【朝香 豊】反ワクチンアレルギー患者続出――過度な心配...

【朝香 豊】反ワクチンアレルギー患者続出――過度な心配が日本を亡ぼす

「反ワクチン」による弊害

 新型コロナウイルス感染症対策のワクチンについて、あまりにも非科学的な言説が広がっている。この件でブログに記事を上げて、ワクチンの危険性について過剰な心配は不要であることを訴えたところ、これに対する強い反発がさまざま出てきた。中にはワクチン接種後の死亡率が4.45%に達するのだと主張する方もいたのには驚いた。世界中ではすでに少なくとも数千万人の人がワクチン接種をしているのであるから、それならばすでに少なくとも百万人規模の死亡例が出て大問題になっているはずだ。

 私がワクチンの問題に大きな関心を寄せているのは、ワクチンに対する危険性を訴える声が世界的に見ても日本は異常に高いことに問題意識を持っているところがある。たとえば女性の1%が罹患し、そのうち3割程度がこれを原因に命を落としている子宮頸ガンの予防ワクチンの接種率は、日本ではわずかに0.3%にまで下がってしまった。先進国ではおおむね7割以上の接種が当然視され、日本も一時は7割以上の接種率だったのに、「危険情報」が蔓延する中で接種率が急減したのである。この結果、2001年生まれの女子については、子宮頸ガンの予防ワクチンを7割以上接種した年代と比して、子宮頸ガンに罹患する人数は4500人以上増加し、このうち1000人以上がこれを原因に命を落とすことがすでにわかっている。当たり前だが、2002年以降の女子についても同じことが言える。つまりこの予防接種を行わないことで、毎年1000人以上を無駄に死なすことになるのをみすみす見逃していることになっているのである。

 子宮頸ガンワクチンの重篤な副反応として、アナフィラキシーショック(重いアレルギー反応)が100万接種に1回程度あり、また手足の力が入りにくくなるギラン・バレー症候群や、神経が傷つくことで起こる急性散在性脳脊髄炎が、それぞれ400万接種に1回程度起こるとされていることは事実である。また、持続的な体の疼痛を訴える、複合性局所疼痛症候群も270万接種に1回程度起こるが、これはワクチン自体の問題ではなく、筋肉注射に伴う注射針の刺激などの別の要因が引き金になっていると考えられている。

 この他に世界的に見た場合に日本国内において特異的に高い割合として、痙攣、光に対する過敏な反応、脱力発作、記銘力の低下などの「多様な症状」を訴えるケースが累計で300件を超えるとされている。この「多様な症状」については日々のストレスが身体症状として現れる機能性身体症状を副反応だととらえたものであり、予防接種とは関係ないのではないかというのが厚生労働省や医学界の一般的な見解である。自分はこれについて医学的な判断ができるような見識はないが、子宮頸ガンで命を落とす人がそれぞれの学年で1000人以上増えるのは防ぐべきではないかとの立場だ。日本では子宮の前ガン病変に気づいて部分切除を行う女性も年間で1万人に達している。少子化が問題視される我が国では看過できない事態であるだけでなく、こうした女性たちが受ける精神的なショックやQOL(生活の質)を考える上でも重大ではないだろうか。こうした事態はワクチンを接種することで大きく低減させられるのに、それとは逆行した事態が進行しているのは悲劇である。

慎重になり過ぎるのは危険

 さて2月18日に、職員数が1万人ほどもいるイスラエル最大の病院での、今回の新型コロナに対するワクチン接種の効果についてまとめた短い論文が、医学専門誌のランセットに掲載された。この病院で使われたのは、バイオンテックとファイザーが共同開発したm-RNA型のワクチンである。ワクチンを打たないと1万人につき7.4人の割合で感染した(無症状を含む)ことになるが、1回目のワクチン接種後14日目までだとこれが30%下がって5.5人になり、ワクチン接種後15日から28日になると75%低下して3.0人となった。有症状者に限定すると、ワクチンを打たないと1万人につき5.0人だが、ワクチン接種後14日目までだとこれが47%下がって2.8人になり、ワクチン接種後15日から28日になると85%低下して1.2人となった。1回だけの接種においてもかなりの有効性が確認できたといえるだろう。

 このワクチンは1回目を接種してから4週間経過後に2回目を接種することになっている。1回目の接種が12月19日から開始されたために、2回目の接種後のデータはまだ十分に集められていない。こちらがきちんと集まるとさらにワクチンの有効性がどの程度であるか、さらに確認できるようになるだろう。
gettyimages (4932)

イスラエルでのワクチン接種の様子
 ところでこのワクチンがm-RNA型であることから、人間の遺伝子を改変させる可能性について、現実を無視した議論が広がっている。m-RNAが単独では核内に入ることができず、m-RNAを核内に入れるためには、ベクター(運び屋)と呼ばれるウイルスの一部として組み込まれなければならないことが理解されていないのだろう。さらに言えば、m-RNAは非常に壊れやすく、そのためにバイオンテックとファイザーが開発したこのワクチンの場合には、マイナス60度〜マイナス80度という極低温で保存する必要があり、マイナス15度〜マイナス25度まで温度を上げただけでも2週間しかもたないとされている。つまりこの壊れやすいm-RNAが人間の遺伝子を改変させる可能性は事実上ゼロだということになる。

 もちろん理論上はゼロだと思っていたものが、臨床に移すと意外なことで影響を与えることも考えられる。そのため慎重に三層にわたる臨床試験を経て安全性の審査を行ってきたわけだ。長期的な影響はまだわからないという人もいるのだが、体内に入ってすぐに壊れるm-RNAが数年後に思いもしなかった作用を起こす可能性を考えるのは、あまりに非現実的ではないだろうか。

「念には念を入れて」という発想はわからないではないが、人体内には当たり前にウイルスが入り込んでいて、このウイルスが人間の核内に入って人間のDNAを改変させることはもともと可能性として存在していることを忘れないでもらいたい。こうしたウイルスの作用は人体に対して無視できる程度にしか影響を与えないことを前提としながら、すぐに壊れるm-RNA単体の導入に大騒ぎをするのは、あまりにもバランスを欠いているとは言えないだろうか。

 危険について慎重に考えることは大切なことだが、過大に捉えるとバランスを崩してしまうということを、理解してもらいたい。
 (4934)

朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

関連する記事

関連するキーワード

投稿者

この記事へのコメント

コメントはまだありません

コメントを書く