"これだけ"は中韓を見習うべき⁉――世界では当たり前の...

"これだけ"は中韓を見習うべき⁉――世界では当たり前の「自国第一主義」【ナザレンコ・アンドリー/連載第12回】

「利害関係の一致」が最優先事項

 韓国メディア・聯合ニュースの報道が話題になっている。8月9日付の記事によると、25年間海外工作員として活動した情報提供者の韓国人が「国情院が日本の極右勢力を支援しており、独島(竹島)と旧日本軍の慰安婦問題を扱う市民団体の内部情報を、日本の極右勢力に流出させることに協力した」と証言したらしい。また情報を受けた一人として、櫻井よしこ氏の名前も挙がっている。証言にしか基づかない主張である時点で信憑性に乏しく、日本の保守派の内ゲバを誘発するためのデマである可能性も考えられるだろう。

さて、今回は上記の記事の内容が事実か否かにかかわらず、そもそも海外の情報機関を利用することが悪いことなのか、考え直してみたいと思う。

 あえて言わせてもらうと、日本の保守派は韓国の話題になると感情的になる人が多い。もちろん、その大元の原因が平気で国際条約を反故にし、歴史を歪曲しながら反日プロパガンダを続けている韓国側にあることは十分理解できる。

 しかし脊髄反射で、何から何まで韓国を批判することは、はたして本当に日本の国益のためになるのだろうか。私はそうは思わない。日本の国益を考えた場合、最大の効果を生み出すために最も重要なことは、韓国が好きか嫌いかではなく、利害を重視することだと思う。

 このような発言をすると、日本の保守派からは「韓国には用日(日本を利用できるだけ利用してやろうと考える人)はいても親日はいない」という声も聞こえてくる。しかし、このような韓国の姿勢は、本来外交における常識的なものだと思う。

 たとえば沖縄の米軍基地だ。米軍基地の重要性を訴える保守も、心の底から米国が好きというわけではないだろう。むしろ、明治維新のときのように自主独立の気概をもち、あらゆる脅威から自国の力だけで日本国家を守る、そんな日本を理想としている人が多いのではないだろうか。ただ現実問題として、当面の間は米軍の力を借りることなく抑止力を行使することが困難だからこそ、米軍の駐留を許している。言ってみれば、日本も米軍を利用しているわけだ。それは米軍も同じだ。心の底から「日本のために血を流してもいい」と思っている米兵など片手で数えるほどもいないだろう。それでも、太平洋における最大の味方・同盟国であり、軍事拠点を失うことは米国の国益を大きく損なうことになるので、日本を防衛する方針を取っている。お互い、相手が好きかどうかという感情ではなく、あくまで利害関係の一致に基づく同盟だからこそ、強固な関係が築かれているのだ。
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米国にとって沖縄は、対中戦略において地理的に都合がいいことも考えられる

諜報活動の重要性を理解していた明治日本

 そうした利害関係の観点から考えると、韓国の存在にも安全保障の面で一定の価値がある。韓国は地理的にも大陸における自由主義陣営の軍事拠点であるし、朝鮮海峡・対馬海峡を上手くコントロールするためには、朝鮮半島の南側のコントロールも必要不可欠だ。それに米軍のTHAAD(アメリカ陸軍が開発した弾道弾迎撃ミサイル)を韓国国内に配備することでミサイル防衛がより強固なものになるし、なにより、もし韓国が北朝鮮に敗れたら、何十万人もの難民が日本に押し寄せてくることになる。この事態を望む保守は一人もいないだろう。

 結局、いくら願ったところで、隣国が消えることはないし、当然ながら日本列島ごと引っ越しすることもできない。誰が何と言おうと、これからも中国と韓国は隣に存在し続ける。それならば、どうしたら中韓と付き合っていけるか、どうしたら中韓が日本へもたらす害悪を最小限にとどめ、上手く利用できるか、そのようなことを日本も戦略的に考えるべきだ。そのためには韓国(朝鮮)民族全体を叩くのではなく、あくまで反日プロパガンダを批判の的にしながら、反日度の低い(あえて「親日国」という表現は使わない)国を支援していくことが大切だ。そうしたことの積み重ねが、日本にとって少しでも多くの国益となる。


 明治時代の日本は、諜報活動の重要性をよく理解していた。たとえば日露戦争では、陸軍大将の明石元二郎が駐ロシア公使館を根拠地に多くの反政府分子に対する支援を行っていた。明石は、帝政ロシアの支配を認めなかった少数民族の独立運動家のみならず、ロシア皇帝と君主制そのものを否定していた社会主義者革命家も支援していた(1904年にレーニンとも会談していた)。社会主義者が親日的だったからではなく、敵国ロシアの不安定化は日本の勝利に寄与すると考えられていたからだ。結局、その戦略は成功し、各地で発生した騒乱は対日戦争を続けられないまでに帝政ロシアを弱体化させ、第一ロシア革命が起きる結果までもたらした。
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日露戦争では海軍も当時、世界最強と謳われた「バルチック艦隊」を破った。写真は1905年5月27日早朝、バルチック艦隊との決戦に出撃する連合艦隊
via Wikipedia

「友好国=おともだち」ではない

 では、どのような韓国人が韓国社会を統治すれば日本にとって得なのか。一言で簡潔に言えば、日本よりも北朝鮮を敵視している韓国人(文在寅政権は真逆の立場)だ。そして、そのような人は韓国国内に少なからず存在する。祖先が大日本帝国に協力していたため、いまだに二等国民扱いされ不当な差別を受けている人、共産主義者が仕掛けた朝鮮戦争で大切な人を失い、大きな被害を被った人、真実をなによりも大事に思い、反日的な歴史観を否定する人(「反日種族主義」の著者など)、共産主義の危険性を理解し反共共闘を目指す人などだ。ただ、左記のような人々でも、単純に「日本が好き」なのではない。当然ながら自国や自分自身の利益を優先しているので、無条件に信頼すれば、いつか痛い目に遭う可能性があることを踏まえながら、利用すべきなのだ。

 そもそも、政治の世界では外国人を絶対的に信頼する必要などないのだ。繰り返しになるが、疑いながらも相手に踊らされないように、十分気をつけたうえで、その利害の一致や共通の敵の存在をいかに利用すれば日本が得をするか、それを考えるだけで十分だ。自分の得だけを考えず、相手を思いやることは日本人の美徳であるが、それは日本国内だけで通用するものだ。トランプ前大統領の「アメリカ・ファースト」が象徴するように、国際社会では各国が自国の利益を第一に考えて動いている。

 冒頭で紹介した、聯合ニュースの記事によれば、韓国国情院に与えられたのは「独島と旧日本軍の慰安婦問題を扱う市民団体の内部情報」だった。自由主義社会の共通の敵である共産主義者や日韓vs北の共闘を邪魔する反日団体と戦うための有益な情報を得たのなら、それは素晴らしいことだし、逆にこのようなチャンスを逃がす方が愚かである。中国も日本を恨みながらも、日本民族全体と関係を断つのではなく、むしろ利用できそうな日本人に積極的に近づいて、協力者を増やすことに注力している。良いか悪いかにかかわらず、それが中国の戦略なのだ。これは戦略的に正しい諜報活動であり、その行動力には見習うべきものがある。

 常に自国の利益(勝利)を第一に考える、国益のために利用できるものは利用する、どんな相手でも冷静さを失うことなく戦略的に動く。このような考え方を上手く取り入れなければ、躊躇いなく、あらゆる手段を用いて工作活動を行ってくる海外の反日工作員には勝てないだろう。国際社会の場で「お人よし」は食い物にされるにされるだけ、そうした感覚を日本人も自覚すべきではないだろうか。
ナザレンコ・アンドリー
1995年、ウクライナ東部のハリコフ市生まれ。ハリコフ・ラヂオ・エンジニアリング高等専門学校の「コンピューター・システムとネットワーク・メンテナンス学部」で準学士学位取得。2013年11月~14年2月、首都キエフと出身地のハリコフ市で、「新欧米側学生集団による国民運動に参加。2014年3~7月、家族とともにウクライナ軍をサポートするためのボランティア活動に参加。同年8月に来日。日本語学校を経て、大学で経営学を学ぶ。現在は政治評論家、外交評論家として活躍中。ウクライナ語、ロシア語のほか英語と日本語にも堪能。著書に『自由を守る戦い―日本よ、ウクライナの轍を踏むな!』(明成社)がある。

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