市井の一ファン」が声を上げたことこそが重要なのでしょうが……。
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「PENLIGHT ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」のサイト画面(一部加工)

どっと疲れが出る名前ばかり……

 そう思いつつサイトを見ていくと、change.orgによるオンライン署名も行っている模様。「ジャニーズ事務所は性暴力被害者の声を無視しないで! 性加害の検証と謝罪を求めます!」と題されたページに飛んでみると、賛同人の名前が書かれています。
 ランダムに名前を挙げてみると――。

 安積遊歩、太田啓子、北原みのり、辛淑玉、仁藤夢乃……。

 すみません、どっと疲れが出ました。
 ただ、お読みいただいている方にはあまりなじみのない名前もあることでしょうから、ごく簡単にご説明しましょう。

 まず安積氏は車椅子ユーザーのフェミニストで、自らの障害についての著書を多数持つ人物。数年前、世を騒がせた伊是名夏子氏の先輩格とも呼ぶべき人物として、以前、ご紹介させていただきました(「「障害は個性」を利用する左派の欺瞞」「続:「障害は個性」を利用する左派の欺瞞」「40年以上進歩していなかった!リベラルの「自分勝手な正義」」)。

 太田氏はフェミニスト弁護士。萌えキャラやAVを激しく憎み、何かというとクレームをつけるため、オタクから嫌われている人物です。

 北原氏も著書多数のフェミニストで、ことあるごとに男性への憎悪を吐露している人物。

 辛氏はご存じの方も多いでしょうが、韓国人フェミニスト。

 仁藤氏はご説明するまでもなく、Colabo問題で今最もホットな話題を提供してくれているフェミニストです。ぼくもこの問題について、幾度か書かせていただきました(「炎上を続ける「Colabo」問題、その真相」「深まる「Colabo」の闇」)。

 実のところこの賛同人、ごく初期には北原氏の名前と、賛同団体として「フラワーデモ」だけが挙げられていたそうで(この「フラワーデモ」は氏の立ち上げた、「性暴力に抗議する」と称する団体です)、また呼びかけ人としてやはり同氏の名前があったと伝えられ(「ペーパーハウスチャンネル」)、普通に考えれば発起人は彼女、あるいは彼女に極めて近い人であるとしか思えないのです。
 そもそも太田氏はColabo弁護団の一人、辛氏は暇空茜氏のColabo動画に著作権侵害申請をした「のりこえねっと」の一人、北原氏はColaboと仁藤夢乃さんを支える会のメンバーであるなど、(ここに名を挙げなかった人物含め)メンバーの多くが仁藤氏と極めて強いつながりを持つ人物です。同会自体が、Colaboに非常に近い組織であるとしか、考えようがないのです。

 そんなわけで同会はフェミニストの組織と言って差し支えなさそうなのですが、しかし前回記事において、ぼくはジャニーズの件が長らく不問にされてきたのはフェミニストのせいであるとお伝えしました。
 そんなことから本件は少々意外でしたし、少し考えを述べさせていただきたい、というのが本稿の趣旨です。
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change.orgによるオンライン署名「ジャニーズ事務所は性暴力被害者の声を無視しないで! 性加害の検証と謝罪を求めます!」と題されたページ(一部加工)

ジャニーズファンとは思えない?

 まず気になるのは上にも書いたHPにおけるイラストのみの「メンバー紹介」です。
 普通に考えて発起人の名前などは明示すべきでしょうし、一方で賛同人の名前がまた別に挙がっていることは、いかにも不自然です。何しろHPの方には賛同人の名前は全く出てこないのですから。

 先に「市井のファンが立ち上がった」ことこそが重要だと述べましたが、あのプロフィール自体がそうしたイメージを与えるための戦略なのではないかとも思えます。
 というのも本件について、例えばオカモト氏に対しても心ない罵倒をするファンの姿が見受けられるなど、ジャニオタは必ずしも被害者とされるタレントたちに同情的ではないからです。つまりここには、「善良なジャニオタもいるぞ」と強調したいという意図があるのでは、とも思えるのです。

 もっとも、発起人ではないかと目される北原氏は韓流アイドル推しで、ジャニーズに否定的なツイートもしていて、時事系You Tuberなどの間では「ジャニーズファンとは思えない」と囁(ささや)かれてもいます(「ペーパーハウスチャンネル」「へな・ちょこおのニュースチャンネル」)。
 そのため、あのイラストのみの「メンバー紹介」は架空のものではないか、ジャニーズファンが賛同人にいないために、あのようなメンバー紹介をでっち上げたのではないか、「ジャニオタが立ち上がった」というイメージを強調したいがあまり、そのようなことになってしまっているのではないか、といった疑念も出て来るわけです。

 確かに先のサイトの「発起人」が非実在であるとしたら、あまり感心できたことではなく、彼女らも「ジャニオタ」としてではなくあくまで「フェミニスト」として声を上げるべきではなかったかとは思います。
 何しろ評判の悪いColabo関係者のことですから、人気取りなのではないか、利権を得るために横から問題にかかわろうとしているのではないか、といった疑念も囁かれています。「こおいむしのツイフェミニュース」では、PENLIGHTが第三者委員会の設置を提言しているところから、そのメンバーとして潜り込みたいのでは、といった推測が語られていました。

 また、これもYou Tuberの意見ですが、賛同者たちは辛氏は言うに及ばず従軍慰安婦たちについて書かれた著作『咲ききれなかった花』の翻訳、出版をした北原氏、韓国の元慰安婦支援団体のスポンサーとなっている仁藤氏など、韓国と強いつながりのある人が多い。これを機に日本のアイドル事務所の勢いを削ぎ、韓流アイドルを推したいのではないかといった疑問を口にする人もいます(「ゆっくりニュース雑談ちゃんねる」)(「へな・ちょこおのニュースチャンネル」)。

 ただ、これらは推測の域を出ませんし、掲げられた理念自体は肯定すべきものなのだから、同会がそれに則った活動をするのであれば、そこは冷静に評価すべきです。
 今回、YouTuberさんの意見をいろいろと参考にさせていただきました。
 もちろん、示唆に富むものが多かったのですが、Colabo憎しで「PENLIGHT」の告発自体が無意味であるかのように難じる論調もちらほら見かけ(「へな・ちょこおのニュースチャンネル」)、さすがにそれはどうなんだと言うしかありません。

 とは言え、まずそれを前提とした上で、それでも湧いてくる疑問もありますので、以下はそこを考えてみましょう。
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「ペーパーハウスチャンネル」(画像は加工)

内省なきフェミニズム

 そもそも北原氏は群馬県草津町の新井祥子元議員が町長にわいせつ被害を受けたとの告訴をした時、草津にまで出向き、「セカンドレイプの町、草津」というプラカードを掲げ、デモを行った人物です。しかし告訴が虚偽であったと明らかになりつつある(新井氏側の訴えは不起訴となり、町長側は逆に彼女を在宅起訴しました)今も、北原氏は上の行為について謝罪した気配がありません。
 正直、常識的な人間であれば、そんな人物に本件を糾弾する資格があるとは、思わないのではないでしょうか。

 しかし、さらに申し上げるならば、そもそもそうしたデタラメや理不尽を押し通し、男性を加害者に仕立て上げる行いも、「フェミニズム」という思想を前提するならば、正当なこととなってしまう。これは今まで繰り返し述べてきたことですが、一例として「女性が後から「性被害」といえば性被害である!と断ずるフェミ理論」などを読んでいただければ幸いです。
 即ち、北原氏や仁藤氏個人を責めるよりも先に、批判すべきはフェミニズムそのものなのではないか、ということなのです。

 逆に言うならば、本件においてぼくが一番問題だと思うのは、仁藤氏も北原氏も、フェミニズムという思想そのものがはらむ非人道性について、何ら内省がなさそうな点についてなのです。
 冒頭で、ぼくはかつて、「フェミニストは少年への性被害を擁護する傾向にある」と述べ、本件がそれと相反するものだと指摘しました。
 しかし、ではぼくの主張が間違っているのかとなると、必ずしもそうではなく、フェミニストが同性愛者を仲間としてかばう傾向にあることも、少年への性的虐待を擁護し続けたことも、前回記事で申し上げた通りです。
 つまり、本件はフェミニストがそうしたフェミニズムそのものの持つ矛盾に目を向けず、ただ場当たり的に世間受けがいい立ち振る舞いをしているだけなのではないか……ぼくにはそのように思われるのです。

 本件を調べていて、ぼくは近年のトランス問題に近いものを感じました。
 トランスが女子トイレを使用する権利があると主張し、手回しのいいことにジェンダーフリートイレの設置(女子トイレの廃止)が推進されつつあるといった、一連の流れです。

 トランス(ないし、トランスを自称する者)が女子トイレに入り、実際に女性が性被害を受けるケースなども出てくるに及んで、こうした傾向に反対するフェミニストたちの姿が目立つようになりました。
 もちろん女性の立場を考えた時、それは当然のことだし、フェミニストは女性の味方であると、一般的には考えられていることでしょう。

 そこで、そうした「まともなフェミニスト」もいるのだとばかりに、彼女らと共闘しようとする保守派の姿も目にするようになってきました。
 しかし、繰り返す通りフェミニストはLGBT運動とずっと「強いつながり」を持ってきたのです。

 ジェンダーもセクシュアリティも、男性が女性を支配するために植えつけたものであり、それらを「ジェンダーフリー」によってリセットするべきだというのがフェミニズムです。つまりジェンダーフリートイレはフェミニズム的には「正しい」としか言いようがない。
「とにもかくにもシスヘテロ男性(異性愛であり、男性としてのジェンダーを持った男性)だけが悪者であり、女性へと性加害をなすのだ」としてきたのがフェミニズムです。つまり、女子トイレの廃止はむしろ「シスへテロ男性の排除」といった意味あいを持って理解されるべきであり、やはりフェミニズム的には「正しい」としか言いようがないのです。

 フェミニストたちの中にはトランスは女湯に入る権利があるのだ、と言って憚(はばか)らない人がおり、そうした人々は上のような反トランスのフェミニストを「TERF」と呼び、見下しているのですが、フェミニズムの理念に忠実であろうとするならば、確かにおかしいのはTERFの方です。
 逆に言うならば、そうしたTERF的な人々が、ぼくが上に挙げたようなフェミニズムのおかしさについて、内省をした上で反トランスのスタンスに立っているのであれば話はわかるのですが、見ていてとてもそうとは思えません(もしそうなら、そもそも彼女らはフェミニストの看板を下ろすべきでしょう)。
 事実、保守派と手を組んでいるTERF的な人々の中には、子供への性加害に対して、肯定的な言動を取り続けて来た人たちもおります。

 つまり、TERFもPENLIGHTもフェミニズムの反社会性を省みた上で活動しているとは、とても信じられない。フェミニストたちの言動に論理的一貫性があることは稀(まれ)であり、彼女らは常に自らの利権や情緒を優先させる。上の2件もまた、そうなのではないか。
 彼女らと手を結ぼうという時には、何よりもそれをまず、念頭に置いてからでないと、後々痛い目に遭うのではないでしょうか。
兵頭 新児(ひょうどう しんじ)
本来はオタク系ライター。
フェミニズム、ジェンダー、非モテ問題について考えるうち、女性ジェンダーが男性にもたらす災いとして「女災」という概念を提唱、2009年に『ぼくたちの女災社会』を上梓。
ブログ「兵頭新児の女災対策的随想」を運営中。

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