【朝香 豊】中国の台湾侵攻を内外両面で食い止めよ

【朝香 豊】中国の台湾侵攻を内外両面で食い止めよ

中国の台湾侵攻に警告を発したブリンケン米・国務長官

米国の台湾防衛の「本気度」

 ブリンケン米国務長官は11日、テレビ番組にて中国による台湾の侵攻について「武力によって現状を変更するのは深刻な過ちだ」と警告を発した(参考記事)。警告を発したのは現実的な危険性が高まっているからである。

 だが、中国が武力で台湾を制圧しに来た時にアメリカはこれに武力で対抗するのかと訊かれると、ブリンケン長官は「仮定の話題には立ち入らない」として明言を避けた。「米軍は全力で台湾侵攻を食い止める」と言ったほうが中国の野望を押し止めるのに有効だったと思われるが、なぜかブリンケン長官はそこに踏み込むことをしなかった。

 全世界的に見れば、米軍はまだまだ中国軍よりかなり大きな力を持っているのだろうが、極東地域に限定すれば、中国軍のほうが米軍を圧倒する状態になってきている。この中で、中国との衝突で米軍に大きな被害を出すことを、バイデン政権はためらうようになっているのかもしれない。

 中国は経済的には張り子の虎のようになっており(参考記事)、実体的にはかなり厳しい状態である。この国内の問題を台湾侵攻によって目をそらそうという思惑も、習近平政権はおそらく考えているであろう。この中国による台湾侵攻の動きに対してアメリカが全力で防止する姿勢を見せていないことは、台湾を極めて危険に陥れていることになる。

 台湾を中国に取られないよう最善を尽くすのは当然だ。3月に行われた日米2プラス2では、日本側のリードによって中国を名指しする厳しい批判が入ったと言われているが、この積極姿勢を来たる日米首脳会談でも維持してもらいたい。肝心なところで中国に対する厳しさに欠けるバイデン政権に対して、思い切った突き上げを日本は行うべきである。

 台湾防衛のために日米の連携レベルを更に引き上げるのは当然であるが、ここにイギリスやEUも絡ませ、台湾に手を出すと自由主義陣営全体を完全に敵に回すことになるように構想すべきである。

台湾が中国の手に落ちたら…

gettyimages (5558)

「産業の米」と言われる半導体が手に入らなくなる恐れも―
 そのうえで、我々は最悪の事態も想定しておかなければならない。縁起でもないと言われそうだが、台湾が中国の手に渡ることだ。そうなった場合に、韓国もまた中国側に寝返ることも容易に予想される。そしてその場合には、TSMCやサムスンが作り出す半導体が西側には渡らなくなることまで想定しておかなければならない。

 バイデン政権は半導体国内生産工場の新設・増強などへの補助金として500億ドル(5兆円)の予算を議会に求める計画を明らかにした。これと連動するように、半導体大手のインテルも、200億ドル(2兆円)を投じてアリゾナ州に工場を建設することを発表した。

 EU(欧州連合)も新型コロナ復興基金7500億ユーロ(100兆円)の2割に当たる1500億ユーロ(20兆円)以上を、デジタル分野への新規投資に充てることになった。EUの域内で生産する半導体の世界シェアを、現行の10%程度から20%以上に引き上げることを目指している。

 欧米での動きは、車載半導体の不足によって自動車の生産に大きなブレーキが掛かったことが直接の原因だが、東アジアの地政学的な不安定さを懸念している部分もあると見るべきである。

 当然ながら日本も「産業の米」としての重要性が今後爆発的に高まる半導体について、自給できる体制を早急に組み上げるべきであり、そのための大胆な投資を政府主導で進めるべきだと考える。12日に行われた成長戦略会議にて半導体生産設備への投資支援策が議論された(参考記事)ことは遅まきながら歓迎すべきことで、年間1兆円で5年間くらい投資してもいいと考える。

 とにかく台湾を取られたらすべてが総崩れになるという事態は、何としてでも避けなければならない。1年後には中国が動く可能性があることを頭に置いて、最大限の対策に走るべきである。
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朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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