バイデン大統領の非礼
日米首脳会談について、台湾のことについて半世紀ぶりに共同声明に書き込まれたことなどを捉えて、画期的だという評価が広がっている。だが私は、今回の首脳会談をそれほど高く評価する気にはなれない。
真っ先に指摘しておかなければならないのは、バイデン政権による菅総理への数々の非礼である。
安倍総理がホワイトハウスを訪問した際には、トランプ大統領が玄関の外で出迎えていた。これは決して安倍総理が特別だったわけではなく、外交儀礼上当然のことだろう。ところが今回はバイデン大統領どころか、アメリカ政府の高官の誰も菅総理を玄関口で出迎えなかったのである。玄関に立っていたのは儀仗兵のみであった。
非礼はさらに続く。ホワイトハウスの中に入って出迎えたのは、バイデン大統領ではなく、ハリス副大統領であった。どんな事情があるにせよ、ホストが出迎えないということが許されるのだろうか。さらにハリス副大統領が菅総理の出迎えにあたって冒頭に述べたのは、菅総理に対する歓迎とねぎらいではなく、前日の夜にインディアナポリスで起こった銃乱射事件についてであった。この事件に関するメッセージをバイデン政権として出したいということがあるとしても、TPOから見てあまりに不自然だろう。この場で話すとしても、少なくとも菅総理に対する歓迎とねぎらいの言葉を掛けた後で話すべきことではないのか。
さらに、ハリス副大統領が話し始めて3分少々過ぎたところで、ジェット機の轟音が響き渡った。ホワイトハウスの室内の会話が聞こえなくなるほどの轟音が響くというのは、異常である。相当な低空飛行をし、さらに窓などを全開にしていたのではないかと思われるほど、不自然なものであった。はっきり言えば、この時間を狙ってわざわざ飛ばしたとしか思えない。仮に事前にどうしても外せない飛行計画があったとしても、あるいは緊急にどうしても飛ばさざるをえない事態が発生したとしても、少なくとも出迎える時間には飛ばさないとか、飛ぶ経路を1キロずらすくらいは普通にできたことだろう。
真っ先に指摘しておかなければならないのは、バイデン政権による菅総理への数々の非礼である。
安倍総理がホワイトハウスを訪問した際には、トランプ大統領が玄関の外で出迎えていた。これは決して安倍総理が特別だったわけではなく、外交儀礼上当然のことだろう。ところが今回はバイデン大統領どころか、アメリカ政府の高官の誰も菅総理を玄関口で出迎えなかったのである。玄関に立っていたのは儀仗兵のみであった。
非礼はさらに続く。ホワイトハウスの中に入って出迎えたのは、バイデン大統領ではなく、ハリス副大統領であった。どんな事情があるにせよ、ホストが出迎えないということが許されるのだろうか。さらにハリス副大統領が菅総理の出迎えにあたって冒頭に述べたのは、菅総理に対する歓迎とねぎらいではなく、前日の夜にインディアナポリスで起こった銃乱射事件についてであった。この事件に関するメッセージをバイデン政権として出したいということがあるとしても、TPOから見てあまりに不自然だろう。この場で話すとしても、少なくとも菅総理に対する歓迎とねぎらいの言葉を掛けた後で話すべきことではないのか。
さらに、ハリス副大統領が話し始めて3分少々過ぎたところで、ジェット機の轟音が響き渡った。ホワイトハウスの室内の会話が聞こえなくなるほどの轟音が響くというのは、異常である。相当な低空飛行をし、さらに窓などを全開にしていたのではないかと思われるほど、不自然なものであった。はっきり言えば、この時間を狙ってわざわざ飛ばしたとしか思えない。仮に事前にどうしても外せない飛行計画があったとしても、あるいは緊急にどうしても飛ばさざるをえない事態が発生したとしても、少なくとも出迎える時間には飛ばさないとか、飛ぶ経路を1キロずらすくらいは普通にできたことだろう。
日本側が強く求めたとされる菅総理とバイデン大統領の夕食会は開かれず、ランチもハンバーガー1個だけというものであった。しかもランチの間もマスクの着用、しかもN95マスクの着用まで求められた。息の苦しいN95マスクは、高齢の両首脳にはとりわけ負担の大きなものだったと思う。あれで本当に親密な会話ができたとは、正直言って信じがたい。
そもそも菅総理は日本出国前にもアメリカ到着直後にもPCR検査の陰性が確認されている。さらに菅総理もバイデン大統領もどちらもファイザー製のワクチンの2回接種を完了している。本来バイデン政権としてはマスクを外して、ファイザー製のワクチンの有効性を強くアピールする方が自然なのに、そうはしなかった。「感染予防」を建前にして、夕食会を開かないことの方が優先されたと考えざるをえない。
さらに菅総理の訪米2日目に、バイデン大統領は地元のデラウェア州のウィルミントンに戻ってゴルフに出かけた。3ヶ月ぶりで大統領就任後初めてだという。だが、ゴルフが趣味である菅総理がその場には招かれていない。日本の総理が来ている中で、日本の総理を無視するかのように遊びに出かけたわけだ。トランプ・安倍時代とは明らかに違う、日本に対する冷遇ぶりを示したと言えるだろう。
菅総理はファイザー製薬のブーラCEOとワシントンでの対面会談を模索し、ガッチリ握手をしてワクチンの追加供給の確約を得たという絵を写真に収めたいと考えていたようだ。だが、これについてもアメリカ政府は日本政府に対してできる限り協力的な姿勢を見せたとは、とてもではないが言えないだろう。対面会談は実現せず、電話会談のみになってしまったのは報道されているとおりだ。9月までの追加供給の確約が取れたというのは、菅総理の話を聞いている限りでは確証が持てないものであった。ブーラCEOは「協議を迅速に進めたい」としか述べていないからである。
そもそも菅総理は日本出国前にもアメリカ到着直後にもPCR検査の陰性が確認されている。さらに菅総理もバイデン大統領もどちらもファイザー製のワクチンの2回接種を完了している。本来バイデン政権としてはマスクを外して、ファイザー製のワクチンの有効性を強くアピールする方が自然なのに、そうはしなかった。「感染予防」を建前にして、夕食会を開かないことの方が優先されたと考えざるをえない。
さらに菅総理の訪米2日目に、バイデン大統領は地元のデラウェア州のウィルミントンに戻ってゴルフに出かけた。3ヶ月ぶりで大統領就任後初めてだという。だが、ゴルフが趣味である菅総理がその場には招かれていない。日本の総理が来ている中で、日本の総理を無視するかのように遊びに出かけたわけだ。トランプ・安倍時代とは明らかに違う、日本に対する冷遇ぶりを示したと言えるだろう。
菅総理はファイザー製薬のブーラCEOとワシントンでの対面会談を模索し、ガッチリ握手をしてワクチンの追加供給の確約を得たという絵を写真に収めたいと考えていたようだ。だが、これについてもアメリカ政府は日本政府に対してできる限り協力的な姿勢を見せたとは、とてもではないが言えないだろう。対面会談は実現せず、電話会談のみになってしまったのは報道されているとおりだ。9月までの追加供給の確約が取れたというのは、菅総理の話を聞いている限りでは確証が持てないものであった。ブーラCEOは「協議を迅速に進めたい」としか述べていないからである。
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米国・対中政策の三重構造
こうした一連の菅総理に対する非礼からすると、アメリカが対中国政策で日本との連携を強力に推し進めようという意図のもとで今回の首脳会談を開いているとは、私にはとても考えられない。
日米共同声明はA4で6ページにもなる異例の長い文書となり、中国の膨張を抑止するために日米の同盟関係の強化が謳われている。文面上とあまりに不釣り合いな菅総理の冷遇はどのように考えればいいのだろう。
私はアメリカの対中国政策は三重構造で理解すべきだと考えている。まず第一に理解すべきは、バイデン政権と中国との深い関係である。バイデン大統領と習近平は10年近くになる個人的な関係があり、この間に様々なことで持ちつ持たれつの関係を築いてきた。また弟のジェームズ・バイデン、息子のハンター・バイデンをフロントにした中国ビジネスにも関わってきた。
副大統領のカマラ・ハリスの夫のダグ・エムホフが長年働いてきた法律事務所のDLAパイパーは、中国進出企業のアドバイザー業務を通じて、中国政府と深い関係を持っていることで知られる。さらに言えば、DLAパイパーは中国政府を顧客として抱える企業でもあるのだ。2月のことだが、バイデン大統領は、習近平が進める香港やウイグルなどでの人権蹂躙行為について問題視しない姿勢を示したこともある。
ここでは詳細には述べないが、バイデン政権内部には、中国との間でこうした深い関係を持っている人間は多い。ウォール街をはじめとして対中ビジネスで中国との関係悪化を望まない財界人も多く、彼らも中国に対して強硬姿勢を貫くトランプの追い落としに動き、バイデン政権成立に尽力してきた。そうした財界の考えもバイデン政権に強く反映している。バイデン政権に中国に対する宥和的な姿勢が垣間見えるのは、こうした中国との深い経済的な関係があることによることを見落とさないほうがいいだろう。
第二は、政権内部はどうあれ、世論に押されて中国に対して強硬姿勢を示さないわけにはいかない国内事情がある。香港やウイグルでの人権状況の酷さが知れわたる中で、国民は中国に対して許せないとの思いを強めており、この国民世論が米議会にも大きな影響を及ぼしている。バイデン政権は議会に代表される国内世論に十分に配慮して、対中国では強気のメッセージを出さないわけにはいかなくなっているのである。
日米共同声明はA4で6ページにもなる異例の長い文書となり、中国の膨張を抑止するために日米の同盟関係の強化が謳われている。文面上とあまりに不釣り合いな菅総理の冷遇はどのように考えればいいのだろう。
私はアメリカの対中国政策は三重構造で理解すべきだと考えている。まず第一に理解すべきは、バイデン政権と中国との深い関係である。バイデン大統領と習近平は10年近くになる個人的な関係があり、この間に様々なことで持ちつ持たれつの関係を築いてきた。また弟のジェームズ・バイデン、息子のハンター・バイデンをフロントにした中国ビジネスにも関わってきた。
副大統領のカマラ・ハリスの夫のダグ・エムホフが長年働いてきた法律事務所のDLAパイパーは、中国進出企業のアドバイザー業務を通じて、中国政府と深い関係を持っていることで知られる。さらに言えば、DLAパイパーは中国政府を顧客として抱える企業でもあるのだ。2月のことだが、バイデン大統領は、習近平が進める香港やウイグルなどでの人権蹂躙行為について問題視しない姿勢を示したこともある。
ここでは詳細には述べないが、バイデン政権内部には、中国との間でこうした深い関係を持っている人間は多い。ウォール街をはじめとして対中ビジネスで中国との関係悪化を望まない財界人も多く、彼らも中国に対して強硬姿勢を貫くトランプの追い落としに動き、バイデン政権成立に尽力してきた。そうした財界の考えもバイデン政権に強く反映している。バイデン政権に中国に対する宥和的な姿勢が垣間見えるのは、こうした中国との深い経済的な関係があることによることを見落とさないほうがいいだろう。
第二は、政権内部はどうあれ、世論に押されて中国に対して強硬姿勢を示さないわけにはいかない国内事情がある。香港やウイグルでの人権状況の酷さが知れわたる中で、国民は中国に対して許せないとの思いを強めており、この国民世論が米議会にも大きな影響を及ぼしている。バイデン政権は議会に代表される国内世論に十分に配慮して、対中国では強気のメッセージを出さないわけにはいかなくなっているのである。
「中国の軍門に下る」はあり得ない
この二重構造をベースにすると、今回の日米首脳会談についてもかなり理解しやすくなるはずである。建前としての日米共同声明は、対中国で随分と強硬姿勢を見せているような文書ではあるが、中国を本気で追い詰めるような内容は実は含まれていない。本気で中国を追い詰めることは中国に対する「裏切り」になってしまう。建前としては厳しい姿勢を持ちつつ、中国を配慮しているというメッセージも送る必要があるはずだ。それがバイデン政権が行った菅総理に対する冷遇だと考えれば、辻褄が随分と合ってくることが理解できるだろう。
ただ、ここでもう一つ別の側面を見ておくべきではないかと、私は考えている。それは中国とズブズブの関係にある政府高官にしても、あるいは中国との経済的関係の強い財界の首脳にしても、自分たちが本当に中国の軍門に下ることになるとすれば、それはさすがに問題だと考えている人が多いだろうということだ。したがって、中国に対して言い訳が成り立つのであれば、単なる建前にとどまらないで実質的な意味合いにおいても、対中強硬姿勢が歓迎される素地があるのである。こうした3つの立場が同時にある中で、現実のアメリカの対中外交のあり方が出来上がっていると見るべきではないだろうか。
この見地からすれば、菅総理が最初に行われたとされるハリス副大統領との会談の場で、ホワイトハウスに到着した段階での冷遇について、「このような事態は外交上あるまじき非礼ではないのか。わが日本国を尊重する意思が米国にないのであれば、これ以降の会談は無駄であるから、遠慮させてもらう」といった強いメッセージを仮に発していたとしたら、以後のアメリカの対応は随分と変わったのではないだろうか。
日本政府が対米政策を考えるにあたっては、上記に挙げた第三の立場がアメリカにあることに信頼を寄せ、ここに働きかけていくことを重視すべきではないか。菅総理の今回の訪米ではこの点には踏み込めなかったようだが、今後も様々なチャンスが待っているはずだ。このような屈辱外交を繰り返さないためにも、また中国を念頭に置いた日米連携を本気で強化する観点からも、菅政権には対米外交姿勢を大きく見直すことを望みたい。
ただ、ここでもう一つ別の側面を見ておくべきではないかと、私は考えている。それは中国とズブズブの関係にある政府高官にしても、あるいは中国との経済的関係の強い財界の首脳にしても、自分たちが本当に中国の軍門に下ることになるとすれば、それはさすがに問題だと考えている人が多いだろうということだ。したがって、中国に対して言い訳が成り立つのであれば、単なる建前にとどまらないで実質的な意味合いにおいても、対中強硬姿勢が歓迎される素地があるのである。こうした3つの立場が同時にある中で、現実のアメリカの対中外交のあり方が出来上がっていると見るべきではないだろうか。
この見地からすれば、菅総理が最初に行われたとされるハリス副大統領との会談の場で、ホワイトハウスに到着した段階での冷遇について、「このような事態は外交上あるまじき非礼ではないのか。わが日本国を尊重する意思が米国にないのであれば、これ以降の会談は無駄であるから、遠慮させてもらう」といった強いメッセージを仮に発していたとしたら、以後のアメリカの対応は随分と変わったのではないだろうか。
日本政府が対米政策を考えるにあたっては、上記に挙げた第三の立場がアメリカにあることに信頼を寄せ、ここに働きかけていくことを重視すべきではないか。菅総理の今回の訪米ではこの点には踏み込めなかったようだが、今後も様々なチャンスが待っているはずだ。このような屈辱外交を繰り返さないためにも、また中国を念頭に置いた日米連携を本気で強化する観点からも、菅政権には対米外交姿勢を大きく見直すことを望みたい。
朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。